2008年03月21日

『蝿』

 これは面白かった! もうかなり昔の映画「ザ・フライ」の原作『蝿』です。そういうものの、おぼろげにしか「ザ・フライ」は覚えがありませんが、異色作家短編集の一冊ということで気になっていたのです。
4152086963蝿(はえ) (異色作家短篇集)
George Langelaan 稲葉 明雄
早川書房 2006-01

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 『蝿』は映画でもおなじみ(?)、物質を転送する装置を作ったけれども、大変なことになっちゃった、というお話です。映画のイメージはホラーっぽいような、気味が悪いような記憶があるのですが、こちらの小説はある種恋愛小説のような、哀しみと愛を感じるような仕上がりです。幸せに暮らしていた家族、才能のある夫、そこに訪れた取り返しがつかなくなった出来事にどう対処するか……妻アンへの共感や同情とともにしんみした印象を残します。

『彼方のどこにもいない女』も一種の恋愛譚かな。超現実的な遠距離恋愛が描かれているという感じです。ある女性を好きになって、その人に会いたいと思うのだけど、自分がその「超現実的」な存在となってある彼女にもし出会えたとしても、現実世界の恋愛や結婚とは違うものになってしまうと言う。その女性も男性のいる現実にいくつもりはないと言う。それでも会いたい、会えるなら――というのが切ないところであり、彼が選んだ選択の行方がまた気になるという余韻が残る作品。

『奇跡』はブラックユーモア。列車事故で足が動かなくなった男性の思惑とその結末。こうなるな、と予想はつくものの、そこがすっきりとした読後感。

 現実には起こりえないような不可解なことが時として起こることがあるかも、と思わせるようなそういう短編になるように思います。その不可解な感じや余韻のある感じが気に入りましたが、日本で読める他の作品はほとんどないらしいとか。残念です。

その他作品
「忘却への墜落」
「御しがたい虎」
「他人の手」
「安楽椅子の探偵」
「悪魔巡り」
「最終飛行」
「考えるロボット」
posted by kmy at 17:02| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア&フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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