2007年07月14日

『ブラック・ティー』

4041970040ブラック・ティー (角川文庫)
山本 文緒
角川書店 1997-12

by G-Tools

 夏恒例文庫フェア、目録があるとついもらってきてしまいます。集英、新潮、角川とめくってみて、山本文緒さんの本が気になりました。といいながら、買う前に図書館。文庫で紹介されていたお目当ての本がなかったので、読んでみたのがこれです。この感じ、わかるというか、はまり込んでしまいました。

 まったく自分のこととは違うのだけど、自分の記憶が想起されるような本です。『ブラック・ティー』はふとしたいろいろな記憶を呼び起こすような、そういう本でした。

 作者があとがきで書いているように「軽犯罪」を軸にしたエピソードといえばそうなのだけど、「罪」を犯してしまうことのお話というよりは、人間って脆くて壊れやすい危うい均衡を保って生きてる、と感じました。
 表題作「ブラック・ティー」とはバラ(知りませんでした)の種類で、このブラック・ティーという高級なバラの花束が網棚に忘れられていて、ということが主人公の過去の記憶から現在の生活につなぐ様子を描いています。「水商売」はゲイバーの皿洗いとして働き始め、ホステス(男だけど)として働く女性(男性?)との会話や垣間見える生活、自身の過去と現在、というようにつながっていきますが、主人公がこれからどうなるんだろう?と突き放したような終り方。「誘拐犯」は登場人物の年代が若く、学校でいじめられているらしいお姉ちゃんの日記を盗み読みしていた「ぼく」はいじめた相手に仕返ししたいと思って相手の家の飼い猫を誘拐してくる。その猫に起こる不幸な出来事、後味の悪い結末というか、物語が終了し、これからどうなってしまうのだろう?という思いで終わってしまいます。「ママ・ドント・クライ」、「ニワトリ」などのように、少しだけ明るい明日が見えるような、そういう物語もありますが、どの話も結末を判断するのは難しい。いいのか、悪いのか。
こうなるように思って生きていたのに、今はそのときに思ったような生活とはまったく違って、気がつくとここに来ているという印象を受けました。じゃあ、この後どうなるんだろう?と真剣に思ったりします。安穏と生きているように見えて、そのときどきの判断で選んできた生活、生き方なのだけど……元気の出る話ではないですが、好きです、こういうの。人生って安易にハッピーエンドにはならないけど、なんとか生きてる、その様子が染み入ります。

 ハードカバーの表紙のほうがシックでいいかも。銀色で羽根の舞う表紙。
posted by kmy at 20:41| Comment(5) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
山本文緒にハマる気持ち よくわかります。
kmyさんの
「自分のこととは違うけれど 自分のことが記憶が想起されるような」に大きくうなずく私です。

自分の読書ノートにも書いたけれど 痛いところに手が届くような作品が多いですよね。
日常のなかにあるヒヤリとした感覚を思い出させるというか。

「恋愛中毒」は恋愛ものかと思ったらとんだサスペンスでびっくりしましたよ!エンディングには唸りました。ううーっ そうくるか!
人間て なかなかタフだなあ、と。

 ・・・おすすめです。

最近新刊がでないなあー と思ってたら ご病気だったようですね。 そんなことをまとめられたエッセイがでてました。
次の小説も早く読みたい作家さんです。

そうそう ダンス・ダンス・ダンス 読みなおしました。すっかり「羊をめぐる冒険」と一緒にしていたことに気がついて 謎がとけました・・・。
Posted by めぐりん at 2007年07月16日 22:56
めぐりんさん
山本文緒さんの本を読もうと思ったのはめぐりんさんのブログで名前が出ていて気になったのです。
というわけで、この記事はめぐりんさんに「読んだよ報告」的に書いていたのでした。
(なかなか最近の本を読もうと思いつつ読めないので、めぐりんさんのとこでなるほどーと思いつつチェック入れています)
お勧めのも読みたいと思っています。あんまり幸せでないところが好きです。
本を検索していたら、病気のことやこれまでのことなどがいろいろわかってなるほど、と興味深く思います。この作家さんは幸せだけを見ているんじゃないなあって。
『ダンス…』もそうなのですけど、うまく生きながらえているような、最近そういう気がします。
Posted by kmy at 2007年07月17日 13:07
山本さんはいいですよね。
エッセイでてるのですね、読んでみたいです。

私事ですが、「読書日記」ブログをやめて関心空間のブログに戻ります。
よろしくです。
Posted by 香香 at 2007年07月17日 19:58
んま。 そうだったのですか。
嬉しいことを! ありがとうございます。

私こそ kmyさんの「雨木」のおかげで読書欲を刺激され読書幅が広がり 刺激的な日々を送ることができます ありがとう!!

あんまりしあわせでないとこ・・そうそう。
お日様に向って歩いてない主人公多し。
そういう視点がなるほど、kmyさんの好みかもですね!

Posted by めぐりん at 2007年07月18日 00:04
香香さん
山本さんはまだ読み始めたばかりです。香香さんは読書の幅が広そうなイメージがあります。
なかなか今が旬!で読んでいる本が少なくて、ある意味わたしは時代遅れだ〜と思うことしきり。
香香さんの関心空間の方ではだいぶ前に読まれていますよね。どれから読もう?と思っているところです。
リンク先、関心空間に変更しておきます。
(もうひとつのブログはいつも笑いながら拝読しております)



めぐりんさん
どこかどこかで趣味が似通っているところがあるかも?と思うと光栄です。
まったく同じ本を読んだりしているわけではなく、気になる本が出てくる、という感じです。
そうそう「ステーションの…」をようやく読みましたよ♪
ジュブナイルだからあの展開もありなんだ、と思いつつ、実際の場所をうまく空想と結びつけていて、どこまで本当にある場所か気になってしまいました。(話が山本文緒から離れている……)
Posted by kmy at 2007年07月18日 13:06
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