2007年11月27日

『王女マメーリア』


『王女マメーリア』 ロアルド・ダール作 田口俊樹訳 早川書房

 無性にダールの短編が読みたくなったのです。まだまだ読んでないのがあった、と思い出して図書館に。こんな面白い本が書庫に入っているとは、道理で目に付かないわけだと思いました。
 日本で独自に組んだ短編集だそうです。シニカルな笑いの短編がある一方、ラストがなかなかいい感じの作品もあり。児童書のいくつかにこの短編のエッセンスが振りかけられているように感じられました。

 「古本屋」はあのいじわる夫婦を思い出させる二人です。醜悪で髭で覆われた顔つきのバゲージ氏と絶望的な容姿のトトル嬢の儲けの手口はいまどきの詐欺と似たような感じです。この古本屋がどういうあくどい手口なのか、そのやり口が分かったとこでこの二人が成功し通しというわけにはいかないと読者は予想するのですが、なかなかこれが鮮やかで面白いです。いかにもありそうな物語で、ありそうなオチなのだけど、そこへ行き着く語りが面白い。「いじわる夫婦(アッホ夫婦)」の雰囲気を感じさせつつ、こちらは完全に大人向けです。

「外科医」「王女と密猟者」の二編は「マチルダ」を思い起こさせました。主人公になっている人物は欲深さに身を落とした人物とは逆のキャラクター。こうした人物に対してダールは温かな笑いで締めくくります。オチはほっとする瞬間でもあります。

「アンブレラ・マン」も見た目と中身のギャップというのでしょうか、人間の行動と雰囲気などは見届けてみると意外なものであるというその裏表のコントラストが見事!という作品です。

 はずれのない短編集でした。かなりお勧め。

収録作品メモ
「ヒッチハイカー」 The Hitch-Hiker
「アンブレラ・マン」 The Umbrella Man
「ボディボル氏」 Mr. Botibol
「復讐するは我にあり」会社」 Vengeance Is Mine Inc.
「執事」 The Butler(Mr. Butler)
「古本屋」 The Bookseller
「外科医」 The Surgeon
「王女と密猟者」 The Princess and the Poacher
「王女マメーリア」 Princess Mammalia
この記事へのコメント
ロアルド・ダールの児童書は、図書室に揃っているのですが、大人の本は読んだことがありません。この本は、かなり面白そうですね。
児童書とは違ったダールの魅力が発見できそうです。読んでみたい!!
この辺の図書館にあるだろうか?が不安・・・。
Posted by Helenaヘレナ at 2007年11月29日 09:50
ヘレナさん
ダールの大人向け短編、どれも面白いです。
児童書「ヘンリー・シュガー氏のわくわくする話」(奇才ヘンリー・シュガー)に「ヒッチハイカー」が収録されていますので、そのテイストが気に入ればこの短編集もヒット!だと思います。
子どもにはちょっと描写が……というものが大人向け短編にはあります。あまりどぎつくは無いのですが。
図書館にあるといいですね。
(文庫でも出ているので、いずれ買おうかな、とも思ってはいます)
Posted by kmy at 2007年11月29日 14:54
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック