2007年10月02日

『カラマーゾフの兄弟』

 一度は読んでみようと思った『カラマーゾフの兄弟』。長年の課題でした。光文社の新訳が出たのでいい機会だから、と思っている方が多いようですがわたしもその一人。やっと読了。聖書や神、ロシア正教に関する知識に疎いため、時間がかかりました。題名と作者は知っていたものの、長いということで敬遠。漠然としたあらすじを聞いたことがあったくらいで、物語をほとんど知らなかったことが逆に幸いして、読んでいる途中で「この後どうなるのだろう?」とどきどきしながら読むことができました。
4334751067カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)
亀山 郁夫
光文社 2006-09-07

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  結局1ヶ月かけて、読んだり戻ったりしたのですが、5巻目のエピローグ亀山氏による「解題」を読むと、なーるほど、たださらっと物語をなぞっただけではわからない細かなディティール、伏線、一致などがよくわかります。読み返してみようという気になります。

 特にこの物語で興味を引いたのはその構成で、第一部と第二部に分かれており、特に第二部が重要になると作者が最初に語っているのです。結局第二部はドストエフスキーの死によって書かれることがなく、実際のところ未完の小説だということですが、最後まで読み通してからその部分を読み返すと、いったいこの「第二部」とはどんな小説になっていたのだろうという謎が気になって仕方ありません。アリョーシャは書かれるはずだった13年後に何をしているのか、受身的に人々の間に立っていたアリョーシャの「活躍」は何だったのか、と考え、解説を読むのはなかなか面白いです。

 少々感想メモ。「場違いな会合」あたりはなかなか読み進めるのに「?」というところがありました。キリスト、ロシア正教に詳しくないため、「祝福を与える」というのが実際どういうことをしてどういう意味を持つのかあまりよくわからなかったりします。この会合が終わったあたりから物語の流れがどっと大きく変わってきて、死、事件、恋愛、喧騒など場面、人物がくっきりと浮かび上がってきます。大きな流れとしてのミーチャ(長兄)とカーチャ、グルーシェンカの関係の変化はダイナミックで、人間の思いや愛などを感じさせる運びですが、サイドストーリー的な少年とアリョーシャのエピソードの部分が一番印象的でした。これからこの少年たちはどのように大人になっていくのだろう、というところで物語は終わってしまうのですが……。
 人間は何を「恥」と思うのかについて、ミーチャが三千ルーブルについて考えていたことや、スネギリョフがカーチャから贈られたお金についてあれこれ想像した果てに受け取らなかった部分など、読み返したくなる部分です。殺人という事実があり、そこをめぐるさまざまな人間の思惑についてはすっきりとは解決しない人間の深淵を感じました。
 有名な「大審問官」はもっとじっくり読みつつ、解説なども参考にして考えたい部分。悪魔についてももう一度かな。

 『カラマーゾフ』は再読すると面白い、と思いつつ、図書館で借りたので返却期限が切れていました(大汗) ちょっと間をあけてまた再読したいと思っています。今度は別の翻訳で読んでみようかな、と。

 『群盗』と『ファウスト』も読まねばと思い、返却ついでに『群盗』を借りようとしたのですがどうも見当たらない。文庫もないし、文学全集にも入ってなさそうだし……検索してみるとシラーで出てこない。とりあえず帰ってきて、再度図書館サイトで検索してみると「シルレル作 群盗」が所蔵されているそうです。出版は1929年とあります。1929年の本、どんなのだろう? 次回借りてみようかと検討中です。新訳が出るといいのに、と思うのでした。



posted by kmy at 15:35| Comment(5) | TrackBack(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も挑戦しようと以前から思っていまして、この光文社古典新訳文庫版、完結したから買おう!と思ったら、前の巻(1〜3巻)がちっとも本屋さんに並んでないんです。
いや本屋さんに並んでいても、5冊買ったら4000円くらい?お財布直撃だ。う〜む
Posted by piaa at 2007年10月02日 20:44
きゃ〜、kmyさんとうとう読破されたのですね!
とても面白いとは聞くものの、その長さにただ敬遠しています。とはいっても、一冊でずいぶん長いものもあるのにね。
とりあえず借りてる本を何とかして…。

1929年発行の蔵書があるとは、それもすごいですよね。
昭和二十年代の文庫を借りたことがありますが、紙は焼けてるし縁もしおりもぼろぼろで、うっかり触ったら壊してしまいそうでした(笑)。
もしかしたら禁貸し出し本かも?
首尾よく借りられたら教えてください。
Posted by ヤヤー at 2007年10月02日 22:08
piaaさん
積読になりそうでしたので、とりあえず図書館で借りては延長し……で読み終わりました。読み通してみると信仰、神、悪魔のテーマはなかなか難しかったのですが、どのキャラクターも際立った特徴があり、思い入れも生まれました。
当初3冊くらいだと勝手に思っていましたら、5冊ということで、値が張るのでまだ買えません(汗)
図書館にある他の訳も読んでみようと思いつつ、考えながら読むので時間がかかりそうですが……。
亀山氏の分析本も読みたいと思っています。



ヤヤーさん
ドストエフスキーは青空文庫の「鰐」を読んだら意外といけるかも、と思い、一度は読んでみなくてはと長年思っていました。長い割りに事件の中心は3日くらいの出来事でそれに驚いたり。内容の濃い3日間だ!と。
シラーならぬシルレルですが、増刷でもう少し新しいとかなのかどうか?疑問です。一応「貸し出し可」になっていますが、文字も旧字なのかも? ちょっと読みにくそうです。でもそんな本があるのも驚きです。見てみたいことは見てみたいです。
Posted by kmy at 2007年10月03日 10:02
文学してますね〜。
私も『カラマーゾフの兄弟』は一度読んでみたいと思いつつ手が出せないでいる一冊です。

芥川龍之介がドストエフスキーにとても影響を受け、『蜘蛛の糸』のモチーフも『カラマーゾフの兄弟』から得たと何かで読んだような気がします。

ドストエフスキーに限らずロシア文学ってどれもみんな長くて躊躇してしまいます。でも時間が出来たら読んでみたいなと思いました。 
Posted by pigumonn at 2007年10月13日 23:55
ぴぐもんさん
光文社の古典文庫というのはなんとなく今まで読まなかった名作を読んでみようかな、というきっかけにしてくれるような気がします。
岩波や新潮で読んでもいいのですが、新鮮な気がして読む気になりました。
ロシアは長年「読もう」と思いつつ読んでなかったのですが、今年ペレーヴィンを読んでから興味が沸いて、ゴーゴリ、トルストイときてやっとドストエフスキーです。
「蜘蛛の糸」と同じプロットの昔話を登場人物が語る場面がありました。キリスト教と仏教で神様には違いあれど、人間性についは共通なのかな、と思う場面でした。
Posted by kmy at 2007年10月14日 20:23
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