2008年04月15日

『ソーネチカ』

 そうか、そういうことなんだ――違和感を感じていたお話が実は奥深いところでの幸福を感じる物語だったというのを改めて感じとることができました。
4105900331ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)
沼野 恭子
新潮社 2002-12

by G-Tools



 ソーネチカはぱっとしない女性。20歳以上も離れた芸術家のロベルトに見初められて即座に結婚したというところは劇的かもしれない。その後、地味な主婦として、稼ぎ手として、母親として暮らすソーネチカ。彼女とは対照的なのが、芸術家として大成する夫のロベルト、奔放な生活とペテルブルクへ逃避する娘のターニャ、娘の友だちとして最初現れ、文字通り身を売りながら暮らし、そしてソーネチカの家の「家族」となるヤーシャ。ソーネチカへの裏切りとも思えるような行いを3人がしているのにも関わらず、ソーネチカはそれに対して嘆いたりしない。そして、あるがままに受け入れる。決してそれが不幸だとは思わずに。むしろそうあってくれてよかったとさえ思うのです。

 あの決定的瞬間を悟ったときに、ソーネチカ自身は涙を流し「十七年続いた幸福な結婚生活がこれで幕をとじたということをはっきり理解」(P106)ということは、それなりの動揺があったとは思います。しかし、ソーネチカはそれを受け入れる。そして家族もそのことで決裂するのではなく、満ち満ちた時間をそれぞれに過ごす事になるのが違和感なく「感じ取れる」と思いました。
 それでいいの?というような疑問を感じずに、ソーネチカが受け入れたように受け入れられるような、そういう気がします。

 ところで、ラストと解説でこのソーネチカのことについて、旧約聖書の「レアとラケル」の「レア」にたとえられています。どこかで聞いたことがある……と思ったのですが、ときどき回ってきては「読んでください」と置いていくキリスト教系宗教のパンフレットにこのお話が載っていました。暇つぶしに読んだのですが、この「レアとラケル」のお話、うーむ、いいのかなあ、それでと思っていたののを思い出しました(その後、「読まれましたか?」とまた同じ関係者が来たので、しょっちゅう来ても困るので「読んでません」と言いましたが、どうもパンフレットを配った家をチェックしてくるらしい)。わかりやすそうなのがこちらにあります。
 ラケルが好きなヤコブはだまされて姉のレアと結婚し、その後ラケルとも結婚し、レアは子どもに恵まれたけどラケルは恵まれなかった、だからラケルは自分のめしつかいの女をヤコブに与え、そのめしつかいが生んだ子どもがラケルの子になるという、そんな話として記憶していましたが、どう解釈していいかよく分からない、だからどうなんだろう?と思っていたのです。どちらかという泥沼の争いエピソードに感じていたのです。しかし、ソーネチカの家族を「レアとラケル」となぞらえて読むと、「レアとラケル」の物語が少しわかるような気がしました。レアになぞらえられるソーネチカ。自身が愛され主体的な幸せを望むという女性ではなく、より深いところで、幸せを感じ取っていたようにも思えます。その役割は家族にはなくてはならないものであったと思います。もっと分かるためには聖書読まなくてはいけないけども、なかなか読めません(汗)


posted by kmy at 14:40| Comment(5) | TrackBack(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ああなんておもしろそうなんでしょう!
kmyさんの文章読むだけでぞくぞくします。
読みます 読みますよ 必ず手にいれて。

遠く離れた外国の 宗教的背景もまったく違う文学に
思いがけず共感を得ることがありますね
そういうの なんて言うんだっけなあ・・・

とにかく 読書の醍醐味には違いないですね。
「ソーネチカ」  メモメモ。
Posted by めぐりん at 2008年04月16日 09:29
めぐりんさん♪
図書館で借りました。わりと短いので一気に読めます。
ソーネチカという人はある種「インテリ」だと思うのですが、それがきっと微妙なところで味を出しているのだと思います。
ただ単に無垢な感じではなく、さまざまな「人間的」思惑と一般的に言われているような「妬み」とか「怒り」といったほうこうにものごとを持っていかないソーネチカという人間性が、文章を通じて染み入ります。
Posted by kmy at 2008年04月16日 18:33
これ、表紙の絵がすきで買おうと決心してから早幾年(笑)。
だから未読です。
やっぱ読みたいと思ったものは締め切りのある図書館での借り出しがいいようです。

あぁ、思った通り面白そうだなぁ。
いつもジャケ買い&ジャケ読みですが、この本も例に漏れずに「読んで読んで」オーラが出ています。
次ぎ行くとき借りて来ようと思い、さっそく予約を入れました♪
Posted by ヤヤー at 2008年04月19日 22:45
ヤヤーさん♪
表紙が素敵ですよね。短いのでさらっと読めて深い、そんな感じがしました。
買おうと思って、買って読もう、そういうのってなかなかできないのですよね。
図書館にないと、買おうかな、と思い、文庫だから買おうかな、と思い、そして積読……。
買わずに読むほうが集中できていいのかも、と思います。

コメントの枠が表示されませんね(汗)Seesaaのそのまま使ったのに!
どうにか直したいのだけど、うまくいきません。
Posted by kmy at 2008年04月20日 11:31
 学生の頃聖書研究会に入っていたんですが、ラケルとレアのエピソードをトクトクと語っている女の先輩がいました。彼女は非常にレアに同情していて私も当時そうかな・・・なんてなんとなく聞いていました。ただ今になってみると一夫多妻が当たり前の環境で夫が別の女性を例え妹であっても自分以上に愛したからといってそれが不幸かどうかは少し疑問です。ましてレアは当時の女性としては大変重要な子宝に恵まれたわけですから大手を振って家の中を闊歩できたはずです。いくら愛されていたからといって子どもができなかったラケルのほうがある意味不幸だったのではと思えます。
 レアが疎んじられていたという記述もありましたが、本当に疎んじられていたのなら6人も子どもを授かったりはしなかったんじゃないかと思います。
 すみません、本のことでなくて聖書の話題になってしまって・・・『ソーネチカ』、聖書と併せて読んでみたいと思います。

Posted by ぴぐもん at 2008年04月25日 21:54
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