2008年05月17日

後からわかるもの

 ロシア料理の本を図書館から借りてきました。テレビ講座の沼野恭子先生がエッセイを書いています。ボルシチとピロシキしか知らないので、どんなものがあるのだろう?と思い、簡単でおいしそうなら何か作れるかも、と思ったのがこちらの本です。

4309280609家庭で作れるロシア料理 ダーチャの菜園の恵みがいっぱい!
荻野 恭子 沼野 恭子
河出書房新社 2006-07-06

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 先日テレビでも紹介していた「ブリヌィ(блины)」が掲載されていました。テキストにも分量が載っていましたが、きびを使うレシピだったので、それよりはこちらのほうが簡単そうだと思い、作ってみました。
 卵、強力粉、砂糖、塩、バター、イーストとパンと同じ材料です。牛乳が多く、パンのようにはしないでとろとろ生地にして発酵させて焼きます。ロシア風クレープと書かれていることが多いそうですが、クレープと違って発酵生地なのでやや厚めです。パンケーキとクレープの中間くらいの食感でした。本来はロシア名物キャビアとサワークリームで食すとのことですが、もちろんそんなものはありません。エッセイでゴーゴリの『死せる魂』ではバターに浸して食べると書かれているとあったので、粉砂糖やマーガリンなどで(バターが本当にこのごろ高い!)食べてみました。なかなか好評でしたが、次回はイクラやサワークリームでちょっと本格的にしてもいいかも、と思っています。
 この本を読みながら、ふと思い出したのが本の中の食事シーン。
 『カラマーゾフの兄弟』でこのブリヌィを食べるシーンが最初のほうに出てきます。翻訳版ではこのなじみのない単語を使わずに「クレープ」、「ホットケーキ」などになっているようです。単数形が「ブリン」なので、「プリン」を連想させますが、まったく違います。(詳しく解説されているサイト:アリョーシャと一緒にプリンを食べよう)なるほど、ブリヌィはマースレッツァと呼ばれる春のお祭りを象徴する食べ物なので、このサイトの解説や料理本のエッセイなどを読むと、この食事シーンがちょっとだけ分かりやすくなります。

 また、アリョーシャがイワンと会ったときに魚のスープとさくらんぼのジャムを頼むというシーンがありました。この魚のスープはウハー(уха)というものではないかと思います。こちらはテレビで紹介されていましたが、料理の本にはありませんでした。ネットでロシア料理のレシピを見つけましたが、割とシンプルな料理のようです。
 この魚スープはあまり気にならなかったのですが、さくらんぼのジャムを頼むという場面は引っかかっていました。ジャムと言われると、どうしてもわたしの感覚(一般的な日本人ならそうだと思うのですが)、何かに塗って食べるもの、というイメージでした。ジャムだけ食べるものなのかなあ?と。中学生のときの英語の教科書にあったトム・ソーヤの話の一節で、トムがジャムを盗んで食べたとありました。わたしはジャムだけでは食べませんが、わたしの姉はそのころジャムだけスプーンですくって食べていたことがあって、トム・ソーヤみたい、と思ったのです。ジャムだけでも食べるのはトムかうちのお姉ちゃんくらいのものだと思っていたのですが、アリョーシャのほうはきちんと食堂で注文してジャムを単品で頼むのです。それもイワンが勧めるからであり、ちゃんとメニューにあるようでした。
 そのジャムのことが、こちらの料理の本を読んで分かりました。「昔はさくらんぼを(中略)煮てヴァレーニエ(варенье)にしたり」とエッセイにあるのです。そのヴァレーニエの作り方があり「ロシア風ジャム」とあります。砂糖だけで果実を煮たシンプルなものですが、果実の原型が残った感じで、見た目がジャムのどろっとしたのと違い、さらっとしているのです。シロップ煮のような感じ。これならスプーンですくって食べていてもデザートみたいな感じがします。アリョーシャが食べていたのはこのヴァレーニエなのかも!と今頃思い浮かびました。気になるので、あちこちの単語を張り合わせて調べてみると、Lib.ru(ロシア文学のテキストサイト)というサイトにカラマーゾフの兄弟のテキストがありました。検索機能って便利! 一応キリル文字は読めるようになったのですが、あとは検索機能で該当箇所を探しました。文章は単語がいくつかわかる程度でさっぱりです。

- Ухи давай, давай потом и чаю, я проголодался, - весело проговорил
Алеша.
- А варенья вишневого? Здесь есть. Помнишь, как ты маленький у Поленова
вишневое варенье любил?

 赤字の部分がさくらんぼのジャムの原文のようです。やっぱりвареньеなんだ! なんだかすっきりしました。わたし個人の感覚ではジャムを食べるのはやや違和感なのですが、ヴァレーニエなら食べてもいい感じです。検索した写真はこんな感じです。
 料理本によると、ロシアの人は紅茶にジャムを入れて飲まないそうです。このヴァレーニエを食べながら飲むそうです。なるほど。ちょっとカラマーゾフを読み返したい気がしてきました。でも、持っていないのです。また図書館に行ったときに確認してみようと思っています。
この記事へのコメント
ロシア文学は、名前読むだけで骨が折れてしまいますが、食べるという行為は、世界中の誰もがすることなので、こうやって具体的な画像があれば、わかりやすいです。
そして、その料理を作ってみると、また一段と理解を深めることが出来るんでしょうね。
それにしても、kmyさんの本の読み方、掘り下げ方には、感心してしまいます。
脱帽!
そして、キリル文字が読めるようになったなんて、すごい!
ちなみに、ロシアンティーは、どういうジャムを入れるのでしょうね。
Posted by noel at 2008年05月18日 22:42
noelさん
ロシア人の名前って複雑ですよね。その呼び方が何通りもあって、同一人物かどうかわからなくなったりします。ドミトリーがミーチャとか。
何でも読んでいると料理の場面が気になります。もともと作るもの食べるもの好きだからなのでしょう。
この料理の本を読んでそういえば、と思い当たって、分かったのが嬉しく思いました。
キリル文字は文字数がそれほど多くなく、ラテン文字に似ているので覚えやすい気がします。(だからといって読めるわけではないですが)
本にはベリー類のヴァレーニエ(ジャム)が一般的らしいことが書いてありました。カシスとか食べてみたいです。
Posted by kmy at 2008年05月19日 13:32
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