2010年12月22日

『死ねばいいのに』

死ねばいいのに
京極 夏彦
講談社 ( 2010-05-15 )
ISBN: 9784062161725



 「ならさ」
  ――死ねばいいのに。

 この特徴的な言葉が挿入される連作短編集。殺された女を巡って話を聞きにいくケンヤと相手との会話で進む。相手は自分のことを滔々と話し、自分の生きてきた人生、立場、他人には理解されていないと感じる理不尽さなどを聞かせる。その一連の流れを通して発するケンジの「死ねばいいのに」には頷いていまうところがあります。そうだよね、そんなに厭だったら、今の生き方変えれないんだったら、じゃあ何で生きているの、と確かに思うのです。だけども、この物語の人物たちは死にたくはない。死ぬ気なんてない。こんな人生でも、厭ことだらけでも、それでも生きているし、生きていくものなんだよ、と思わせる。実際、こういう人生やつまらないこと、うまく行かないまま過ぎていく日常、あるある、と思います。だからって、人間簡単に死のうとは思わない。それでも生きているし、生きてしまうし、そのうちいいことあるかもなんて思う。不平不満がいろいろあるけども、それでも――

「あのさ、俺思うんだけど、あんたの言うマイナスって、ただプラスがねえってことじゃんか。それ、マイナスじゃねえよ。人生なんでも普通はゼロだって。プラスもねえしマイナスもねえのが普通じゃん。あったって、結局はプラマイゼロだから。良いことがねえから不幸だって、それ、おかしくね?」(P66)


 自分で自分のことを不幸だと思うこと自体が不幸なのかもしれない、と思う本です。それはそれでいんじゃね?と言っているケンヤの言葉がなぜか身に沁みる、そんな感じです。
posted by kmy at 19:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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