2007年11月25日

『90年代SF傑作選〈下〉』

415011395590年代SF傑作選〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)
山岸 真
早川書房 2002-03

by G-Tools



 最近のもの、とはいえ10年は経っているのですが、90年代のSFアンソロジーを読んでみました。アマゾンでの評価はあまり高くないようですが、わたしはなかなか面白かったです。好みに合いそうなので<下>を読了。
「ルミナス」グレッグ・イーガン
いくつかの書評で評判がよかったので、これを読んでみたいと思ったのです。しかし、何しろ数学的SFということで、最初すごくとっつきにくく、さっぱり分からない。現在の数学的体系とは異なる体系<不備(ディフェクト)>が存在する・・・という物語。読み通すとちょっと違った世界の感覚になるような感じです。
「数学の定理は、物理的系(システム)がそれをテストした場合にのみ真となる。系のふるまいがなんらかのかたちで、その定理が“真”か“偽”かに左右される場合に」(P296)

 これを理解するのが難しい〜。解説してくれているページがありました。なるほど、図にするとややわかる。なかなかすごい話なのです。読み返したくなります。

「ダンシング・オン・エア」ナンシー・クレス
能力強化の手術が発達し、スポーツ界ではその手術を受けることによって技術は今までの能力をはるかに超えたものとなる。この能力強化をめぐって起こる事件、プリマのキャロライン、訓練生デボラ、記者で能力強化に疑問を持つ母親スーザン、キャロラインの母で巨万の富を持つ老女オルスンと互いには密接にかかわり合わない登場人物たちなのだが、その思惑の違い、突きつける現実、夢が交錯していく物語。これはSFという感じでもなく、親子関係、親が子どもに期待すること、子どもが抱く夢を叶えること、考えさせられてしまいます。バレエダンサーという華やかさの裏に潜む陰。大きな舞台への夢を叶える代償はいかほどか、それを心配する親と期待する親の違いとは何なのか。考えさせられるテーマが含まれています。

「理解」テッド・チャン
 これも印象に残りました。薬の副作用で驚異的な能力の発達を遂げるレオン。知能も肉体も普通の人間とは異なる領域までに「進化」していく、その先で、というもの。自身の内部でどんどんと自己が変革していくような感覚になってきます。取り巻く現実とは違った層に存在する感覚です。
posted by kmy at 13:33| Comment(0) | TrackBack(0) | アンソロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック