2006年07月12日

『大人のためのグリム童話』

大人のためのグリム童話新装版

『大人のためのグリム童話』
ヤーノシュ作 池田香代子訳 宝島文庫 

 上記の写真は「新装版」ということなのですが、うちにあるのは1999年版の文庫なので、表紙が違います。うーん、新装版は何か違うのかもしれない。そう思うのは、この物語は一度すっかり書き換えられているからなのです。

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 縁あって原書を持っています。ハードカバークロス張りの立派な本で、イラストもカラー。眺めているだけでも楽しい(すらすら読めないもので)。カバーによると8歳から大人までとあるので、実は「大人のため」にかかれたものではないようです。邦訳版は特徴によって「男と女」「子ども」「お金」「人生いろいろ」と分けてありますが、原書は分類されていません。いくつかのお話が翻訳に際して削られています。悲しいことに、原書を読もう!ということで購入した年に翻訳が出てしまいました。ぐぐっとこらえて、読み終わるまで翻訳を読まないで置こうと思ったら、翻訳を買いそびれてしまい、いつの間にか文庫になっていた、という。
 それからまた何年もたってしまって、すっかりお話を忘れていたので、最近邦訳文庫版を読み返してみたら、面白いのです、これが。「グリム童話」という名称は有名ですが、このお話は決定版で200あるので、日本では有名ではないものが数多くあり、そのパロディということなので、元のお話を知らない場合がありますが、これはこれで楽しめるのが凄いところ。
 有名なところでは「長靴をはいた猫」はグリムとかなり違っています。末息子の幸せというのは、お金持ちになることでもなく、車を持つことでもなく、豪勢な食事をとることでもなく、と、つきつめた先の幸せがヤーノッシュ流の解釈なのかもしれません。グリムの「幸せのハンス」に通じる結末です。
 特に好きなのは「ボウリングとポーカー」。グリムでは「こわがることをおぼえるために旅にでかけた男の話(KHM4)」として知られているお話で、元の話も好きですが、この話のパロディもなかなかです。グリムのお話では「怖がるとはどういうことか知りたいという男が化け物が出る城へ泊り込むのですが、ちっとも怖がらず、化け物たちと骸骨でボウリングをします。ヤーノシュのパロディでは怖がることから「ボウリング」へと男の興味が変わっていて、ラストもかなり違います。グリム的な幸せをつかむこともなく、ただひたすら「ボウリング」と「ポーカー」がしたいとう男のお話。結局男が今度は化け物になって、勝負をするため城に化けてでます。現代的な価値観を用いてお話を味つけしなおしているので、最後にはなるほど、と思わせるヤーノシュ流教訓がついていたりして笑えます。
 父親が、ここではつまり王さまが、娘の相手に不足ばかりいいたてて、条件などつけていると、娘はおばあさんになってしまうこともあるのです。夢も希望もなく、おばあさんになってしまうのです。(P177)

  邦訳版のあとがきにも書かれていますが、ヤーノシュはこの本を一旦出版したものの、物語を書き換え、絵を全て描き直して再出版しているというのも面白いところなのです。今出ているイラストは「とらくん、くまくん」シリーズの絵と近いような雰囲気ですが、以前のものは『おばけりんご』的なちょっと色使いがダークで絵も暗い雰囲気を持っていたと思います。昔読み比べたのですが、結末が結構違っていて面白かった気がしますが、何年も前なので忘れてしまいました(大汗) さすがに絶版本で買えなかったので、当時コピーをとって綴じておいたはずなので、どこかにファイルとしてあるはずです。ちなみに、この古いヤーノシュのグリム童話は大阪府立国際児童文学館にあり、新しい版の原書を買ったときに結構ショックを受けました。2冊あって、中身が違うなんて! 古い方の訳本があれば、読みたいのですが、さすがに出ないでしょうね。
posted by kmy at 17:42| Comment(2) | TrackBack(1) | グリム(童話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ああ、こういうことってあるのですね。
書き直されているなんて、気になり過ぎです(笑)。
手に入らないと思うと尚更調べてみたくなりますね。

ヤーノシュはダールと同じく大人と子どもの線引きがないひとなのだと思います。
う〜ん、というか、大人でありながら、子どもの気持ちも楽しむひと、と言えばいいのでしょうか。

これも読みたくなっています。
文庫かあ。上の子に買ってもらおうかな。
朝の読書にいいよとかなんとか言って(!)。
Posted by ヤヤー at 2006年07月13日 14:35
ヤヤーさん、原文のコピーはどこかにあるのですが、すっかり忘れてしまいました。絵も文も、というのがヤーノッシュのこだわりを感じます。新版のブレーメンは現代的な成功物語でしたが、旧版はかなりどんより暗かったはず。新版のほうが全体てきにトーンが明るく、物語も明るいものが多かった気がします。現代的な解釈で「幸せ」とはという内容だと思いますが、旧版はうーん、読み直してみなくては(大汗)
大人と子どもで分けないというのはよくわかります。日本では「大人向け」になってしまうのも大人に響く面が多いからかもしれません。子どもだからこういう結末は、と考えるほうが考えすぎで、よくよく考えると、わたしなんかも子どものころから、こういう皮肉の聞いたお話って好きだったと思います。お子さんにもぜひ♪
ちなみに文庫はモノクロ、ソフトカバーはカラーだそうです。(結構売れたみたいでブックオフとかに激安で置いてそう……)
Posted by kmy at 2006年07月14日 13:55
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