2007年08月29日

『クライム・マシン』

 最後まで読まずにはいられない、巧みな語り口であっと驚かせる作品を集めた短編集。ぴんと張った糸が最後で意外な方向に投げられるものばかりです。

4794927479クライム・マシン (晶文社ミステリ)
Jack Ritchie 好野 理恵
晶文社 2005-09

by G-Tools


 誰もが抱いている黒い願望を形にしたといえる「歳はいくつだ」。余命4ヶ月と診断された男の行動、結果、そして世間の人々、読者の反応。わかるなあ、と。人間の持つちょっとした気持ち、行動、態度、言葉、そういうものにこそ人間は動かされていると感じる短編です。これを読んで無反応という方はあまりいないんじゃないかな。小気味いい、小説でしか味わえない快感なのかもしれません。自分の中のささやかなる復讐心が達成されるようで……うまいところを突いています。ね、そう思うでしょう、といわれているようです。

「殺人哲学者」、これもラストが巧妙です。たまたま通りかかった人間を殺した男。刑務所に入れば独房に入れられ、思索にふけることができるからだといい、殺す人間は誰でもよく、殺された人間は自分には何の意味もないと言い切る男。ラストがね、やっぱり面白い。

「縛り首の木」は不気味な一夜を描いた作品。車の故障で立ち寄った町、ここにはガレージも電話もない。二人連れの刑事はこの町のコンセプトは「1847年」だろうと話しあう。魔女の呪いによって毎年誰かが縛り首になるという逸話、絞首刑用のロープの下がった木、これらが意味しているものは……と主人公のヘンリー刑事だけが気づいていない中、読者は緊張しながら一夜の出来事に目が離せない短編です。
posted by kmy at 15:08| Comment(2) | TrackBack(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これは傑作でしたね!
時代を感じさせるものの、面白さには何の影響もなく、かえって新鮮だったくらいです。
あとがきの「超短編」、その後の作者の

「まだもう少し削れると思うんだよ」

ということばには脱帽。
てことは、たった一行に凝縮されるかも?
自分にもできるかな?と思ってその二行を推敲するのに挑戦してみましたが、とても無理でした(笑)。
それにしてもジャック・リッチー、その皮肉さ加減もわたしにはちょうどいいなぁ。

星新一さんのショートショートもすごいなぁ、と、改めて感心しています。最相 葉月さんの書いた評伝を借りて来ていますが、まだ手つかずです。
Posted by ヤヤー at 2007年08月30日 14:31
ヤヤーさん
こういう短編は大好きです。ヤヤーさんのリストマニアにはだいぶ前に追加されていましたね。
二十世紀半ばくらいの古さがすきなのかもしれません。このころのSFやミステリって古典に入ってしまうのでしょうが、いいなあと思います。
星さんにも通じますね。この短さに含ませた意味、最後の一言などで「やられた〜」と思う瞬間が楽しい小説でした。
Posted by kmy at 2007年08月30日 15:26
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