2012年08月25日

『南から来た男 ホラー短編集2』

南から来た男 ホラー短編集2 (岩波少年文庫)
金原 瑞人, 金原 瑞人, 佐竹 美保
岩波書店 ( 2012-07-19 )
ISBN: 9784001146059


 2010年に出版された金原瑞人さんによるアンソロジーに続く第二弾。既読作品もあるものの、前から読もうと思って気になっていたスティーブンソンの「小瓶の悪魔」子どものころ大好きだったウェルズの「マジックショップ」が含まれていて、かなりお買い得な感じでした。

 「小瓶の悪魔」はその瓶を持っていると、悪魔がどんな願いでもかなえてくれるが、所有者は地獄へ落ちると決まっている。そのため、誰かに譲り渡してもよいが、買った金額より安い値段で売るのがルール。そうしないと自分のもとへ戻ってきてしまうというもの。この瓶を手に入れた青年の物語。地獄行きが必須の願いをかなえる瓶、なんでも叶うなら、と思っても、やはり地獄行きのことを考えると恐ろしくてたまらない。きっと、誰でもそうなのかもしれないと感じます。心に大きな影をいつも抱えて生きていくというのは、どんなに素晴らしいものに囲まれて幸せな暮らしを手に入れたかに見えても、結局本当の幸せにはならないというのが、悪魔的です。ラストの展開、こう来たか!と感じるものでした。

 「マジックショップ」は昔旺文社の『魔法を売る店』という本に収録されていました。他の作品は全然覚えていませんが、この話だけは本当に好きで、ガラス玉がポケットに入っていたら、なんてどきどきしながら読んだ事を覚えています。行儀のいい子しか入れない不思議な店。本物のマジック! ただ、気がかりなのは物語に出てくるお父さんと一緒で、「ただ、最後には代金を払うことになります。しかし、そう高くはありません……みなさんがご想像するほどにはね(P74)」という、代金の話。結局、このお店はどういうお店なのか謎。その雰囲気がとても好きで、小学生のころ、何度も読んだ覚えがあります。行ってみたいけど、ちょっと怖い店。また読めてよかった!

 「隣の男の子」(エレン・エマーソン・ホワイト)は、日本初紹介の作家さんだということです。どきっとする状況をなんとかごまかしてやり過ごそうとするアルバイトの女の子。うまく表裏が交替していくようで、また読みたい作家さんでした。

 ダールは『あなたに似た人』(田村隆一訳 早川文庫)に収録されている作品。田村さんの訳に比べて、青年(19か20歳)の口調が子どもっぽく感じました。ダールだけは田村訳が好きなのでした。
posted by kmy at 19:23| Comment(2) | TrackBack(0) | アンソロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これも面白かったですねえ。
『小瓶の悪魔』は『びんの悪魔』という福音館から出てる絵本もオススメです。
ちょっと『賢者の贈り物』みたいな部分もありますしね。

ダールの表題作はやっぱり田村訳がよいとわたしも思います!
また、デ・ラ・メアの『不思議な話』も好きな物語ですが、こちらは柴田元幸さんの訳がよいです。
『昨日のように遠い日』に収められている『謎』という話がこれに当たります。
怖い話なんだけれど、淡々と日常が過ぎていくところが特に恐ろしいというか…。
金原訳はちょっと口語的過ぎるところがあるので、軽く感じられるところが残念です。

金原さんは最近児童書で『雨月物語』を高校生が口語訳するという設定で書かれました。
面白くてわかりやすい古典になっています。
こちらでも紹介されている『エミリーにバラを一輪』。
つまり、『雨月物語』も読んでねという宣伝でした(笑)。

でも、全体的に前作同様面白く読める本でしたね♪
Posted by ヤヤー at 2012年10月16日 15:22
ント ヤヤーさん 金原さんの訳はあっさりした感じですね。読みや すくて癖はないけど、田村さんの訳は英語の原文 が想像できない素敵な訳があったりして、やっぱ りダールは田村さんの訳が好きだったりします。 デ・ラ・メアは別の本でも読みましたが、柴田さんの本もぜひ読みたいです♪

雨月物語も面白そうですね。チェックしてみます! 久々に読んでみたくなりました。
Posted by kmy at 2012年10月17日 20:44
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