2005年05月11日

『ちいさなちいさな王様』(アクセル・ハッケ作 ミヒャエル・ゾーヴァ絵)

 その物語そのものが好きだから、本のあらすじを紹介すると、とても技量不足でつまらないものになってしまいそう。本の面白さを伝えること、そしてその本を通じて話したいことって何なのでしょう。 何度もこの本について書いてみて、結局物語のことばを引用することはやめました。もったいないから。本の中で知ってほしい。
4062083736ちいさなちいさな王様
Axel Hacke Michael Sova 那須田 淳
講談社 1996-10

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 一度しか読まない本があり、何度も読む本もあります。もちろん、何度も読む本のほうが圧倒的に少数で、その意味では人間の出会いと少し似ています。だからこそ、何度も読む本は自分にとって特別で大切に思うもの。そして同じ本が好きという人に出会えることは、もうひとつの特別な瞬間かもしれない、と。だからこの本のことを書いてみたいと思うでしょう。
 『ちいさなちいさな王様』はわたしにとって特別な本の中でもきっと一番に位置している物語。主人公が非日常への冒険に出る、という大掛かりなファンタジーとは全く違うお話で、むしろ逆。主人公「僕」はなんてことのない日常を過ごしているのだけど、そこに非日常の存在である王様がやってきます。王様にとっては「僕」の日常や「僕」がふつうに思っていることが不思議でたまらない。だから「おまえたちのところではどうなっているのだ?」とえらそうに聞き、ときには面白がり、ときにはどなり、そして王様は自分の場所へ帰っていきます。あたりまえ、って思っていた代わり映えしない日常がなんだか不思議にみえてくるのです。本当はどうなんだろう?ってつい考えてしまいます。物語を読むうちに、「あたりまえでふつう」が、「ふしぎでおかしいこと」に変わってきます。そんな見方もできるのね、っていう感覚を味わうのが楽しくて、なんども読み返してしまう、それがこの本。大好きな本。
 この本の魅力はことばと本の装丁、そして挿絵。全てがいい。ばかにいい。絵が単に添えられたものではなく、存在感があってわたしの中にどっかりと王様は腰をおろしています。

 本の話をすること――その本を誰かに読んでもらいたいと思う気持ちもあるけど、誰かに「こんな本をすきなわたし」のことを少しでも知ってもらいたいからなのかもしれないと思うのです。同じ本が好きっていうことは、どこか少しだけ同じものを持っているのかもしれない、そんな気がするんです。『ちいさなちいさな王様』が特別という人には会えるでしょうか。


『ちいさなちいさな王様』アクセル・ハッケ作 ミヒャエル・ゾーヴァ絵
那須田淳/木本栄 共訳 講談社 
posted by kmy at 10:46| Comment(4) | TrackBack(1) | ハッケ&ゾーヴァ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
このあいだミヒャエル・ゾーヴァの展覧会にゆき、いろいろ知りたくなったのでyahooで検索していてここにたどり着きました。

私はこの本を読んだことがありません。
でも展覧会の絵をみてどんな話なんだろうと色々想像を膨らませました。
『ちいさなちいさな王様』が私にとって特別なものかはまだわからないのですが、このミヒャエル・ゾーヴァという画家の絵はとても心に残りました。

また遊びにこさせてください。
Posted by クロエ at 2006年01月22日 22:50
クロエさん、はじめまして!(ハンドルネームでカニグズバーグの本を思い出してしまいました)
ゾーヴァ展に行かれたのですね、羨ましいです。新聞広告を見ながら、サイン会もある〜行きたいと思いましたが、東京に行くためには新幹線にも乗らないといけないので諦めましたが……。
ゾーヴァの挿絵の本の中で物語として読むなら一番大好きなのがこの本です。当たり前のようにすぎていく日常の見方に変化が生まれるような本です。あ、こんなこと忘れていたのかもしれない、と。
ゾーヴァの本についてはたびたび記事にしていますので、興味を持っていただけると幸いです。
Posted by kmy at 2006年01月23日 11:12
他の記事も読んでみました!
ますます絵本が読みたくなりました。
そして、絵本をプレゼントしたくなった★

「クロエ」からカニグズバーグを連想されたのは初めてでした。
…というかカニグズバーグを私知らなかったので…絵本、本当にいいですよね。なかなか手に入れることが出来ないけれど今のうちからためておいて、将来子供と一緒に読みたいなあって思います。
Posted by クロエ at 2006年01月27日 02:28
クロエさん、他の記事も読んでくださってありがとうございます。この絵本(本)がいいというのはこう、説明不可能なものですね。絵本をプレゼントしたくなる、同感です。素敵な絵本を見ると誰かとその絵から感じる「いいなあ」っていう気持ちを共有できれば、なんていつも思っています。

「クロエ」で検索してみると、カニグズバーグの本はなかなか出てきませんね(笑) さっき気がつきました。タイトルは『Tバック戦争』、題名少々変わっていますが。再読したら記事にしてみようと思っています。
Posted by kmy at 2006年01月27日 19:22
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ミヒャエル・ゾーヴァ展
Excerpt:   19日、銀座松坂屋催事場で開催されているミヒャエル・ゾーヴァ展 を見に行った。 アメリの犬の絵でしか知らなかったのだけれど、ミヒャエル・エンデが大好きなので(理由になってるの..
Weblog: アマヤドリ
Tracked: 2006-01-22 22:43