2007年12月12日

『歯とスパイ』

 ブッツァーティの隣に置いてあったので、手にとってしまった。内容としては、S.Gという人間の女性関係や子どものころのとある記憶、懇意にして、敵となった音楽家との関係、加えて要人の死……などなどが個人的で断片的なエピソードとして語る小説。ただし、どの出来事も自身の歯と密接に関係していて、下の臼歯が痛んだとき、だれそれとの関係は終わった、などと、事件はすべて「歯」に結びついています。

4309202853歯とスパイ
Giorgio Pressburger 鈴木 昭裕
河出書房新社 1997-05

by G-Tools


 物語の構成としてはなかなか面白いと思います。時系列ではなく、あの記憶、この記憶というのが語られ、著者自身もコンピュータにアクセスするようなものだとしています。内容からすると、転々と職業を変え、各国を渡り歩く主人公S.Gはスパイらしいと予測がつく(と訳者あとがきにあります)のですが、その活躍は出てこず、メインはその先々で知り合った女性に加えて、さまざまなタイプの歯医者と治療が描かれます。世界で起こる事件、個人的に関係を持つ人物との決別は、歯が抜けることや、歯の痛みなどで示唆されるという奇妙な話です。
 それにしても、どの歯も痛みや出血、治療が施されている、と思って数えてみたら30本ほどの歯に結び付けられていました。成人の歯は48本ということですが、人生において、歯はひとつひとつわるくなり、抜け落ちていくかと思うとぞっとします。この数々の治療歴も異常な数字ではないのでしょうか。

 読んでいると歯がぽろっといつか抜けるかも、とか、歯石とらなきゃ、とか、入れ歯になるときって歯を全部抜くのか、と口の中が妙に気にかかります。小説よりも、自分の歯のほうが気になりました。面白いかどうかは、歯の治療歴にもよるかも。


posted by kmy at 10:50| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア&フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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