2006年12月11日

『ドアの向こうの秘密』


三田村 信行, 古味 正康 / 偕成社
Amazonランキング:位
Amazonおすすめ度:



 日常がすっと消えてしまう怖さ、帰るべき家、家族が突然不気味なものへと変化し、そして主人公たちはこのあとどうなる?で終わってしまう物語。『おとうさんがいっぱい』と似たテイストを味わえる三田村信行短編集。

 最初、この本は「ドアの向こうの秘密」という子ども向けの長編というか、一冊で一作品だと思って読み始めたのです。目次を眺め、最初の章だと思って「おむかえ」を読みすすめ、その章が終わって、でこの後どうなるんだろうと思ってページをめくると主人公の名前が違う! あれ、これって短編だった? ぱらぱらめくってみると、「おむかえ」に出てきた主人公の名前はもう出てきません。この話はこれで終わりなんだ、と思ったらぞっとしました。次の話は特に怖いですね。「年をとる家」。新築の自宅に「ただいま」と帰ってきてみるとなぜかうっすらほこりが積もっている。きれい好きのお母さんが掃除しないなんてことはないはずだし……と思ながら階段を上るとぎしぎし音がする。もらってきたばかりの鉢植えの葉が黄ばんでいる。何か様子がおかしい。気がついたものの、どうしたら? こんな感じでどんどん小学生の主人公は日常の延長からそれて奇怪な方向に向かっていきます。
きみはいま、学校から帰ってきた。
(中略)
きみがいままでしらなかったドアの向こうの秘密が、そのとききみの前に明らかになり、きみはぬきさしなだない立場においこまれてゆくのだ……。
(本文P3 まえがきとして書かれています)

 このまえがきは読み終えたあとに読むとかなり怖くなります。「秘密」と聞くと知りたい、聞きたい、覗きたい、なんて思わせる響きがありますが、「秘密」は「秘密」のまま、知らなければよかったときっと思いますよ。あー、見なければよかった、知らないほうがよかった。そういう「秘密」ばかりです。
 いずれの作品も「ドアは開(あ)いていた」で始まります。いつもは鍵がかかっている、閉まっているはずのドアがなぜか飽いているときはご用心を!


 最近、こういう奇妙なお話が好きです。日常がふと非日常になるというモチーフが今の心境にぴったりくるのかもしれません。不安定な毎日を送っている人には案外オススメなのかも?
posted by kmy at 19:19| Comment(6) | TrackBack(0) | 三田村信行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
本の内容にもとても興味があるのですが、不安定な毎日を送っているのではないかと思われるkmyさんが心配です。
はるか昔の高校3年生だった頃、受験勉強の傍ら安部公房の作品ばかり読んでいたことを思い出しました。
読み終わってもちっともすっきりしないし、不安な気持ちが増すばかりなのに、読まずにいられない、あの気持ちは何だったのか、よくわかりません。
奇妙なお話を読んで、kmyさんが不安になるのではなく、癒される方向へ向かえばいいな、と思います。
Posted by 二尋 at 2006年12月11日 23:22
二尋さん、ご心配ありがとうございます。わたし自身は倒れているわけにもいかないので、そういう気で生きていますので、大丈夫です。
医療関係に従事されていると「なかなかよくならない」愚痴は結構聞かれるのではないかと思います。多少なりともいい方向に向くようにとは思っていますが、何か吹っ切れてしまわないと、ずるすると引きずっている、そんな感じでいます。
安部公房はわたしも好きです。読んでいない作品が多数あるのでこれから、と思って買ってあるのもあったりします。こういう物語は救いがない怖さとか言われますが、ある種の現実感を持って読者に迫っていると思います。安易な抜け道はない、ただひたすらその後も「何か」があるのだから、そこに入っていかなくてはいけない状況、というのを提示してみせます。実際そういうものなのだと感じるのはある意味癒されるのではないかと、ふと思う事があります。今が楽しくて仕方がない時期にはきっと読まないほうがいいのかも。
わたし自身、ハッピーエンドのお話はあまり好きではないのです。え、そんなにうまくまとめちゃうの、それはちょっと、というところがあるので、だからダンブルドアのことについても安易な解決してほしくないと思ってしまうわけです。
(長くなってしまいました。ありがとうございます)
Posted by kmy at 2006年12月12日 16:50
kmyさん こんばんは。
わぁ、もうこれ読んだだけで怖〜い!
「秘密」は知りたいけど知らない方がよかった というのは、「みるなのくら」で経験済みですが、やっぱり 知りたいと思ってしまう心の弱さ。
「ドアは開いていた」ではじまる短編ですか?なんか 昔 好きでよく読んだ 星新一の「ノックの音が」を思い出します。
これも、全部「ノックの音がした」で始まるんです。
短編は話が短いだけに余韻が残るんですよねぇ〜
Posted by noel at 2006年12月12日 23:35
noelさん、こんばんは♪
「みるなのくら」の絵本は読んだことがないのですが、昔話の「みるなの座敷」とか「うぐいすの里」と多分同じタイプのお話だと思います。絵本も読んでみたいですね。決して最後のページはめくってはいけないというような雰囲気があれば、絶対に見てしまうだろうな〜と思います(笑)
『ノックの音が』懐かしい! 以前もっていました。集めていました、星新一。どんな話があったか忘れてしまいましたが、短くてオチがあって、それでいて同じ書き出しで、というのは面白いです。
Posted by kmy at 2006年12月13日 19:17
これ、いいですよね。
もう一度読みたくなりました。
読後感が悪くてもいい本ってありますよね。

映画だとアキカリウスマキ監督とかも
似たような気分になります。
Posted by 香香 at 2006年12月13日 22:33
香香さんも読まれていたようですね。「恐怖のリハーサル」も怖いですよね。なんとなく見てみぬふりをして、わざと遅く帰って、理由を考えて……そんなこともあったりするときがあるので、それが見透かされているときのきまりのわるさや、そこから始まる恐怖、いったんは決着がついたかとおもえば、ラストでまた……というのが妙に印象に残ります。
映画は詳しくないので(大汗)、参考にさせてくださいね。なかなかじっとテレビ画面を見ていられなくて。
Posted by kmy at 2006年12月14日 17:52
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/29435389
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック