2005年08月14日

『羊めぐる冒険』

4062749122羊をめぐる冒険〈上〉 (講談社文庫)
村上 春樹
講談社 2004-11

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4062749130羊をめぐる冒険〈下〉 (講談社文庫)
村上 春樹
講談社 2004-11

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 このごろ村上春樹さんの本を続けて読んでいます。遅ればせながら、というところですが、非常に面白いのです。ことばのひとつひとつが磨いてある、という印象で、独特の言い回しや比喩などにはっとさせられたり、主人公「僕」と「僕」を巡る人々とのやり取り、会話、感じ方など、どこかしら自分自身と重ね合わせてみたり、思い起こさせることなどがいくつもあって……わたし自身、この本の主人公と年が近いのもあるのかもしれない。わたしにとっては今が読み時、という気がしました。共同経営者との仕事の関係、かつて非常にうまく行っていた二人、現在の「僕」が感じること。街に帰った「僕」が感じたこと。少しずつ変わっている中で変わっていく自分と周り、というのを読みながら自分自身でも見つけていたように思います。
 そうした感情や気持ちをなぞることと同時に、この本はストーリー自体も面白く、そして登場する料理や本などは物語の中のことだから、余計に惹かれるものがありました。
(内容に触れますので、既読の方は「続き」をどうぞ) いるかホテル、星の羊、羊男など不思議なつながり探し求めていくストーリーはとても面白いのですが、この中でも特に好きなのは「十二滝町の歴史」という郷土史の本。この町は実在していないようですが、さもありなんと書かれていて、「僕」と同様にアイヌの青年の エピソードに引き込まれてしまいます。寂れたこれといって特徴のない町の風景も浮かび、妙にリアリティを感じます。もし、あったとしてもどうってことない町なのでしょうが、なんだか「僕」と一緒に行ってみたいような気になる、そんな町です。
 そんな山奥の別荘はかなり充実した設備があり、電話も電気も水道もあってというのは驚きつつ、財力でどうにかしたのでしょう、と思うことにします。電気は自家発電で、水は山の清水を引き入れた自家用の水道でしょうか。たぶんね。ガスはプロパンのボンベを季節のいいときに運べばいいし……あ、なんだかくだらないことまで考えていますね。
 この山奥の別荘には様々な食材が揃っていて(レストランを開けるくらいですから、きっと凄いんでしょうね)、「僕」はロースト・ビーフを焼き、鮭のマリネを作り……。読んでいるだけでこういう料理の描写にはどきどきします。物語に食べ物が出てくるのって、筋がシリアスでもちょっとほっとした暖かい気持ちになるような、基本的に食べる話は好きなのです。そしてこの別荘には気になる本が。「パンの焼き方」という本。これを読むと誰でも簡単にパンが作れるそうで、その工程は書かれていないものの、「僕」はこれでパンを焼きます。材料もきちんとストックされていて、「僕」は本の通り簡単にパンを焼き、サンドウィッチを作ります。あーあ、わたしが最初に買ったパンの本とは大違い! 最初に買った本ではどうしてもうまく行かなくって、何十分こねてもまとまらず、結局パン作りを断念しました。本ではダメだったので、習いに行ってしまいましたが……この本、本当に気になるんです。掲載されているパンの種類は何だろう? 作ったパンは? 勝手に予想した感じではカンパーニュのようなのかな、なんて思っています。オーブンはきっとビルトインのガスオーブンだろうな、などと想像してしまいます。

 村上春樹さんの物語は、どこかしらでつながっているような、そんなところも気に入っています。もちろん、この本は『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』の続きですが、続きということではなく、『ふしぎな図書館』さらには短編集にも通じるものがちりばめられていて、その「つながり」の奇妙な感覚を味わうのが楽しいのです。筋を追うことよりも、場面場面で自分自身が様々に想起されるイメージや感覚を多層に味わえるということが魅力のように思います。感想になっていないような感想……難しいです。

 自分にもうまく説明できないことを、他人に向って説明することなんてできるわけはないんだ。
 たぶんね。

(文庫版 上 P130 鼠の手紙より


 文章を書いているときの気分はいつもこんな感じなのです。


posted by kmy at 11:28| Comment(2) | TrackBack(0) | 村上春樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なつかしいー。
この本が一番好きかも。
あ、「世界の終わり〜」のほうが上かな(笑)
最近は「ねじまき鳥〜」以降ごぶさたです。
読書の時間が圧倒的に減った気がします、私。
活字離れです(笑)
ハリーポッターも、去年のやつまだ読んでないんですよね。
おととしまでは、自分で購入したものの
去年は、さすがに手がでなくて、図書館では200人待ちで(笑)
そろそろ借りれるかなぁ・・・。
Posted by canaco at 2005年08月16日 16:52
本当に、最近やっと読む機会を得て、楽しみながら村上さんの本を読んでいます。
『世界の終り……』も最近読んだばかりですが、話の作り方の雰囲気、面白いですね。
短編や長編、それぞれに共通する要素を見つけるようなところはハリー・ポッターの伏線の雰囲気に近いように感じています。
コメントありがとうございました!
Posted by kmy at 2005年08月16日 16:58
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