2005年11月22日

"Ein Bär namens Sonntag"

4001108623クマの名前は日曜日
Axel Hacke Michael Sowa 丘沢 静也
岩波書店 2002-06

by G-Tools


0747575606A Bear Called Sunday
Michael Sowa
Bloomsbury Publishing PLC 2004-11-01

by G-Tools

(ドイツ語版のリンクが作れません(涙) 日本の装丁とほぼ一緒です。色目がやや違います)
 "Ein Bär namens Sonntag" ようやく読み終わりました。一ヶ月もかかりました。邦訳で読むとささっと終わるのですが、じっくり読むとなるほどなるほど、今まで気がつかなかったことがいろいろ見えて面白いものです。

 表紙画像を引用しましたが、同じような雰囲気の本として邦訳も作られています。同じ青い紙に印刷されたクマの絵。この画像写真と同様に、原書と邦訳では青い紙の色が微妙に違います。こうしてWEBで見ると違いがはっきりでているように、邦訳の方がやや濃い青です。わたしのイメージとして言うならば、ドイツ語版は明け方に向かう空の色。日本語版は真夜中へ向かう空の色という感じがします。表紙を開いてすぐの紙は黄色ですが、こちらもドイツ語版のほうがやや明るいのです。同じような表紙なのに、微妙な色の違いがあるのが不思議です。国が違えば紙が違うのかもしれません。

 色が違うのはすぐに気がつきますが、ごく当たり前のこととして受け止めていたことが不思議に感じるようになりました。それは邦訳になると縦書きになってしまうので、挿絵が左右逆のページに来る場合があるのです。「日曜日」と名づけられたクマのぬいぐるみが選択されて干されている挿絵があります。ドイツ語版は開いて右ページにあり、邦訳は左ページにあります。話の流れから言って、ドイツ語は右開きなので常に目線が右に行きますが、邦訳は左に行きます。文章を読んで挿絵を見る、という形になります。
 これまで邦訳を読んでいたときには、このクマの絵を右から左に向かってみていました。クマの「日曜日」の目線は微妙に左に寄っているんです。だから邦訳で右から左に向かって絵を見るとなんとなく「日曜日」は目を逸らしているように見えるんです。挿絵の横についているのは「日曜日」が干されて歌を歌っているところの文章。だから、この挿絵はぼくが寝てしまった後に下で悲しそうに「日曜日」が歌っている場面かと思っていました。しかし、原書では挿絵のあるページの文章は以下の邦訳の部分なのです。
日曜日のやつ、悲しそうな、悲しそうな、悲しそうな顔して、ぼくのこと見つめてるぞ。
(『クマの名前は日曜日』ハッケ作ゾーヴァ絵 丘沢静也訳 岩波書店 P13)

 あらら、全然印象が違います。まさに「ぼく」が「日曜日」が干してあるのを見に行ったときの出来事を「ぼく」の視点で見た絵なのです。本当にこちらを悲しそうに見ているようなのです。挿絵も見る方向によって違って見えるということを初めて実感しました。そうか、「日曜日」は「ぼく」を恨みがましく見つめていたんだね、と。クマの気持ちが何だかわかるような絵です。ますます好きになりました。
 原書ならではの楽しさが「クマことば」と「韻」。詩も韻を踏んでいるんですね、やっぱり。詩というのは内容と共にやっぱりことばとして口に出したときに心地よい響きを持っているんでしょうね。日本人なら5・7・5みたいに。発音はとても苦手ですけども。「クマことば」はそのままではわかりにくいところもあって、邦訳を頼りに読みました。クマだからドイツ語のクマということば"Bär"を含めた造語が出てきて面白い部分。
"Saubääären! Aufrräääumen! Rrräääumbääären! Sauhaufen!"
上掲原書 P22

「なーんてクーマだい。かったづけてござーる。かったづけクーマだい。くまったでござーる」
上掲邦訳 P27

 といいながら読んでてどこで切れるんだ?とわたしもくま(困)ったでござーる。最後の誕生日の歌は訳になっていなかったようで、このクマことばはすぐにピン!ときて嬉しかったですね。意味と音がわかった瞬間って気持ちがいいです。
"Happy Bärthday To You, Happy Bärthday, Dear Sonntag, Happy Bärthday To You!"
上掲書 P29

BirthdayがBärthdayになっていて、クマ(Bär)がことばの中に隠れています。

 時間はかかっても発見の多く、楽しい本でした。さてと、"Pralinek Eine Weihnachtsgeschichte"もじっくり楽しもうと思います。

注:aの上に点々がつくウムラウトの文字は特殊文字として表示させています。Firefox、IE6にて確認していますが、文字化けがひどくならないことを願います。化けていたらすみません。

『クマの名前は日曜日』お気に入り記事
Kantarooo Blog 『クマの名前は日曜日
posted by kmy at 16:55| Comment(4) | TrackBack(0) | ハッケ&ゾーヴァ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
やっぱり比較は面白いですねえ。
邦訳は持っていますが、原書となると、英語以外のものはつい敬遠してしまいます。

いまは邦訳も左開きのまま作られるものがほとんどなのに、岩波さんって案外お古いんですね。

>ドイツ語版は明け方に向かう空の色。日本語版は真夜中へ向かう空の色
というkmyさんの持つイメージに、わたしも賛成。
わたしは邦訳版の表紙を見たとき、日曜日はお休みだから、これから土曜の夜になるんだな、と思ったのでした。
Posted by ヤヤー at 2005年11月22日 20:58
ヤヤーさん、『日曜日』お持ちなんですね。嬉しいです、同じ本を読んでいる方に出会えると。
左開きの本にしなかったのこと、そういわれてみると、古い感じがします。三修社の『エーリカ』(挿絵はゾーヴァ)は横書き、右開きなので、『プラリネク』も三修社だから横書き?と思いつつ、ドイツ語版を読み終わるまでは買わないぞ!(←買うの?)と思っています。
英語で読むのはハリー・ポッターだけです。ドイツ語で読みたいのは今のところハッケとゾーヴァの挿絵のある未邦訳の本。フランス語やラテン系は全くできません。根性がなかったので、外国語は続きませんでした(笑) すらすら読めれば、というのはきっと夢ですが、読まないよりも読むほうが得るものはありますね。

本の装丁の色に反応いただいて光栄です。ずっと二冊持っていて、色が違うのだけど、どう表現していいかわからないでいましたが、やっとことばが見つかった感じです。青を使っているのも、夜の出来事的なお話だからかもしれないですね。
Posted by kmy at 2005年11月23日 21:17
原書と邦訳の比較については、あと、せいぜい三冊ほどしか語れませんが、最近では童話館さんが『のうさぎのフルー』の新訳、新装版でもめたのが記憶に新しいです。
福音館さんの旧版、原書との比較が、色んなところで活発に議論されていました。
誰にも納得できるモノを作るのは、ほんとに難しいと思いましたね。
Posted by ヤヤー at 2005年11月24日 15:42
ヤヤーさん、再びありがとうございます♪
原書を読むと自分なりのイメージが出来上がってきますが、翻訳となると気に入らない箇所が出たりするのは仕方ないのかも、と思っています。
『クマの名前は日曜日』に関しては、翻訳は翻訳で楽しんで読んでいます。訳にならなかった箇所もあるんだな、と思ったことは思ったのですが、発見的で嬉しかったです。
『のうさぎのフルー』は読んだことがありません。ちょっと検索してみたところ、絵の順番や文字の配置などで論議があったようですね。うーん、気になる。翻訳は時間と共に変化していくような気もします。『星の王子さま』なんかもいろいろ翻訳に関して言われていますね。
いろいろな翻訳が出たり、原書を読んだりしてみて、自分なりの世界を得られるものに出会えれば一番、と思っています。
Posted by kmy at 2005年11月24日 19:18
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