2005年06月11日

間違い電話のその先に

4384040385冷蔵庫との対話―アクセル・ハッケ傑作集
Axel Hacke 諏訪 功
三修社 2004-04

by G-Tools


 「オクムラさんのお宅でしょうか?」
わたしの苗字はオクムラではありません。間違い電話です。こちらへ引越ししてから、たびたびかかってくるので、以前相手に番号を聞いたところ、我が家の電話番号と同じ。どうやらうちの前にこの番号ををオクムラさんが使っていたらしいのです。 特に選挙シーズンになると選挙事務所の名簿に載っているのか「候補者の○○ですが、オクムラさんでしょうか?」と何回か電話がかかってきます。

「うちはオクムラじゃないですが、番号が一緒みたいなので。オクムラさんは引越して番号変わったと思うのですけど、名簿から削除しておいていただけますか」
「あー、そうなんですか、失礼しました」

 次回の選挙では、きっとオクムラさんにはかかってこないことを祈って返答しますが、それでも数回は選挙がらみでオクムラさん宛てにかかってきています。そして、また、

「もしもし」
「オクムラさんのオタクですか?」
「いえ、違います。以前この番号を使っていた方みたいなんですよ」
「そうですか、すみません」

 選挙もない今頃、オクムラさんへ電話がかかってきました。ふとん丸洗いの勧誘とか、健康食品の販売とかいう用件でもなさそうで、「オクムラさん」に用があるようです。用件を聞いてみたい気もしますが、こちらでオクムラさんを装って……という気もなかったたので、結局誰が3年以上もかけたことのないオクムラさんへ何の用があったのかは、わからないままです。どうでもいいことだけど、いつも気になる。オクムラさんの番号が変わってからかなり経つのに、今頃電話というのは、以前の知人、それとも?
 間違い電話つながりで、この本。アクセル・ハッケ著『冷蔵庫との対話』。ハッケ氏の番号は以前医者だったようで、医療相談の電話が何度もかかってきて、ハッケ氏、いよいよ切れてしまします。そして――。『ちいさなちいさな王様』で人気の作家ですけど、王様と対話している主人公とは全く違います。妻パオラと子どもルイスとの過ごすハッケ氏の日常、古きよき友人の冷蔵庫ボッシュとの対話。現実が空想へと飛躍していく様子。機械音痴なハッケ氏の毎日の苦悩。時折もめる妻パオラとハッケに見る男と女の違いや人間の分類。つい安いからと買ってしまった『健康大百科』。これを読むとあらゆる病気にかかっていることがわかってしまったり、決断の苦手なハッケは「決定自動販売機」があればいいと考えたりしています。
 神経質で捨てられない、非楽観主義者のハッケの様子が、なんだか自分の日常に重なったりします。そして、冷蔵庫のボッシュ。昔電器屋で売られていた頃、隣にいた素敵な冷凍庫のことを想い、インターネットに繋げられないさと悲観的な考えを持ち出す彼。ちいさな王様に会いたい人は結構いると思いますが、いつでも電子レンジを嫌っているボッシュに会ってみたいと思う人は少数派でしょうか。
 それにしてもこの本、ソフトカバーで表紙は『キリンと暮らすクジラと眠る』の中の一枚を使いまわした(と言ってよいのかどうか)もの。手にとってみたい、大切に眺めたいと思わせる『ちいさなちいさな王様』とは全く違う地味な雰囲気(中にゾーヴァのイラストはありません)。それなのに値段は高い! 2200円(税別) 買った人はやっぱりときどき開いてその面白さを何度も味わいながら、自分の日常をちょっとよく眺めてしまう、そんな本。値段2冊分の面白さ以上あります。他の既刊作品は児童書のカテゴリーに入れてもよいと思いますが、どう考えてもこの本は児童書ではない、と感じます。かなり大人向け。
posted by kmy at 11:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ハッケ&ゾーヴァ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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