2008年03月06日

『ユゴーの不思議な発明』

 モノクロで綴られる孤児の少年の物語なのですが、絵本でもなく、挿絵でもなく、少々変わった構成の本です。最初は両開きに描かれた絵だけでストーリーが進み、しばらくすると文章のみでストーリーが展開します。そしてまた、ある場面では実在の写真を用いて効果を出しています。そしてその物語も現実にあったある人物のことを元に再構成して出来上がった物語になっています。物語のキーワードとなるのは「映画」。なので、このキャラクターは実在したの?と思いつつ、実在の映画の写真を見ながら、もう遠い昔となったパリの街や映画館、駅や時計を思い浮かべながら物語に浸れます。

475721426Xユゴーの不思議な発明
金原 瑞人
株)アスペクト 2007-12

by G-Tools


 物語は孤児のユゴーが火事でなくなったお父さんが残したノートを元に作っているからくり人形のことから始まります。その人形を修理するために必要な部品を調達するには「盗み」しかなく、そのため駅のおもちゃ屋で出かけていきますが、あいにく店主のおじいさんに見つかってしまいます。そこからユゴーの生活は変わり始めます。

この先ネタばれあります。
 映画を見るようなイラスト展開かと思っていたら、実際に「映画」は重要な要素になっていて驚きました。からくり人形とパパ・ジョルジュの関係が全然結びつかなくて、いなくなったおじさんもどう関わってくるのだろう?と気になります。ちりばめられたモチーフが最後につながっていくのと、実在するジョルジュ・メリエスが物語としてつながっていくのがとても面白く出来ています。
 540ページという分厚い本ですが、イラストや写真が多く、文章は合間に挿入されているという形式なので、絵は絵として、文章は文章だけで楽しめるという今までにない感じです。
 そしてメリエスの映画「月世界旅行」。わたしとしては子どもと見たポンキッキーズの「さあ冒険だ」でなじみがあり、ああ、あれの!っていう感じでした。断片的で再構成されたものでしたが、非常ににインパクトのある映像です。

<月世界旅行>



 あとがきに書かれていたマイヤルデのからくり人形というのも興味があります。それがこれ↓


 
 実際にこんなものが書けたなんて!と感動します。

 危うい均衡でなんとか生きている孤児の少年とその夢の実現、そのためにはよき理解者である大人とそして友人があってこそと感じました。ただ単に一人で何でもやれる、やってやる、というのではないところがいいのだろうな、と思います。子どもも大人も、誰でもひとりぼっちで生きていくのは辛すぎる、そして子どもは無力すぎる。それでも大人は「大人」の規準でしかものを見れない人がいる。何を大切にし、何を夢として生きていくのか。子どもの内にあるものを理解できるエティエンヌのような大人、いいなあと思いました。人と人はそれぞれ関わりあって生きていくのだと思いました。
 ところで読んでいる途中「ユゴーの発明って?」と思うのですが、ラストで明かされ、ああ、まさにいまこれが!と思うタイトルもよかったです。
posted by kmy at 15:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これはほしい!と思っていましたが、まだ手に入れていません。
もう読まれたのですね。いいな〜。
kmyさんの記事を読む限りでも、やっぱりわたし好みの内容のようです。早く読まなくては(笑)。

『月世界旅行』なつかし〜♪と思いながら見ました!
You Tubeも見出すと止まらなくなってしまいます。
それにしても関連する画像、動画が簡単に検索できるのはありがたいですよね。
Posted by ヤヤー at 2008年03月09日 21:29
ヤヤーさん♪
わたしも欲しかったのですが、なにぶん値段が高いので(汗)、図書館にて借りました。
蔵書になかったのですが、前々から購入予定だったのか、リクエストが功を奏したのかは不明ですが、蔵書となっていつでも借りれる〜♪というのは嬉しいです。

動画に関しては凄い事だな、と改めて思います。数年前にはこれは考えられなかったと思います。
こういうのが当たり前になっていることを「凄い」とも思わなくなってくるのが何だか奇妙な感じがしますが……知りたいことがわかるというのはとても嬉しいのですけどね。
Posted by kmy at 2008年03月10日 14:50
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