2008年01月07日

『九時から五時までの男』

 年末に家族の買い物をアマゾンで頼まれたので、文庫一冊をついで買い。早川の異色作家短編集で気に入った作家の一人がスタンリイ・エリンです。あとがきによると、ジョン・コリア、サキに続く異色作家としてイギリスのロアルド・ダール、アメリカのスタンリイ・エリンとして紹介されています。意外な結末を呼ぶというよりは、たぶんこうなるのかもしれないという予想を抱かせつつ、そこへ向かって読ませるような文章を連ねていくような感じがします。ひとつひとつ、こうなるべくして畳み込んで行くという印象。
4150719551九時から五時までの男 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
Stanley Ellin 小笠原 豊樹
早川書房 2003-12

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 この中では「不当の疑惑」が特に気に入りました。休暇で電車に乗った男が乗り合わせた他の乗客の話を聞くという話ですが、その話の中身と休暇中の男のかかわりあいがかなり好みの作品です。この余韻がたまりません。
 「ロバート」はどうにかせねばという状況を打開しようとしているのに、それが噛み合っていかないという毒っぽい怖さを感じます。どうにか、どうにかしなくちゃと思っているのにというこのもどかしさや怒り、挫折……なんだか人ごとに思えないように残ります。
 「ブレシットン計画」これはもはやフィクションとして読む時代ではなくなっているような感があります。年老いた親との関係解決を図るにには? いずれ自分も年老いる、そのときは?
 「倅の質問」。このラストへ行き着くまでの世間一般の感情、自分自身の義務、正義、誰かがしなくてはならない仕事、でも、結局はこの質問の答えに凝縮されているという、そしてそれを読む自分自身にもそうした傾向があるような、自分を問われるようなぞっとする感じがあります。
posted by kmy at 11:32| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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