2005年04月17日

『ロールパン・チームの作戦』(E.L.カニグズバーグ作)

 箱にいれてしまっておきたいようなことばがたくさんある、カニグズバーグの作品を読むといつもそんな気分になります。その中でもお気に入りの作品が『ロールパン・チームの作戦』(現在出版されている作品集では『ベーグル・チームの作戦』に変更)。
4001121158ロールパン・チームの作戦 (岩波少年文庫)
松永 ふみ子
岩波書店 1989-05

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ぼく(マーク)の母ベッシーが、所属するリトルリーグの監督に。兄さんのスペンサーがコーチに。家族としてのマーク、選手としてのマークの微妙な立場。チームと家族、親友の関係を軸にユダヤの成人式、ダメチームが優勝を目指す様子。物語はとてもテンポよく、登場人物の各々が身近に感じます。
 中でも親友ハーシュに対してマークが感じていることの表現がとても好きです。

ぼくもハーシュも角のある性格なのだが、角のある場所がちがうし、そのうえ角の大きさは同じくらいなのだ。友達ってものは、少しちがったところを持っていて、おたがいに摩擦しあう必要がある。そうやってだんだんにおたがいの角を覚えていくのだ。
 (『ロールパン・チームの作戦』E.L.カニグズバーグ作 松永ふみ子訳

 冒頭で語られるぼくとハーシュの関係は現在微妙におかしくなっています。ハーシュが引越してからバリー・ジェイコブズと付き合いだし、何かにつけてバリーの存在が気にかかります。ハーシュは何かというと、「バリーの家ではこうなんだ」と比較を持ち出します。ふたりの仲はどうなるのでしょうか、もうハーシュはぼくから離れてしまったのでしょうか。この友情の行方がうまく描かれています。

 サラリー印のデザート、「レストラン・ユナイテッドへいますぐどうぞ」などの具体的な名称を出すことによって、より生活感を感じ、面白みも増しています。特に「ポテトはどうか軽いクリスコ油で」が出てくる文脈はたまらなく好きな部分。このキャッチコピーがここで出てきた面白さは読んでみないと味わえません!
 
 ぼく(マーク)だけでなく、母親ベッシーの存在は非常に大きく、ベッシーも魅力的な人物です。妹のご主人ベンについて「あなたのだんなさまは、こういっちゃなんだけど、ハゲでしょ」(前掲書P91)というあたりのおかしさから、シドニー・ポルスキーへの態度は本当に好感が持てます。大人がふだん、他人の子にことばを濁し、適当にしてやりすごすのとは違います。その子のことをきちんと見ていてくれるという愛情を感じるんです。
 語っても語っても、この物語の魅力って、伝えられないものなんですね。何度読んでも飽きない魅力が詰まった作品です。


 カニグズバーグの翻訳を巡る興味深いお話は「やみぃの屋根裏部屋」を。やみぃさんの文章は心に染みとおります。
posted by kmy at 09:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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