2007年07月26日

『マイナス・ゼロ』

4794212232タイムマシンをつくろう!
P.C.W. デイヴィス
草思社 2003-06-18

by G-Tools



 ハインラインとくれば日本はこの人らしい、ということで初読です。タイムマシン、時間、パラドックスというテーマ、大好きです。
 時は昭和初期、浜田俊夫の少年時代から物語が始まる。昭和20年、俊夫は14歳、隣の女学生啓子は17歳。空襲で啓子の親伊沢先生は亡くなり、啓子は行方不明になってしまう。伊沢先生は臨終の際に俊夫に謎のメッセージを残す。そのメッセージに従い、18年後の昭和38年、俊夫は故伊沢家の跡地に赴くのだが、そこは及川という家になっていた。なぜか伊沢先生の使っていたドーム型研究室は残されており、詳しい理由も聞かずに及川氏は俊夫をそこに案内して自由にしていいと言う。そこに突如現れた物体から出てきたのは18年前と変わらない啓子でした。

 その後、黒い金庫のような物体がタイムマシンだとわかり、伊沢先生に会うため昭和9年に行くつもりが昭和7年についてしまいます。タイムマシンに再び乗って帰るつもりが、アクシデントに遭ってもとの時代に戻れなくなってしまい、昭和7年で俊夫は生活をはじめるのですが――。

 この物語のメインは昭和初期の時代にもし行ってしまったら、どのように現代人(といっても昭和38年ですが)が生きていくかというのがうまく描かれています。生活するためのお金がタイムマシンになぜかあったのでそれを利用させてもらうことにします(理由は後でわかります)。物価の換算、町並み、人との出会い、ふれあい……この2年後には「伊沢先生」がここに来ているはずだからそれにのってもとの時代に戻ればよいのだと構えつつ、歴史は思っているように運ぶのか、改変しようとするとどうなるのか、などさまざまな思惑で暮らしていきます。そして俊夫の人生、啓子の人生との複雑な絡み、驚愕の事実など、タイムマシンとパラドックスに頭の中がいっぱいに!

★ここからネタばれ(反転で読めます)
 最後で循環するパラドックスとなる自分が自分の娘である!という事実、これはこれで悩むところですが、この啓子を引き取った伊沢先生については最後まで「謎の未来人」とだけで終わってしまったことが特に気にかかってます。伊沢先生はなぜ昭和9年に東京に来たのか、そこにドームがあることを知っていたのか、俊夫の場合のようにお金を用意してきていたのか? 啓子を引き取ったのはなぜか、先生は歴史を改変できなかったのか、などなどがすごく気になります。伊沢先生は未来から眺めて俊夫と啓子のことを知っていたのか、ということも気になるところです。それからあの警官! 彼の場合は逆で戻ってきた様子がなかった、ということは現代で暮らすことになったのでしょうか。それとも? 戸籍や住まいなど、難しい問題が逆に出てきますよね。大丈夫だったのかな、警官のおじさん。

 タイムマシンに非常に興味あります。もし本当にそういうものがあるのなら、今この時代に誰かが来て何かしている痕跡があるのではないかと思うのですが、簡単には見つけられないだけなのでしょうか? 別の時代で3日過ごしたら、戻ってきたときは3日分細胞が老化しているのでしょうか? この物語の場合は戻っていかれなくなったので、そこで過ごすことになり、年をとっていくのですから、時代を移動したあとも時間の流れ方は変わらないし、戻ってきたらその過ごした時間分年をとっていることになるとは思うのですが、タイムマシンを作動した後、いったんその時間以降の自分の存在はどうなるのか? 俊夫はいなくなってしまいましたが、もし戻ってこれるとしたら、俊夫の人生はその昭和38年は連続しているといえるのかどうか? 説明がややこしくなりますが、これが気になるところです。
posted by kmy at 19:13| Comment(2) | TrackBack(1) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しております。
この本、復刊するようですね。
僕も中学生の頃に読んだ気がするのですが、すっかり忘れていました。和製タイムファンタジーの魅力は、その時代を「なんとなく」わかる感じですね。そして、物語が書かれた当時の現代もまた過去になっている、ということを読者が感じる二重構造もまた、不思議な魅力があるものだと思います。
Posted by ともお at 2008年06月27日 23:47
ともおさん、こんにちは。お久しぶりです。
復活されたブログは時折拝見しております!
復刊するということで、文庫だったら買いたいなあと思います。
『タイムマシンのつくり方』だけは図書館になかったので購入したのですが、こちらはなかなか買えそうになかったので、うれしいことだと思います。
広瀬氏の話は情景がうまく描かれていることや、現実問題として、過去に戻ったらどう生活するかなどの細かい点まで考え抜かれていて、そこで「ほんとうにありそう」な感じを強く抱きます。
ラストがあっと言わせるような、ひねりがあって、読み終えたあとも、いったいどういうことになるのだろう?と考えてしまいます。
復刊楽しみです。
Posted by kmy at 2008年06月28日 20:25
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