2007年06月17日

『神を見た犬』

433475127X神を見た犬 (光文社古典新訳文庫 Aフ 2-1)
関口 英子
光文社 2007-04-12

by G-Tools


 イタリア幻想文学だそう。幻想といってもファンタジーではなく、日常を突き崩していく不可解さを感じる短編集。

 人間がそうだと思っていること、感じていることと現実に見えていることがどのくらい影響を及ぼしあっているのかを感じさせる作品です。ある日芽生えた不安、それと関連するかのような出来事、それは無関係なのか、それともやはり関係があるのか――不安の増大とともに変化していく現実、そういうところで怖さを感じます。どれも人間の心の深い部分が次第に浮き上がってきて、という感じかな。

 読み返したくなるのは「七階」。ある日病気で入院してきた男ジュゼッペ・コルテ。ここはある症状の専門病院で軽度の患者が七階に、症状が悪化しているものは下の階と分けられており、下に行くほど重症だと言う。各階は独自の方針やしきたりが用いられていて、互いに関係を持たないが、病院の効率化、症状が違うもの同士での気まずい思いなどを持たずにすむという利点があるということだ。コルテが入ったのは七階。しばらくして母親と子どものために続きで部屋が必要なので移ってほしいと頼まれ快諾するが、七階の部屋に空きがないのでとりあえず六階になるというのだ。婦長は単に一時的な措置だというのでとりあえず六階に移るのだが……。

 大体話の展開はこの時点で予想がつくのですが、そこにいたるプロセス、コルテの心境などが自分の身に起こっているような感じで不安が増幅していきます。実際の人間もたぶんそうなのではないかな、と思わせる病気という状況と気持ち、比例するように変わる環境。聖人や神が出てくる短編で始まったので、古めかしいのかと思えばまったく違い、現代的な幻想があります。



posted by kmy at 19:42| Comment(4) | TrackBack(1) | イタリア&フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして
いくつか記事を読ませていただきましたが、
読むものの好みがちょっと近いかもしれません。
ぜひ当方ブログをご訪問ください。
Posted by piaa at 2007年07月09日 22:44
piaaさん
コメントありがとうございます。
同じような傾向の本を読んでおられるとのこと、光栄です。
ストルガツキーはじっくり取り組みたいのですが、なかなかそこまで行き着きません。記事を参考にいろいろな本を詠みたいと思いました。
Posted by kmy at 2007年07月10日 13:24
当方ブログご訪問ありがとうございました。
昨日の私のコメント、今読むとなんだかすごく冷たい感じですね。申し訳ありませんでした。

この作品を含め「光文社新訳文庫」はすごく面白いラインアップがそろっているので、よく読んでいます。「猫とともに去りぬ」や最近読んだ「方舟の航海日誌」が面白かったです。

ぜひストルガツキーも読んでください。私もペレーヴィン読もうと思っています。
Posted by piaa at 2007年07月10日 22:46
piaaさん
光文社古典文庫は読みやすく、面白いものが出ていますよね。「箱舟の航海日誌」piaaさんの記事を読んだら読みたくなりました。確かに、肉食獣は何を食べていたんだと思っていたのです。
バタイユはぜんぜん知らずに目に付いたので図書館で借りて読みましたが……読んでいるときにかなり赤面でした。
「海に住む少女」はなかなかよかったと思います。
今までずっと挫折中だった「カラマーゾフ」も完結したらこのシリーズで読むつもりでいます。
ストルガツキーも今年はぜひ。記事参考にさせていただこうと思っています。
Posted by kmy at 2007年07月11日 15:42
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Tracked: 2007-07-09 22:40
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