2007年04月30日

『夫婦善哉』

4101037019夫婦善哉 (新潮文庫)
織田 作之助
新潮社 1974-03

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 図書館が休みで本を借りれなかったので、仕方なく家にある本を読むことにした。だいぶ前に実家から持ってきた大部分行方不明の文学全集の一冊(新潮社、1968年発行)があったのでなんとなく読む事に。それが『夫婦善哉』です。(上のリンクは本が違います、念のため。新潮社なので中身はだいたい同じはずです)


路地の入り口で牛蒡(ごぼう)、蓮根(れんこん)、芋(いも)、三ツ葉、蒟蒻(こんにゃく)、紅生姜(べにしょうが)、鯣(するめ)、鰯など一銭天婦羅(てんぷら)を揚(あ)げて商っている種吉(たねきち)は借金取の姿が見えると、下向いてにわかに饂飩粉(うどんこ)をこねる真似(まね)した。
青空文庫『夫婦善哉』より引用

 書き出しの文章で「おおっ!」と思いました。夫婦善哉といえば法善寺横丁。昔大阪に住んでいて、心斎橋、なんばあたりでよくバイトをしたり遊びに行っていたので通ったことはあるけど、食べたことはない。題名と作者は知っているけど読んだことはない。そういう小説でした。大阪が舞台の大阪人の小説。ことばはもちろん大阪弁。そして出てくる食べ物「紅生姜の天麩羅」も昔からずっと大阪にあったのね、と思い、引き込まれてしまいました。
 大阪で売っている紅生姜の天麩羅はわたしにとって謎の食べ物で、こういうものが普通に食べられていることはとても不思議でした。友人に聞くと「お弁当に入ることもある普通のもの」とか言ってたっけ。法善寺あたりの狭い路地や浄瑠璃の本を天牛書店で買ったとかiいうくだりが凄く身近でした。天牛書店は古本屋で今も存在します。この小説の時代からあったんだ、と思ったら明治に創業しているらしいです。
 肝心の内容は天麩羅屋の娘蝶子が芸者になって知り合った道楽若旦那柳吉と一緒に暮らし、実のところ、柳吉は奥さんと娘がいて、蝶子のことで家を勘当になるのですが、なかなか未練があって梅田新道の実家に戻ってみたりする男で、蝶子とは正式に夫婦としては認めてもらってはいないのというのもまた興味深い。蝶子は宴会専門の芸者ヤトナとしてお金を貯めては、関東煮屋、果物屋、カフェ、といろいろな商売に手を染めますが、結局長続きせず、またヤトナ、また商売という間に、柳吉は病気になるわ、ときどき道楽三昧に金を使ってしまうわ、とよくもまあ、蝶子はこの柳吉に見切りをつけずそれでもわたしが、と頑張っている、それこそ夫婦なのかも、とふと思う読後感。最近は嫌になったら即離婚ということも多いものですが、これだけ男がこんな風でも蝶子は凄い! 

 時代が時代だからなのか、このあとに収録されていている話にもやたらと「妾」がでてくるのが結構気になる。元芸者、後釜に座って本妻に、という話も凄いなと思うのであります。

 蝶子の実家の天麩羅屋には「蒟蒻の天麩羅」がありますが、これはさすがに見たことない。おいしいのかな? 大阪に住んでいたときも見なかったけど、普通に食べられているものでしょうか? 気になるなあ。
posted by kmy at 13:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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