2005年10月17日

コン・セブリ島をご案内いたします。

4835441524コン・セブリ島の魔法使い
別役 実
ブッキング 2004-12

by G-Tools



 昔むかし、子どもだったころ(本当に「昔」だと思えるこのごろ)、将来の夢は魔法使いになることでした。みんなが「花屋さん」とか「ケーキ屋さん」と書いているところに「魔法使い」とはっきり書いていたことは今でも忘れません。魔法使いになったら何をしたかったのかは忘れてしまいましたが、魔法には今でも惹きつけられます。
主人公のトマカンテ君は魔法使いしか読めないというオトマール語の文書を読むために、魔法使いワレガミ・ド・コロン氏を探しにコン・セブリ島出かけていくのです。どんな魔法使いなんでしょう? 
 コン・セブリ島はこのごろ滅多に訪れる人もいませんが、どうぞ、ガイドkmyがコン・セブリ島をご案内いたします。

(この先内容に触れますが、重要なネタばれは透明呪文をかけております。とはいえ、魔法使いワレガミ・ド・コロン氏に習ったわけではありません!)



 「コン・セブリ島、迷信と科学の汽車の旅」へようこそ。
 カリヨルト海峡を越えて船に乗るルート(所要時間5時間)もございますが、ここは船酔いの心配がない、海底トンネルを通る機関車ルートでご案内いたします。(翌日夕方着)この島は昔石炭採掘で有名だったのです。現在は廃坑となっておりますが、それでもまだ石炭の採掘の可能性を信じている方も多いとか。現在の島の主要産業は不明です。石炭採掘全盛期に栄えた街は地下深くへ伸びております。海から見た印象よりもずっと広い街なのです。
 島は三つの街から成り立っており、海峡ルートで到着する「海の街」、その一層下にある「地の街」、海底トンネルにつながる「底の街」になっております。汽車ルートで到着するのは底の街。コン・セブリ島を回るにはぜひ必要なものがあります。「ガイド」です。ガイドなしで街を歩くのはいかがなものかと思います。確実に行きたいと思う方向を示してくれるんです。迷うことなし! ガイドは誰かって? それはすぐにわかることです。さぁさ、早く早く。ガイドを頼む理由、ですか? 的確な方向を示してくれるからに決まっているでしょ。ウスラシロ、え、何のことです。この科学の時代に。迷信です、迷信。ガイドは肩に乗せて颯爽と歩くのがコン・セブリ流。
 移動にはエレベーターセンターをご利用ください。このエレベーター、慣れない方には少々恐怖を感じるかもしれません。外が見えるというか、何も見えないというか、そんなエレベーターです。
 長旅でお疲れでしょう。もう夕暮れになりました。本日のお泊りはホテル青い竜。ホテルの各部屋にはインテリアとしてうなぎの水槽を置かせていただいております。え? ウスラシロですか。だから、迷信ですってば! 夕食は自慢のカザーランド風サラダをオススメいたします。食後にはどろりとしたコーヒーを飲みながら、くつろぎのひとときを。
 翌日のご予定は自由行動でございます。「ガイド」と共にお楽しみくださいませ。青目石ですか……まぁ、お客様がご希望であればご自由に。魔法使い? 魔法使いねえ、今は科学の時代なんですよ。魔法なんて信じておられるんですか? 

 と、こんな島なんです。行きたくなるでしょう? 少々ゾッとすることが起こるんですが、後はトマカンテ君と一緒に島を楽しんで(楽しくはないとも言いますが)ください。
 物語に出てくる人名や固有名詞の響きも気に入っていますが(二等書記官ザムゾリオ君、月夜草、カリヨルト海峡など)、スズキコージ氏の絵だから味があるんです。地下深くに階層状に連なる妙な雰囲気の島。怪しい出来事にぴったりきます。

 読み終わってみての感想はこちらに↓ マウスを乗せると文字が出ます。


 怪しく暗い(地下なんだから当たり前かもしれないけど)街の雰囲気とは裏腹に、最後はやってくれた!という展開が面白い話でした。科学と迷信というふたつのキーワードは結末までつながっていました。正直言って、地下の街に住む知的な魔法使いを想像し、期待していたので裏切られましたね。小汚い上にやっていることといったら・・・・・・ああ、ここではとても書けないですね。おならとか鼻くそなんて!(書いちゃった!)自ら科学の恩恵を受けたいと切望し、ポップコーンのためなら島を捨てる男、ワレガミ・ド・コロン。
 魔法が本当に存在のでしょうか? 科学の力で鼻くその分析もできたんですよね。うーん、それが魔法か科学なのかはいまだに謎であります。確かにガイドのハゲは動けなくなったのだから、魔法かもしれない。錬金術が科学に変わったようなものなのかもしれない。実は科学、科学といってもわからないこともたくさんあるし割り切れないこともあるということを示唆しているようにも感じる物語でした。しかし、よく考えるとトマカンテ君はオトマール語を習いたいのでした。ということで、まだ終わっていない、始まっただけだと思わせる結末なのです。この続編とか、その後日談とかを勝手に想像してしまます。コロン氏、実はオトマール語を読んで魔法使いとして目覚めるとか、トマカンテ君とザムゾリオ君の友情とけんかの物語とか、実際ウスラシロって何?その正体は実は……という話があるようでなりません。
 島の全体図がスズキコージ氏によって詳細に(?)書かれていて、その地図を見ているだけでコン・セブリ島へ気持ちが運ばれていくのです。
 コロン氏、実は、というのはがありそうでやっぱり気になります。文字を消す呪文なんてもちろん知らないんでしょうね。教えてもらいたいところですけど、この記事では簡単な呪文を自前でやりました(笑)



 このごろ我が家ではスズキコージブームが起きています。子どもと一緒にスズキコージの世界を楽しんでいます。ということで、「スズキコージ カテゴリ」を作ってみました。まだまだ取り上げたい本がありますが、また次の記事で。(別役実さんの本も今まで読んでいなかったので、気になっています。図書館で発掘中)

■『コン・セブリ島の魔法使い』関連記事
[本]のメルマガ2005/3/25号 (こわくて、楽しい教育――スズキコージの絵)

スズキコージ公認ホームページ ZUKING

posted by kmy at 21:32| Comment(4) | TrackBack(0) | スズキコージ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
kmyさん、こんにちは!
別役実さんの本はけっこう読んだけど、スズキコージさんはほとんど手付かずの魔女さんです。(^^)

>将来の夢は魔法使いになることでした

きゃあああ〜っ!!
ちょうど今日の魔法の本棚に、そんな女の子のことを書いた本を紹介したとこなんですよ。
シンクロニシティが起きてる!!

そして・・・そんなkmyさん、好きだなぁ。
マウスを乗せると・・・の魔法にびっくり。

ところでスズキコージさん、愛称は“コージズキン”っていうらしいですね。
Posted by 本棚の魔女 at 2005年10月19日 01:25
本棚の魔女さん、同じく魔女を目指しておりましたkmyです。魔女さんの本棚もこれから拝見しにいってきますね。

別役さんの話、図書館で借りてきました。宮沢賢治も再読したほうがより楽しめるかも、とか読む順番を考えて借りたほうがよかったかな、と思って検討中ですけども。

スズキコージさん、今まで「妙な絵」と思っていましたが最近はまっています。絵の色と不思議世界に引き込まれています。
Posted by kmy at 2005年10月19日 17:34
うわ、復刊されたんだぁ、この本。
復刊ドットコム、やってくれるなぁ♪
そういえば復刊ドットコムを運営しているブッキングの営業部ともおさんのブログ、ご存じですか?
http://blog.book-ing.co.jp/tomoo/
私も先日初めてお邪魔したんですが、その時の話では、復刊ドットコムは最近スズキコージ作品に力をいれているそうですよ〜ムフフ。
Posted by えほんうるふ at 2005年10月21日 11:35
えほんうるふさん、情報ありがとうございます。
ブッキングの本、ときどき見かけると気になってしまいます。子どものころに読んでおけばよかった新鮮な衝撃を受ける本が結構ありますね。
別役実+スズキコージの本は最近注目しています。昔読まなかったけど読んでおけばよかった、という本があります。(大海赫さんとか)
あ、今読めばいいんだ、と最近開き直ってますが(笑)値段が高めなので、図書館利用していますが、買っておかないとまた絶版に?と思うと焦るこのごろです。
Posted by kmy at 2005年10月21日 15:06
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