2007年08月31日

『10ドルだって大金だ』

 続けてジャック・リッチー。さらりと読める短編。気楽に、いつでも、どこからでも読める楽しさ。強盗、殺人が描かれているのにも関わらず、人間関係のどろどろしたものはまったくなく、あっさりとした犯罪、それを解く推理の面白さがメインのミステリー。
430980101310ドルだって大金だ (KAWADE MYSTERY)
藤村 裕美 白須 清美 谷崎 由依
河出書房新社 2006-10-13

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 お気に入りをいくつか紹介。
 「世界の片隅で」金を強奪して逃げ切れば、そこにはすばらしい生活が待っている――と考えるのが犯罪者の通常心理とするならば、まったく違う価値観を見せてくれます。広い世界ではなく、狭いながらも自己完結した世界。現代的な結末です。

「誰も教えてくれない」失踪したポーラ・スミスについて架空の調査をまとめた報告書を作成してほしい、そんな依頼がヘンリー・ターンバックルのもとに舞い込む。ポーラ・スミスがどうしているかはこの際関係ないというのだ。不可解な依頼は誰かをだますため? ターンバックルは実在のポーラ・スミスがいることを突き止めるが、ここからさらにポーラに関する奇妙な依頼が舞い込み……。ヘンリー&ラルフのシリーズ。カーデュラシリーズよりこちらのほうが好みです。

 しんみりとか、よかったとか、悔しいとか、感情に訴えるものはありません。奇妙な事実、結びつける推理、論理、向かう結末の面白さ、というところでさっぱり、あっさりした後味で楽しめる短編ばかりです。そこが受けるのでしょうね。「可能性の問題」はある犯罪があり、自分が犯人だという人物がすでにいるのにも関わらず、この犯罪の「本当のところ」はどうなのだろう?という推理が面白いです。

 検索していたら『狼の一族』(異色作家短篇集18 若島正編 早川書房)に「貯金箱の殺人」というリッチーの作品がある! あれ、これ、読んだはず。このアンソロジーは全部は読まなかったのだけど、このリッチーの作品はなかなか面白かった……はずだけど、ええとええと、たぶんこうなって、ああなってだったと思うという少々自信のない記憶があります。『10ドル』の解説に「読んでいる間はひたすら愉しく面白く、読み終えた後には見事に何も残らない」と評されていますが、確かにそうかも。時々、こういうものは無性に読みたくなるとき、あります。

 新刊がでるそうです。『ダイアルAを回せ』ジャック・リッチー
駒月雅子・武藤崇恵・藤村裕美・好野理恵訳 河出書房新社
9月中旬に発売予定。本の中の骸骨によるとこのシリーズではジョン・コリアの本も刊行されるみたい。コリアも気になるなあ。

posted by kmy at 15:10| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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