2006年09月13日

『旗本フライパン』

4897846897旗本フライパン
斉藤 洋
リブリオ出版 1998-04

by G-Tools



 これがどうしても欲しくなって購入した本です。斉藤洋作『旗本フライパン』。内容については「続きを読む」に譲るとして、今回どうにか入手しようと思い立ち、なんとか入手したのですが、その後いろいろ思うことがありました。
 出版社にも問い合わせたのですが在庫がなくて、だめでもともとだからとアマゾンの予約注文を利用してみました。やっぱり買うなら多少きれいな本を買いたいと思うのです。でも新品同様を求めるには少し年月がたちすぎているし、そこまで要求してなかったら無意味。古本を買うことに抵抗はないですが、書き込み本には抵抗があります。小口の染みや経年並みのイタミ、スレはまあよしとしましょう。予約注文でポイントとなるのが本の状態。アマゾンでかなり書き込みがある本でも読むことに支障がなければ「可」となり、これは最低ランク。それでもって本当に書き込みあり、汚れありの本が来てしまうと悲しい。でも、「非常によい」という本は結構厳しいような気がする。多少のスレがあると「良い」ランクで出されている気がしているので、一応「良い」のランクで予約を出すことにしました。
 結果的に届いたのは初版で中身は本当にきれいな本でした。カバーの背はかなり白く日焼けしていましたが。まあ、満足です。届いたときに感じたのは「あるところにはあるんだ、こういう本でも」ということ。たまたま運がよかったのか、どうなのか結構気になる〜。定価より少し高い(本当に本の少しです。送料程度)値段を希望したのがよかったのかも? そんなことも考えてしまいました。

 価格を自分でつけるのに悩んで、予約注文で価格を決める参考になるサイトがないかと検索してみたものの、当たるのはだいたいせどりサイトばかりです。買い手としての情報よりも売り手としての情報が圧倒的に多い。でもって、売る人はいったいいくらで売ろうと思っているのか気になって、せどりノウハウのようなもを読んでみると、アマゾンの予約注文が入っている本がどれかわかるというシステム(プロマーチャントのみ利用可能)があるとのことでした。予約商品の希望価格もわかるそうなので、ここで調べた高値の絶版本をBOOK・OFFなどで手に入れるとかなり儲かるとのこと。なーるほど、ね。わたしが欲しかった『旗本フライパン』も当然予約注文リストに載っていたのでしょう。
 とはいえ、いくらでも出すので欲しい!というほどの値段ではなかったので(こういうリストでは5000円以上の本を見つけるのが狙いらしいです)、狙って売ってくれたのかどうかは不明です。
 
 あんなに、「ない、ない!」と思っていたこの本、最近またチェックしてみると、マーケットプレイスで売っていました(2006/9/13現在)! え? ご、ごせんごひゃくえん? ごめんなさい、そこまで出してはちょっと買えません。そんなに高くなってしまったのね――なんとなく驚き。わたしが買ったこととは無関係なのかどうなのかも少々気になりつつ、5,000円出さないで買えてほっとした本なのでした。では、本の内容については「続き」をご覧ください。

 このお話は斉藤洋氏が『週刊新刊全点案内』に連載していたものをまとめたものなのですが、内容がうーん……創作なのか、エッセイなのか、そのあたりの境界があいまいで、「これは本当の出来事なのかもしれない」と思わせるような不思議な話であふれています。
 特に好きな一連のシリーズがあって第二章「研究室のたそがれ――青い影」ど題された作品群です。晴れて亜細亜大学助教授になり、専用の研究室として提供された6号館の同じ部屋で西戸四郎助教授と出会った斉藤洋氏。西戸助教授という人物は調べてもらったところ、在籍していないらしい。「そんな古い話、どなたからお聞きになられました?」と教務課の事務員は言葉を濁したという。それ以来、斉藤洋氏は西戸助教授についてあれこれ詮索しないことにした、というのです。この西戸助教授については『ひとりでいらっしゃい』『うらからいらっしゃい』(ともに偕成社)で書かれていますが、こちらの童話も本当とも作り事とも言い切れない不思議さが漂うお話で、出てくる人物たちと語られるお話とが枠構造になって不思議さを増幅しています。この二冊を読んだ時点では斉藤洋氏はホフマンなどを研究していて、こういう奇妙なお話が好きで創作したのだろうとも思ったのですが、この『旗本フライパン』を読むと、西戸助教授と一連の出来事は本当のことのよう思えてきてしまいます。その感覚が面白いので、どうしても欲しくなってしまった本なのです。
 『ひとりでいらっしゃい』のシリーズは子どもから楽しめますが、『旗本フライパン』に出てくる西戸助教授はちょっと大人向けの雰囲気があります。西戸助教授といつも一緒にいるのは振袖姿のはたちくらいの女性。名前は富貴乃さん。彼女はたぶん、西戸助教授が囲っている芸者さんのらしいです。富貴乃さんの行動や会話が素敵で、お弁当の差し入れやお酒を飲む場面など読みながら、西戸助教授と富貴乃さんのお付き合いについて、あれこれ考えてしまったりします。西戸助教授は家族もいるようですし。後あとで、二人で見に行ったという歌舞伎の名演の話から、20年以上も前の出来事をついこの間と言っているらしいことがわかり、本来重なることがなさそうな空間と時間が研究室を通じてつながっているようで、結局それはどういうことなのかというような説明はないのですが、気になるお話の数々なのです。
 他にも『消える人たち』(小峰書店)に通じるお話があり、大学教授としての活動の雰囲気が伝わるエッセイがあります。わたし自身は斉藤洋さんの書いているものの中ではこの「奇談」的ジャンルが特に好きです。絵本、幼年童話はあまり読んでいないのですが、この不思議な短編のようなものは何度も読み返してしまいます。いわゆる「本当にあった怖い話」として売られているものとはちょっと違うのをいつも感じます。体験談としての怖い話は一度読めばそれっきりなのですが、この西戸助教授の話は何度も読み返してみたくなります物語としてもうひとつの世界が自分の中に出来上がるのかもしれません。

 それにしても、わたしにとって不思議なのはこの本が買えたことです。自分の中ではたぶん買えないだろうな〜と思っていただけに。


消える人たち ひとりでいらっしゃい うらからいらっしゃい

↑触れた本はこちら。『消える人たち』は現在品切れ中。もしかして今後高値に(笑)
posted by kmy at 19:50| Comment(8) | TrackBack(0) | 斉藤洋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
kmyさん、こんにちは。
どんな絶版本を購入されたのか、気になっていましたが、やはり私の知らない本でした。
でも、kmyさんの説明を伺ってすごく興味を持ちました。西戸助教授に会ってみたいです。
図書館でなら見つけることもできるのでしょうか。他の作品も面白そうです。
Posted by 二尋 at 2006年09月13日 21:32
kmyさん こんばんは。
わたし、この前 初めてAmazonで、CDを購入しました。
わたしが持っていたのはレコードで、そんな古いアルバムがあるのかなぁ と思っていたら、簡単にみつかって、ゲットできました。
ネットでの買い物が こんなに簡単だなんて ちょっとびっくりしています。
(なにしろ、ネットデビューが遅かったもので・・・)
なかなか手に入らない物や、諦めていた物が手にいれられる喜びは、何ともいえず、うれしいですね。
Posted by noel at 2006年09月13日 21:48
ほうほう。
kmyさんのお手元に届いたのはこの本ですか〜。
知らない本で嬉しいです。これから読む楽しみが増えました。
斉藤さんって多作と言うか、ホントにたくさんの本がありますよね。
そして、事実なのか創作なのかが曖昧なものが多いような気がします。
そういうところも、すきなところです。

おかしなもので、予約で買ったあとは出品する人が続出します。
予約リストを見た古書店のかたが出品するのだとは思いますが・・・。
わたしが絵本『白雪姫』(アンジェラ・バレットが挿し絵を描いている本)を購入出来たときも、あっと言う間に4〜5件出ていました。
でも実はわたしは最初から持っていて、友人のために予約していたのです。
その前に他の古書店で買うことが出来たので、キャンセルしておけばよかったのですが、当時はなかなか出て来なかったので、まさかアマゾンでだって買えないよね、とタカをくくっていたのでした。
で、二冊あります(笑)。
千円というお値段で、せいぜいカバーが焼けてる程度のものが買えたので得したと思っています。
そのあとの出品は全て二千円以上していました。

あるなら出し惜しみしないでよ!
とは買うほうの言い分で、売るほうにしてみれば需要のないものは出す手間が惜しいということなのかもしれませんね。
Posted by ヤヤー at 2006年09月13日 21:56
欲しくてリッチな人なら高価でも買うのでしょうね。

昨年の夏、息子と「ひとりでいらっしゃい」「うらからいらっしゃい」を読んで
続きはないのかな〜と、思っていたのですよ。
早速、予約してみます!
図書館ですが。。。
Posted by 香香 at 2006年09月14日 17:28
二尋さん、こちらの本はややマニアックになるので、西戸助教授には『ひとりでいらっしゃい』から読まれることをお勧めします。二尋さんとしては「教授」に惹かれるのでは?なんて勘ぐってしまいますが、なかなかどういういきさつでどうしてこの研究室にいらっしゃるのか、わからないだけに気になる人物です。謎めいた存在の人って、物語を読み終えたあとでも、普段はどうしているのだろう?などとあれこれ考えてしまったりします。うちの近くの図書館には所蔵されていない本でしたが、割りと大きなところにはあると思います。他にもぞっとするような、むむ?っと思うような不思議な話があります。

noelさん、わたしが住んでいるのは本当に田舎なので、ネットで検索して届けてもらえるというのは本当に便利す。お店に出向くのがかなり大変なので、ゆっくり考えながら買おうかどうしようか迷えるのがうれしいところです。ネットで買い物というのは当たり前ですが、最初にカードで買い物をしたときには緊張しました(買い物すること自体はそれほど早い時期からは利用してなかったです)。諦めていたものが手に入ったときって、本当にうれしいものです♪ でも手軽な分だけ気をつけないと買いすぎてしまいそうになります。

ヤヤーさん、やはり予約注文リストに載ると価格が高騰するのは、思い込みではなかったようですよね。しばらくの期間、オークション、古書店サイトなどもチェックしていて、探していたのですが、買ったとたん出品されていて不思議でした。わたしもまさかアマゾンで買えると思っていなかったので、驚きました。割とアマゾンは最終手段で買うような気がします。本の状態がわかりにくいのと、キャンセルもしにくいですし……。発送されるまで、相手方がどこの方かもわかりませんよね。売る側に便利にできているシステムかもしれません。結構プレミアついているのは、以前高値で買ったひとがいるってことなのかもしれませんね。

香香さん、そうそう、わたしも続編があれば読みたいと思っていたところ、この本に西戸助教授が出てくると聞いてずっと気になっていたのです。こちらの助教授は学生相手ではなく、「大人」の雰囲気があるので、その人間関係やどうして年をとらずにここにいるのか、など謎だらけで、読み終わったあともまた続きが気になる話です。
図書館では子どもの本ではなく、大人の本(分類はエッセイ?)にあることが多いようです。
欲しくてもなかなか5000円は手がでないです。コピーで済ましてしまいそう(笑)
Posted by kmy at 2006年09月15日 12:00
なんと昨日予約して今日の夕方届いたとメールがありました。
嬉しい♪早速受け取りに行きました。
大人向けですね。
私の住んでいるところでは区内の図書館にあれば
近くの図書館に届けてもらえるのです。
本当にネットって便利ですね。
Posted by 香香 at 2006年09月15日 21:55
私も『ひとりでいらっしゃい』は知っていたのですが、こちらの本は知りませんでした。
是非読んでみたい〜。(^^)

早速図書館で探して見ます。
『消える人たち』も、読んでみたいです。
Posted by ゆっこ at 2006年09月15日 22:56
香香さん、ネットで本の予約ができると便利ですね。そういえば、以前住んでいた市はできたのですが、今住んでいるところはできなかった気がします。これから便利になるかも? 近くの図書館と言っても遠いので、うらやましいです。西戸助教授以外にも、ちょっと不思議な話がいくつもあって、これは創作なのか、それとも?と悩むのが面白いです。

ゆっこさん、こちらの本は少々大人向けというか、斉藤洋氏の著作が好きな人にお勧めの一冊だと思います。『消える人たち』もどきどきするような怖さというか、でも、そういうことってあるのかもしれない、と思うようなお話が集められています。電車のホームでの話が印象に残っています。
Posted by kmy at 2006年09月17日 11:27
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