2007年10月17日

『猫とともに去りぬ』

 イタリアものは今まで縁遠くほとんど読んだことがない気がします。ブッツァーティが非常に面白かったので同じく光文社古典新訳文庫シリーズのイタリアもの、ロダーリの『猫とともに去りぬ』を。こちらはブッツァーティとは対照的に明るい話ばかり。それでいて皮肉がこめられた内容にちくっとさせられる感じが面白いです。
4334751075猫とともに去りぬ (光文社古典新訳文庫)
関口 英子
光文社 2006-09-07

by G-Tools


 SFっぽい展開のお話も多くて気に入りました。

「チヴィタヴェッキアの郵便配達人」
《コオロギ》と呼ばれる配達人はあまりに早くてときには前の日に配達してしまう、とフィアンセがしゃべっているのは冗談かと思ったら、これがなんと本筋に関わってきて、急ぎすぎて、寝て起きたら前日だったという展開になります。ここで語られる「家族の生計が僕の肩にかかっている」が比喩ではなくて文字通りの機能を持つところも面白い。

「ガリバルディ橋の釣り人」
魚がつれないのは名前のせい、とばかりに荷物をまとめて向かった先は過去への旅を取り扱う旅行代理店「タイムツアー」で、タイムマシンでさっと過去に戻って自分の都合がよくなるように人生設計をやり直す。それも魚を釣るためだけに! 自分の都合がよくなるようにと過去を改ざんするという普通の時間ものSFとは逆を行くあたりで、未来も変わって当然というのがおかしい作品です。

「ピサの斜塔をめぐるおかしな出来事」
突然現れた宇宙人。目的は固形スープのシールを集める懸賞でピサの斜塔が当たった婦人に実物を進呈するという。すでに地球の多くの建造物等が懸賞用に権利を申請されているという。なかなか皮肉っぽい作品で好きです。

 他には生物と無生物が同じように共存しているような奇妙な世界を描いている「恋するバイカー」や「箱入りの世界」など。どうしてそうなったかという理由はなく、日常の感覚から逸脱した世界へすっと引き込んでいく物語ばかりです。日常の続きに非日常が存在して、気がつくとそれが不思議でもなんでもないことでしょうというのは、一種の皮肉なのでしょうね。一歩先はわからない現代なのかも。それにしても洗濯機内蔵の人形(「おしゃべり人形」より)ってどんなのでしょうね。こういう二者を結びつけてしまうのはすごいです。


posted by kmy at 14:47| Comment(2) | TrackBack(1) | イタリア&フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これって「神を見た犬」と好対照の一冊ですよね。
イタリア文学はいいですよ。日本人とメンタリティが近いのだと思います。
私はカルヴィーノやタブッキを愛読しています。おすすめはタブッキの「供述によるとペレイラは」ぜひご一読を。
Posted by piaa at 2007年10月17日 21:55
piaaさん
イタリア文学、ロシアについで興味が沸いてきました。名前も初めて聞く作家ばかりで、piaaさんが紹介されているタブッキはかなり気になっていました。
これはチェックしてみたいと思っています。
ご紹介ありがとうございます♪
Posted by kmy at 2007年10月18日 11:00
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック

『パパの電話を待ちながら』
Excerpt: 「幸福です。」, 2009/5/13 読んでいるあいだじゅう、口許がゆるんでいました。 たくさんの微笑ましい情景がやさしいことばで描かれていたからです。 体制を批判するのにも辛辣な表現はなされて..
Weblog: おかめはちもく。
Tracked: 2009-05-14 23:45
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。