2007年12月30日

『11の物語』

 エスカルゴつながりで気になっていたかたつむりが出てくる小説。じわじわと詰め寄ってくる雰囲気が怖い小説でした。

415175951411の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
Patricia Highsmith 小倉 多加志
早川書房 2005-12

by G-Tools


「かたつむり観察者」
 食用かたつむりを飼う話。表紙にかたつむり写真があって、それを見ているだけで食欲が失せます。読み終わるとかたつむりを食べたい気持ちがさらになくなること請け合い。ハイスミスはかたつむりの観察が趣味だったと解説にありましたが、食べることはしなかったのかどうか、気になるところです。

「すっぽん」
 こちらも食用に求めたすっぽんですが、そのすっぽんに興味を抱いた息子についてのすれ違いの数々から行き着く悲劇です。すっぽんと少年の心理の絡み合いがなかなかいい味です。すっぽんのスープ、本当は美味しいのでしょうが、生きたまま調理して食べるということについていろいろ考えてしまいます。

「モビールに艦隊が入港したとき」
 この作品がとても気に入りました。現実の状況を打開しようと、そのときに一番よいと考えた判断で人は生きている。でも、なかなか最善という結果には行き着かず、むしろ裏目にでてしまう。だからこそ、この状況を打開して幸せになるんだという主人公のひたむきな願い、選択の結果としての今。今よりもっとうまく、よくなりたいという気持ちと現実のギャップが心に残る作品です。

「からっぽの巣箱」
 これは怖い。心理的に怖い。何かが家にいる。イーディスは「ユーマ」だと思うのだが、ユーマが何でどういうものかは分からない。問題は解決されたように見せて、「過去のあやまち」を思い出させるものとして、ずっと引きずっていく。なかなかすっぱりと切れないものは人間の記憶。こういうところに捕らえられると不安は増大していくもの。そして薄れることがなく――こういうお話に惹かれます。

その他収録作品
「恋盗人」(手紙、男、女)
「クレイヴァリング教授の新発見」(かたつむり、無人島)
「愛の叫び」(カーディガン)
「アフトン夫人の優雅な生活」(夫、精神分析医)
「ヒロイン」(保母、子ども、憧れの家)
「もうひとつの橋」(家族の死、ルンペン、ホテル)
「野蛮人たち」(野球、生垣)
posted by kmy at 14:57| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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