2006年04月08日

新旧翻訳比較『チョコレート工場の秘密』

 はじめに断っておきますと、子どものころから『チョコレート工場の秘密』が大好きだったので、田村隆一氏による旧訳は馴染んだ年月の分だけ思い入れもあり、贔屓目に見てしまいます。「やっぱり『チョコレート工場』は田村さんの訳でなくっちゃ!」と思っていましたが、新訳には新訳のよさがありました。そして比べてみて旧訳のよさも見えてきました。(この先かなりの長文です)

映画化によってこれまでとは比較にならないほど原作本が売れるということが、当たり前のようになってきています。『チャーリーとチョコレート工場』の映画により、原作本『チョコレート工場の秘密』に注目が集まるのは必至。そうなると、田村隆一氏による翻訳本には問題があるということになったのではないかと思います。

 田村訳はダール初版本を参考に翻訳されているということらしく、ウンパ・ルンパとの出会い、容姿等の部分はダール自身が変更したにも関わらず田村訳は初版本の翻訳のままずっと流通していたそうです(※1)。また、現在は差別語と言われる言葉が用いられている箇所もあります(※2)。さらに、「言葉遊び」部分がありますが、田村訳では削除したり、日本語として通じる意味だけで訳すことに留まっています(※3)。
 
 以上のような理由により、評論社では新訳を刊行したのではないかと推測しますが、ではなぜ柳瀬氏か、と言えば田村訳で削除された部分も翻訳すること、つまり「言葉遊び翻訳」を念頭においていたからではないかと思われます。柳瀬氏といえば言葉遊びを交えた文学作品の翻訳(ジェイムズ・ジョイスやルイス・キャロルなど)で有名な方です。旧訳で削除されていた言葉遊び部分を訳す=柳瀬氏というのは自然な流れだったのではないでしょうか? 新訳の最大の特徴がこの言葉遊びを生かした翻訳になったことだと感じます。人名などを意訳したことに違和感を感じる方も多いようですが、この訳語によって今まで知らなかった意味を呼び起こす効果をあげていると思います。柳瀬氏のあとがきで「あの訳書では、名前が面白くもなんともない。はたして訳者がわかっていたのかどうか……(P264)」と書かれています。柳瀬氏の翻訳の特徴は英語の言葉遊びを日本語で表現することですので、言葉遊びを訳さなかった田村訳がには不満があるのも当然かもしれません。「訳者がわかっていたのかどうか」発言には「前の訳者は言葉遊びを軽んじているのでは」という意識だったのかもしれません。翻訳者の視点がおそらく違っていたのでしょう。

 田村訳と柳瀬訳を比較してみて気がつくことは、柳瀬訳は英語の語順、音などを意識した訳となっていることです。英文では会話の途中で「…said.」を入れることが多いようです。これを踏まえて柳瀬訳では語順通りになっています。対して田村訳ではこの「…が言った」という部分を間に挟まずに、会話をまとめて訳すことが多いように感じられます。柳瀬訳では音の雰囲気も出すようにしていることも感じられます(※4)英語の原文を意識しているので、原書と読み比べる方にはこちらが好まれるのではないかと思います。田村訳で削除された部分は意欲的に訳されているものの、残念ながら柳瀬訳には抜け落ちたらしいミスがいくつか見られます(※5)。

 田村訳が支持される理由はもちろん、子どものころから親しんだ本であるということは大きいのかもしれません。しかしながら、やはり田村訳の表現が好まれる理由というのは「田村氏が選んだ日本語」にあるのかもしれません。田村訳では慣用句を用いた翻訳が多いことが特徴です。慣用句が文章に自然に馴染んでいるように感じられます。例えば、stareは「目を皿のようにして見つめる(田村訳)」「じっと見る(柳瀬訳)」、gazeは「穴の開くほど見つめる(田村訳)」「目をこらす(柳瀬訳)」となっています。英和辞書を引けば出る慣用句ではないところがいいのかもしれません。

 田村訳は日本文を意識して文章を組み立て、柳瀬訳は逆に英文を意識して文章を組み立てているように感じます。田村訳は言葉遊びを省略し、多義語のひねりなどがないので、「原作者はこういうことを言いたかった」というような注も必要とせず読めると思います。無理やり作りだした表現がないので読みやすく感じるのかもしれません。一方、柳瀬訳は原文と比較しやすいので、原書を読む方にはこちらのほうがよいのではないかと思います。田村訳とは逆に柳瀬訳は読んでいて「翻訳」であることを意識させられます。

 で、結局どうなのかと言えば個人的には田村訳の文体・訳語のほうが好みです。同じ内容でも次のように印象が異なります。田村訳のほうが物語らしい文体に感じられます。例えば次のような部分。

famous youth(券を当てたオーガスタス)の訳
「有名少年」(柳瀬訳)
「一夜にして有名になってしまった少年」(田村訳)

his fat wife (ベルーカ・サルト<イボダラーケ・ショッパー>の母)
「肥満妻」(柳瀬訳)
「デブのおかあさん」(田村訳)

バケット夫妻と少年は、もう一つの部屋の床にマットレスを敷いて休みました。(田村訳P14)
バケツ氏と奥さんとチャーリー・バケツ君は、もう一つの部屋で、マットを敷いて寝るしかない。(柳瀬訳P13)
Mr. and Mrs. Bucket and little Charlie Bucket slept in other room, upon mattresses on the floor.(P10)

暮らしはどん底まで落ちてしまいました。(田村訳P75)
事態は、いよいよ深刻になった。(柳瀬訳P69)
The situation became desperate.(P50)

虹のドロップ――なめると七色のつばがでる。(田村訳)
虹ドロップ――しゃぶれば、6色の唾を吐ける。(柳瀬訳)
RAINBOW DROPS----SUCK THEM AND YOU CAN SPIT IN SIX DIFFERENT COLORS


 確かに「肥満妻」なのだけど、あまり使われないような言い回し。またGolden Ticketの訳語は「金色の券(田村訳)」「黄金切符(柳瀬訳)」です。どこかの会場に入るためのものは「券」のほうが普通のように思われます。「切符」というと電車イメージが強い気がします。また、柳瀬訳は原文に忠実なので虹の色は六色と訳していますが、田村訳では七色となっています(※7)
 
 わたし個人がもっとも気になること――ジョウじいちゃんの会話に出て来る「語尾のカタカナ(柳瀬訳)」です。これこそ好みの問題ですが、何となく居心地が悪いような気分になります。
「やったぞよォォォォォォォォ!」(P84)
「てへッ」(P182)
「やったーッ! それーッ!」(P207)

 翻訳というのは料理に似ているような気がします。田村氏が翻訳を手がけた時代はまだ外国が今ほど身近なものではなかったので、日本人好みの味になるようにスパイス(言葉遊び)は省いているものの、全体としての味わいを大事にした、そんな物語に仕上がっています。対する柳瀬氏の翻訳はオリジナルを意識し、スパイスを効かせたので、今までとは一味違ったものになったようです。人によってはスパイスが効きすぎていると感じる方も多いようです。ジョウじいちゃんのことばなどは完全に「付け合せ」の域ですね。クレソンが嫌いな人もいるし、大好きな人もいる、そういうことになるのだと思います。同じ料理のはずなのに、料理人によって味が変わるもの、それが翻訳なのかもしれません。


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以下参考資料

該当ページは田村訳(てのり文庫版)(T)、柳瀬訳(Y)、英語は講談社英語文庫を示しています。
チョコレート工場の秘密
『チョコレート工場の秘密』 ロアルド・ダール作 柳瀬尚紀訳 評論社

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『チョコレート工場の秘密』 ロアルド・作 田村隆一訳 てのり文庫
(わたしが持っているのはこれです)

チョコレート工場の秘密
『チョコレート工場の秘密』講談社英語文庫
英文はこちらに従いましたが、読んでみるとチャーリーが拾ったのは「ドル札」! アメリカ版かも……。田村訳では「半クラウン銀貨」柳瀬訳では「50ペンス」となっている部分です。柳瀬さんはもちろんイギリス版を見ていることと思います。


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※1ウンパ・ルンパ
田村訳:
「背の高さはひざくらい」「皮膚はチョコレート色」で、チャーリーは「ワンカさんがチョコレートで作ったと思うんだ」と言っています。「小人」と表現。ワンカさんはウンパ・ルンパについてアフリカから連れてきたピグミーだと言っています。(P121〜123)
きれいな白い歯、皮膚の色はほとんど真っ黒で縮れ毛。(p139)

柳瀬訳(原書も同様)
膝までの背の高さ、おかしな長い髪の毛という描写で、チャーリーは「本物の人間のはずないや」と言っている。ワンカ氏は「ルンパッパから直輸入」と言い、ショッパー夫人が「そんなところはありません」「わたしは地理を教えている」と言っています。(P113〜114)
まっ白い歯、肌はバラ色がかたった白、長い髪は金色がかったこげ茶。

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※2差別表現
チョコレートの川を船で下る場面です。ここで皆がワンカさんを罵る場面ですが、田村訳は英語をそのまま訳しており、差別表現ととられる部分があります(ということで、引用は避けました)。柳瀬訳は「韻」を生かした訳にしているため、英語の意味とは対応しません。

柳瀬訳
「あの男、気がふれたぞ!」に続く部分。

「音痴!」
「ちゃち!」
「やけっぱち!」
「うそっぱち!」
「はれんち!」
「幼稚!」
「イカレポンチ!」
「厚顔無恥!」
「頭でっかち!」
「不埒!」
「無知!」
「へらずぐち!」
(柳瀬訳P143)

"He's balmy!" (いかれた)
"He's nutty!" (狂った)
"He's screwy!" (気が変な)
"He's batty!" (酔っ払った)
"He's dippy!" (頭のおかしい)
"He's dotty!" (たわけた)
"He's daffy!" (狂った)
"He's goofy!" (ばかな)
"He's beany!" (お調子者)
"He's buggy!" (気がふれた)
"He's wacky!" (気狂いじみた)
"He's loony!" (ばかな)
(P104〜105、訳語は巻末注にしたがう)

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※3言葉遊び
田村訳では言葉遊びの部分は一部の意味だけを採用しているため、読んだ限りでは言葉遊びの面白さは出ていません。

■貯蔵室71
(T)
貯蔵室71号 泡だて器――あらゆる形と大きさのもの
(P154)と書かれているのみ。
(Y)
貯蔵室71、と書いてあった。鞭――全形状 全サイズ。
「鞭だってさ?」とイボダラーケ・ショッパー。「鞭なんて、何に使うの?」(P143)


この後にも「落とし卵(poached egg)」のしゃれも訳しています。
STOREROOM NUMBER 71,it said on it.WHIPS ALL SHAPES AND SIZE.
"Whips!" cried Veruca Salt."What on earth do you use whips for?"
(P106)


■貯蔵室77
(T)貯蔵室77号 豆類――ココアの豆、コーヒーの豆、ゼリービーンズ。(P154)

(Y)貯蔵室77――豆類全、ココア豆、コーヒー豆、ゼリービーンズ、ゼニクイ豆。
「ゼニクイ豆?」と、イボダラーケ・ショッパー。
「きみがそうじゃないか!」と、ワンカ氏。(P145)
STOREROOM NUMBER 77 ---- ALL THE BEANS, CACAO BEANS, COFFEE BEANS, JELLY BEANS, AND HAS BEANS.
"Has beans?" cried Violet Beauregade.
"You're one yourself!" said Mr.Wonka.(P145)

■23章全体
(T)
タイトル:キョロッと見回す四角いお菓子(P192)
(Y)
タイトル:丸目に見える四角いキャンディー(P180)
Square Candies That Look Round(P129)

田村訳ではこの後の言葉遊びのやり取りを削除しています。"look round"が「丸く見える」「振り向く」の二重の意味にとれる言葉遊びの会話が楽しい場面です。柳瀬訳ではこの違いを「丸めに見える」と「丸目に見える」としているものの、意味がわかりにくい気がします。

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※4文体の特徴

(T)
「うん、いいよ。」とチャーリー。
「よし、おまえがはじめに、チョッピリ、破くんだ。」
「ううん、おじいちゃんがお金出したんだから、おじいちゃんが全部あけてよ。」
(P70)
(Y)
「うん」と、チャーリー。「いいよ」
「よし。おまえが先にちょっぴりはがしておくれ」
「ううん」と、チャーリー。「おじいちゃんがお金出したんだもん。おじいちゃんが全部はがして」(P65)
"Yes," Charlie said. "I'm ready."
"All right. You tear off the first bit."
"No," Chalie said, "you paid for it. You do it all."(P47)


(T)
「なに、小人たちが、すぐ、あの娘(こ)のからだから、水分をぬきとるよ! あの娘を、ジュース絞り器のなかに、ころがせば、笛みたいに、細くなってでてくるさ!」と、ワンカさんが、きっぱりいいました。(P185)
(Y)
「なあに、ゼロ秒フラットで、あの子を除ジュースするだろう」と、ワンカ氏はきっぱり言った。「ころがして除ジュース機に入れてやれば、ほっそりしたからだになった出てくる!」(P173)
"They'll de-juice her in no time flat!" declared Mr. Wonka. "They'll roll her into the de-juicing machine, and she'll come out just as thin as a whistle!"(P125)


おっと、ぐずぐずしちゃいられない! 油を売っているひまなんかないぞ!(P254)
ぐずぐずしちゃいられない! のたのたしてちゃだめだ!(P240)
But we mustn't dilly! We mustn't dally!(P172)

柳瀬訳ではde-juice=除ジュース、dilly、dally=ぐずぐず、のたのたのように音の持つ雰囲気を訳すことが多いように感じられます。

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※5抜け落ちた部分
(使用テキストは2005年4月30日発行の初版。第二版として修正されている可能性もあります)
(T)
「チューインガムはかむものだ。ところが、このとけないキャンディを、ためしにかんでごらん。いっぺんで、歯が折れてしまうから。しかし、このとけないキャンディの味ときたら、それこそ、頬っぺたがおちてしまう! おまけに、ずっとなめていると、一週間ごとに、キャンディの色が変わるのさ! しかも、ぜったいに小さくならない!(略)」(P151)
(Y)
「ガムは噛むものだ! このぺろぺろキャンディーを噛んだりしては、歯が折れちまう! しかも、ぜったいに小さくならない!」(P151)

Gum is for chewing, and if you tried chewing one of these Gobstoppers here you'd break teeth off. But they taste terrific! And they change color once a week! And they never get any smaller!
(P110)

(T)
二十五匹のリスが、少女の右腕をつかまえると、床に、おさえつけました。
べつの二十五匹のリスが、左腕をつかまえると、床に、おさえつけました。
さらに、二十五匹が、右足をつかまえ、ほかの二十四匹が、左足をつかまえて、床に、おさえつけました。
(P201)
(Y)
その二十五ひきが、右腕をつかまえて、床に押さえつける。
その二十五ひきが、左腕をつかまえて、床に押さえつける。
その二十四ひきが、右足をつかまえて、床に押さえつける。
(P189)

Twenty-five of them caught hold her right arm, and pinned it down.
Twenty-five more caught hold her left arm, and pinned it down.
Twenty-five caught hold of her right leg, and anchored it to the ground.
Twenty-four caught hold of her left leg.
(P136〜137)

(T)
「このエレベーターはなにからなにまで、うすい(←ママ*)、透明ガラスでできているんですよ。壁、ドア、天井、床、みんな外が見えるように、ガラス張りなんですよ!」と、ワンカさんが説明しました。
「だけど、なんにも見えないじゃないか。」と、マイク・テービー。
「どれでも好きなボタンを押してごらん!」
と、ワンカさんがいいました。「さ、チャーリーに、マイク、きみたりは、ボタンを一つ、押していいよ。好きなボタンを! さ、急いで! どの部屋でも、すばらしいお菓子を、つくっているんだよ。」
(P214)
*うすいとなっていますが原文はthick。ミスだと思われます。

(Y)
「エレベーター全体が厚い透明ガラス!」と、ワンカ氏は説明する。「二人の子にそれぞれ一つずつ押してもらおう。さあ、決めて! 急いで! どの部屋でも、おいしいすてきなものを作っているよ」
(P203)

"The whole elevator is made of thick, clear glass!" Mr.Wonka declared. "Walls, doors, ceiling, floor, everything is made of glass so that you can see out!"
"But there's nothing to see," said Mike Teavee.
"Choose a button!"
said Mr Wonka. "The two children may press one button each. So take your pick! Hurry up! In every room, something selicious and wonderful is being made."
(P145〜146)
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※6田村訳の特徴
■田村氏の比喩を使った翻訳
(T)
ふたりは、目を皿のようにして見つめました。
板チョコ――たった、それだけです。(P71)
(Y)
二人は、そこにあらわれたものをじっと見る。――板チョコ、それっきり。
(P66)
They both stared at what lay underneath.
It was a bar of candy -- nothing more.
(P48)



(T)
少年は、ふるえる指で、しっかりとつかむと、穴があくほど見つめました。(P79)
(Y)
ふるえる指でしっかとつかんで、じっと目をこらす。(P74)
He held tightly between his shiering fingers,gazing down at it.(P54)


(T)
天にものぼるほど、幸福だったのです。(P82)
(Y)
すばらしく幸せ、とてつもなく幸せだった。(P76)
but he felt marvelously, extraordinarily happy.(P56)


(T)
少年は、ふるえる指でしっかりとつかむと、穴の開くほど見つめました。(P79)
(Y)
ふるえる指でしっかとつかんで、じっと目をこらす。(P74)
He held it tightly between his shivering fingers, gazing down at it.(P54)


(T)
「おいしいかね?」と、ワンカさんが、たずねました。
「頬っぺたが、落ちてしまいそう!」と、チャーリー。(P150)
(Y)
「おいしいかな?」と、ワンカ氏。
「うん、すっごく!」と、チャーリー。(P141)
"You like it?" asked Mr.Wonka.
"Oh, it's wonderful!" Charlie said.


(T)
「あの子がおぼれる! まったくのかなづちなのよ! (略)」(P131)
(Y)
「おぼれちゃうわ! あの子、泳げないのよ!(略)」(P122)
"He'll drown! He can't swim a yard! ..."(P90)


(T)
「まるで、キツネにつままれたみたいだ!」
(P232)
(Y)
「こりゃもう信じられん!」
(P218)
"It's absolutely fantastic!"
(P157)

(T)
「ええ、そうだよ。」と、チャーリーの、蚊の鳴くような声。(P254)

(Y)
「え、はい」と、チャーリーは小さな声で言った。「はい」(P240)

"Why yes," whisperd Charlie."Yes".(P172)


■意訳?
(T)
「きみは、まるでチョコレートのない国から来たみたいだよ、坊や。」(P82)
(Y)
「そんなにそれが食べたかったのかい、坊や」(P76)
"You look like you wanted that one, sonny,"(P56)
この部分に関してはかなり意訳のような気がします。

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※7固有名詞比較

Golden Ticket
(T)金色の券  
(Y)黄金切符

WONKA'S WHIPPLE SCRUMPTIOUS FUDGEMELLOW DELIGHT
(T)ワンカのとびきり特製チョコレート  
(Y)ワンカのとろりめちゃうまめろめろファッジ

WONKA'S NUTTY CRUNCH SURPRISE
(T)ワンカの大珍味びっくりチョコ 
(Y)ワンカのナッツ風ぼりぼりびっくり

EATABLE MARSHMALLOW PILLOW
(T)食べられるマシュマロの枕     
(Y)食用マシュマロ枕

LICKABLE WALLPAPER FOR NURSERIES
(T)なめられる壁紙――子ども部屋用  
(Y)子供部屋用なめられる壁紙

HOT ICE CREAMS FOR COLD DAYS
(T)冬に食べる熱いアイスクリーム   
(Y)寒い日のためのホット・アイスクリーム

COWS THAT CHOCOLATE MILK
(T)チョコレート・ミルクを出す乳牛  
(Y)チョコレートミルクを出す乳牛

FIZZY LIFTING DRINKS
(T)人間ふきあげ飲料         
(Y)炭酸上昇ドリンク

SQUARE CANDIES THAT LOOK ROUND
(T)キョロッと見回す四角いお菓子   
(Y)丸目に見える四角いキャンディー

BUTTERSCOTCH AND BUTTERGIN
(T)ウィスキー入りキャンディとジン入りキャンディ 
(Y)バタースコッチとバタージン

THE ROCK-CANDY MINE ----10,000 FEET DEEP
(T)キャンディー岩山――地下1万フィート 
(Y)氷砂糖鉱山――地下三千メートル

COKERNUT-ICE SKATING RINKS
(T)やしの実アイス・スケートリンク
(Y)ココナッツアイス・スケートリンク

STRAWBERRY-JUICE WATER PISTOLS
(T)いちごジュースの水鉄砲
(Y)ストロベリー・ジュース水鉄砲

TOFFEE-APPLE TREES FOR PLANTING OUT IN YOUR GARDEN----ALL SIZES
(T)りんごキャラメルの木――庭園移植用――各種サイズあり
(Y)自宅庭園用トッフィーアップル樹全サイズ

EXPLODING CANDY FOR ENEMIES
(T)攻撃用爆発キャンディ
(Y)敵撃破爆弾キャンディ

LUMINOUS LOLLIES FOR EATING IN BED AT NIGHT
(T)夜間ベット用発光キャンディ
(Y)夜間ベット用棒付き夜光飴

MINT JUJUBES FOR THE BOY NEXT DOOR----THEY'LL GIVE HIM GREEN TEETH FOR A MONTH
(T)はっか入りなつめゼリー――となりの家の子どもに食べさせて、その子の歯を、一ヶ月間、みどり色にそめてしまう。
(Y)隣家用ミント入りナツメゼリー―― 一ヶ月間未熟歯保証

CAVITY-FILLING CARAMELS----NO MORE DENTISTS
(T)虫歯の穴つめ用キャラメル――歯医者いらず
(Y)虫歯穴詰キャラメル――歯医者無用

STICKJAW FOR TALKATIVE PARENTS
(T)おしゃべり両親用ねばつきキャンディ――(あごがくっついてしまう)
(Y)おしゃべり両親用ねばつきキャンディー

WRIGGLE-SWEETS THAT WIGGLE DELIGHFULLY IN YOUR TUMMY AFTER SWALLOWING
(T)飲み込むと、おなかのなかでクネクネするクネクネお菓子
(Y)飲み込むとおなかの中で楽しげにくねくねするくねくねキャンディー

INVISIBLE CHOCOLATE BARS FOR EATING IN CLASS
(T)透明板チョコ――教室用
(Y)授業向き透明板チョコ

CANDY-COATED PENSILS FOR SUCKING
(T)なめられる糖衣鉛筆
(Y)しゃぶる糖衣えんぴつ

FIZZY LEMONADE SWIMMING POOLS
(T)泡立ちレモネード水泳プール
(Y)泡ぶくレモネード水泳プール

MAGIC HAND-FUDGE----WHEN YOU HOLD IT IN YOUR HAND, YOU TASTE IT IN YOUR MOUTH.
(T)魔法の砂糖菓子――手でにぎっただけで、口のなかにおいしい味がする。
(Y)マジックハンド・ファッジ――手に持つだけで口の中で味がする。

RAINBOW DROPS----SUCK THEM AND YOU CAN SPIT IN SIX DIFFERENT COLORS
(T)虹のドロップ――なめると七色のつばがでる。
(Y)虹ドロップ――しゃぶれば、6色の唾を吐ける。

 柳瀬訳のほうが現代的で、「ココナッツアイス」「マジックハンド・ファッジ」などはカタカナ表記にしただけだとはいえ、わかりやすい。柳瀬訳の「未熟歯」というのはどういう状態を指すのか(言葉遊び?)不明です。また、田村訳では「フィート」でしたが、柳瀬訳は「メートル」に直しているので日本人にはわかりやすい表現となっています。バタースコッチ、バタージンのしゃれが柳瀬訳ではじめてわかります。ハリー・ポッターのバタービールとの比較で「チョコレート工場のバタースコッチ」がどこかで言及されていたのですが(どこかは忘れました。失礼!)、田村訳の本を探しても「バタースコッチ」の記述がなくてずっと謎でした。ひとつ謎がとけて得した気分です。
 田村訳ではあめは「なめる」もので、柳瀬訳では「しゃぶる」もののようです。また、原文では虹のドロップで出る唾の色は六色ですが、田村訳は日本人向けに七色と訳しているようです。

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water-3.gif
参考サイト:
バオバブの木と星のうた子どもの本に言いたい放題『チョコレート工場の秘密』
復刊ドットコム 掲示板「チョコレート工場の秘密」
上記サイトではダールの原文が変更されたことについて書かれています。

『チョコレート工場の秘密』関連のブログ記事
わくわく本:『チョコレート工場の秘密』
(訳者が違えば印象が違うと書かれていて、この記事から新訳にとても興味を持ちました。コメント、トラックバックも多数で参考になります)
オトナノトモ:愛すべき映画と、永遠に愛される原作
(旧版の貴重な表紙画像が見れる上、物語そのものに対する感想は読み応えあります)
Kazeの季節:『チョコレート工場の秘密』
(田村訳に対しての思いいれが語られていて、ぜひ図書館で保管して欲しい、なんて思いながら拝見した記事です)
チャーリーのほほんブログ:明日は映画館へGO〜!
(この本に関する評論社からの返信が掲載されているのが参考になりました)
LA DOLCE VITA:翻訳「チョコレート工場の秘密」新版・旧版あなたならどっち
詩人としての田村さんについてとともに、新訳と旧訳の特徴を挙げていて参考になります。
posted by kmy at 13:30| Comment(22) | TrackBack(2) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。(^^)
TBありがとうございました。
早速お邪魔してビックリ。kmyさんの素晴らしい考察に、ひたすらビックリです。失礼とは思いながら、早速プリントアウトさせていただきました。感心することひたすら。とっても勉強になります。m(__)m

他の記事も興味深いものがいっぱい。ページのレイアウトも、とっても素敵。
早速お気に入りに登録させていただいて、ちょくちょくお邪魔させていただきます。
私のようなページを見つけていただいて、感謝感謝です。

叉、遊びに来ます。(^^)
Posted by ゆっこ at 2006年04月08日 21:58
こんばんは。
「わくわく本」の海五郎です。
ていねいなご紹介とトラックバック、ありがとうございました。
kmyさんの詳細な比較を読んで、自分の印象はこういうことがその原因なのだと知り、とても興味深かったです。
ぼく自身はものぐさなので、とてもこんな比較はできません(笑)。
これからの記事も楽しみにしています。
Posted by 海五郎 at 2006年04月08日 23:29
 読み応えありました。kmyさんの徹底した探究心には頭が下がります。
 実は日本語訳はどちらもまだ読んでいないのですが、是非両方読んでみようと思います。kmyさんの対比を見る限りでは田村訳の日本語のほうが素敵ですね。
Posted by ぴぐもん at 2006年04月08日 23:31
こんにちは。とても読み応えのある興味深い記事をトラックバックしていただき、ありがとうございました。私は新旧訳そのものの読み比べぐらいしかしていなかったので、kmyさんのちゃんと原書をふまえての緻密な比較とその解説に、海五郎さんと同じくただただ頭が下がりました。個人的にはお菓子の名称の比較リストに感激しました!!

さて、冒頭の「新訳には新訳の良さが…」との言葉を素直に受け入れるつもりで読んだのですが、うーん、一通り読ませていただいてやっぱり私は田村訳が好きだということを再認識してしまいました(笑)。
柳瀬さんが優れた英文解析力をお持ちだと言うことは分かるのですが、何となく、優秀な自動翻訳ソフトが処理したような訳文のように思えてしまうのです。正確さを追求した技術は素晴らしいけれど、母国語への愛が感じられないと言ったら言いすぎでしょうか。
「キョロッと見回す四角いお菓子」がいないチョコレート工場なんて、ありえなーい!と思ってしまう私(^^;)
Posted by えほんうるふ at 2006年04月09日 03:58
ゆっこさん、コメントありがとうございます。図書館という場所は大好きで、そこでのエピソードを読みながら、絶版になってしまった古い本のこと、しんみりしながら読ませていただきました。
評論社サイドで田村さんによる改訳をもっと早い時期に検討していれば、などとも感じてしまいました。少し前まで当たり前のように並んでいた本が手に入らなくなることって残念です。

海五郎さん、コメントありがとうございます。「わくわく本」でご紹介の本は未読のものも多いので、選ぶ際の参考にさせていただいています。新訳と旧訳の雰囲気の違いという記事に触発され、新訳は図書館で借りたのですが、さらっと読んでも何か印象が薄く、思い切って一文ずつ読んでは比べてみるということにしてみました。
田村さんの訳は日本語として読んでいいなあと思える文章がそこかしこにありました。方向性の違う柳瀬さんがなぜタイトルだけは踏襲したのかも気になりました。

ぴぐもんさん、コメントありがとうございます。ミスがあるとはいえ、一語一句を訳すということから見れば柳瀬さんの訳のほうがオリジナルに近いのかもしれませんが、田村さんの訳は表現が豊かだと感じました。訳という感じがあまりしない気がします。

えほんうるふさん、コメントありがとうございます。お菓子のリストは特に作りたくて載せました。虹の色は言語によって違うということは知っていたのですが、こういうところで実例を見ると、日本語に訳す場合は七色がいいような気がします。柳瀬さんの訳は英語と比較しながら読むときにはいいのかもしれませんが、英文を考えずに物語そのものを楽しむということでは田村さんの訳のほうがすんなりと読めるような気がします。「キョロッと見回す四角いお菓子」ということばのほうが印象的です。さすがに映画に出てこなかったけども、忘れられないお菓子です。あの章は特に印象が違った気がします。言葉遊びが面白いとは言い難く(すみません)、こういうものの翻訳の難しさを改めて感じました。
それにしても「肥満妻」という訳語にはめまいがしそうです。
Posted by kmy at 2006年04月09日 11:47
こんばんはkmyさん「チャーリーのほほんブログ」のチャーリーと申します、TBありがとうございます。実はあれから柳瀬訳の本を読もう読もうと思いつつ、でも読めなくって…。名前を変えているのがどうしてもダメで…でもkmyさんのブログを読んでやっぱり読まなければと。いろいろ考えさせてもらえ勉強になりました、ありがとうございます。でも…いつになったら読み終えられる事やら…努力します。(笑)
Posted by チャーリー at 2006年04月09日 18:41


>日本人好みの味になるようにスパイス(言葉遊び)は省いているものの、全体としての味わいを大事にした

というのはわたしも当たっているなあと思いました。
kmyさんの考察を昨日はさーっと読み流してしまいましたが、改めて細かく読んでみるとものすごく面白いです!
『指環物語』なども評論社ですが、やはり映画化によって翻訳の善し悪しが取沙汰されましたよね。
なにしろ時代の先駆者ですし、そう簡単には慣れ親しんだ文章を替えるわけにはいかないのでしょう。
何より、読者が替えたくないのかも知れません。

でも『星の王子様』も新訳がたくさん出版されたことですし、こういう比較の議論がもっともっとなされてもよいと思います。
どなたが翻訳されたにしろ、読者が好きなものは、その訳者が遣う日本語が好きなのだということでしょう。
わたしはどちらも好き。
それに何よりダールの原作が魅力的だから、訳者も読者もほかの誰かに面白さを伝えたくなるんですよね!
Posted by ヤヤー at 2006年04月09日 21:24
チャーリーさん、コメントありがとうごじます。チャーリーさんの記事は大変参考になりました。
柳瀬さんの訳を読んでいると、どうしても最後まで読み通せないでいました。細かいところで引っかかったりします。内容ももちろんですが、ひとつひとつの文章が素敵です、田村さんの訳は。

ヤヤーさん、コメントありがとうございます。最初に読んだ翻訳文が刷り込まれてしまうと、なかなか新訳って受け入れ難い気もします。『指輪』も新訳になりましたが、旧訳を読んでいないのでここがこう変更になったという点をファンサイトなどで読んでみても「ふーん、なるほど」と思うくらいだったりするので、柳瀬氏の訳がこれから主流になってしまうのだろうな、と思います。(寂しくもありますが)
『星の王子さま』も新訳ラッシュで新訳をいくつか読みましたが、どれがいいかというと難しいと思いました。それこそ、ずっと内藤さんの訳に親しんだ方には新訳も違和感があるのだろうな、と思いました。
ダールは意外と多くの翻訳者で手がけているのだと、最近知りました。柳瀬さんが新訳を手がけているものは、何か問題があったのかな?とふと思います。(とりあえずあとがきを見てみようかというところです)
Posted by kmy at 2006年04月10日 15:45
kmyさんの詳細なる翻訳比較レポートを読みました。よくぞやってくださったという感想です。わたしも田村訳で育った世代ですが、柳瀬さんの訳も田村訳とはまったく違った味わいの訳として楽しみました。でも、あの訳者あとがきは今でもカチンときます。田村さんへのあてつけと言えなくもない印象は強く受けます。原作の言葉遊びを見事に日本語に移し変えた柳瀬さんの力量は見事だと思っていますが、田村さんがダールの言葉遊びを訳さなかったからといって、それがことのほか重大な問題であるかのように言うのは筋が違うのではないかと思っています。
言葉遊びについても翻訳は可能なのだ、という柳瀬さんのポリシーはけっして間違ってはいないと思うのですが、柳瀬さんの翻訳に何か足りないものがあるとすれば、「以前の翻訳」をした人への思いやり、「心」の部分でしょうか。
それから、私は「いじわる夫婦が消えちゃった!」/「アッホ夫婦」の両方持っていて、読み比べしました。田村さんの訳のほうがのりがよかったように思いましたが、kmyさんはどういう印象をお持ちですか?
Posted by こいさん at 2006年05月05日 12:41
こいさん、はじめまして♪ 丁寧なコメントありがとうございます。
柳瀬さんと田村さんは翻訳に対しての意識が違うように感じました。柳瀬さんは翻訳そのものに対しての興味を持っているようで、日本語へ翻訳するという作業でどこまで音や意味を表現するかという感じがします。田村さんは物語そのものへ興味を持っておられると感じました。物語全体の雰囲気を整えることを重視しているように思います。

「以前の翻訳」については柳瀬氏の著書でもかなり辛辣にコメントと試訳を入れていましたので、訳に関してはかなり厳しい見解をお持ちかと思いますが、途中途中、こういう訳なんだ、とひっかかるものがありました。読んでいて物語そのものに入っていく、物語の中に浸れるのは田村さんのほうだと思います。

コメント中に出てくる『アッホ夫婦』と『いじわる夫婦が消えちゃった』は未読なので、なんともいえません。ごめんなさい。今度読み比べてみます。同じ本でも印象が違うというのを感じるというのはとても興味深く感じています。
Posted by kmy at 2006年05月05日 13:12
あらためましてこんばんはkmyさん。昨年の『チョコレート工場の秘密』の新訳発売をきっかけにして、ロアルド・ダールにハマっています。
前のコメントでも触れたように、以前田村隆一さんが訳したものは可能な限り手に入れて、読み比べをしています。『アッホ夫婦』(原題 The Twits)は、訳者が違うとこうも違うのかという好例だと思います。失礼ながら、原文と比較対象したものをひとつあげておきます。

(原文)You yourself,for example,are actually growing taller every day that goes by,but you would'nt think it,would you? It's happening so slowly you can't even notice it from one week to the next. (Puffin版p19)

(柳瀬訳)たとえば、一日一日、身長が実際に伸びていくにしても、本人はそんなことを思いもしないのではなかろうか。非常にゆっくりとそうなるので、一、二週間は、気づきもしないだろう。(『アッホ夫婦』p33)

(田村訳)たとえば、きみにしたってそうだ。きみの身長、じっさいは一日ごとにのびているんだが、ご本人のきみ、そんなことに気づきはしないよね? 背が高くなるといったって、そののびぐあいが、あまりゆっくりしているものだから、一週間や二週間では、ちっとも目だたないんだよ。(『いじわる夫婦が消えちゃった!』p32)

 kmyさんはまだ読んでいらっしゃらないということなので、筋がわからなくてもわかりやすいと思われるところを引用してみました。比べてみると、柳瀬訳は原文に忠実な理屈っぽい訳し方、田村訳は、田村さん自身が読者に話しかける感じの訳し方になっています。原文どおりにはなっていないところは結構ありますが、原作のダールが、というより田村隆一さんが物語を語っているという訳の仕上がりになっていて、あまり翻訳という感じはしないとわたしは思います。
田村さんの著作を読むと、本当に日本語が美しくて、ああいう文章を書いてみたいものだと常々思います。田村さん晩年の本『女神礼賛』は、これは口述筆記したものだと思いますが、この本は『いじわる夫婦が消えちゃった!』が田村隆一節で訳されたものなのだということがわかりました。『詩人のノート』含めておすすめです。
柳瀬さんの著作については、言葉の薀蓄に関するものとか、趣味の将棋に関する文章が多いようです。両人の著作をみてみても、翻訳の方向性の違いが垣間見られるように思います。
 以上、長ったらしいコメントで申し訳ありませんでした。
Posted by こいさん at 2006年05月06日 20:24
こいさん、詳細な比較、ありがとうございます。大変参考になりました。
田村さんの詩などは読んだことがないので、こいさんのように詳しくないのですが(子どものころから『チョコレート工場』が特別好きでした)、こうして読み比べてみると翻訳に対する姿勢が違うというのがよくわかります。
田村さんの訳は一語一文を移し変えるというものではないように感じます。物語自体を田村さんならではの語り口で「語る」ということに重点が置かれていると感じます。翻訳っぽさを感じないで読めると思います。原文を意識したり言葉遊びも訳すというのは現在当たり前なのかもしれませんが、こういう翻訳のやり方があることや、よさを改めて感じます。
こいさんは本当に田村さんの著作・翻訳をよくご存知のようで頭が下がります。田村訳の本はほとんどがもう絶版なのでしょうか。図書館で借りてみます。
丁寧に調べてコメントくださいましてありがとうございました♪
Posted by kmy at 2006年05月07日 17:10
 評論社のホームページを見ると、『チョコレート工場の秘密』、『ガラスのエレベーター宇宙にとびだす』、『ぼくのつくった魔法のくすり』(古いほうです)の三冊が在庫なしで、その他は在庫ありになっていました。まだ手に入ります。以前出版元の評論社の編集の方にお伺いしたのですが、現在「児童図書館・文学の部屋」で出ているダールのシリーズ(田村さんの訳のものも含みます)は、在庫がなくなり次第、絶版ということだそうです。
 ダールの著作で田村さんが訳したもの以外では、小野章さん訳の『ぼくらは世界一の名コンビ!』と久山太市さん訳の『恋のまじないヨンサメカ』がそれぞれ柳瀬さんの新訳で出ました。これには少々ビックリ、でした。わたしはまだ全部手に入れてませんが、それぞれ読み比べてみようと思っています。
 田村さん訳の『大きな大きなワニのはなし』も柳瀬尚紀さんの新訳で出るそうなので、わたしとしては今から楽しみにしています。それではまた
Posted by こいさん at 2006年05月07日 18:18
こいさん(よく考えてみたら、「さん」までがハンドルネームだと「こいさんさん」のほうが正しいかも?と気になりました。こいさんさん、でしたらすみません!)、在庫について調べていただいてありがとうございます。
こいさんはダールの作品を丁寧に読まれているご様子が伝わります。『恋のまじないヨンサメカ』は家にあります。連休中に書店で『ことっとスタート』という本を見て「?」と思ったのですが中をちらっと見てこれも改訳になっているというので驚きました。(タイトルは何か意味を含んでいるんですよね……よくわかりませんが)田村さんのものだけでなく改訳が進んでいるんですね。
子どものころに『おばけ桃』は好きでした。こちらも新訳がでているようなので比べてみたい本ですが、なかなか実行に移っていないのですが、気長に読んでみたいと思っています。
Posted by kmy at 2006年05月08日 11:35
こんにちわ。ハンドルネームは、自分で「さん」づけにしてるみたいな少々ふざけたネーミングで申し訳ないのですが、「こいさん」と呼んでいただいてかまいません。
 田村隆一さんの日本語の心地よさというのは、声に出すとより心地よいというところにあるのではないでしょうか。田村さんは、自分の書く文章は落語からの影響を受けているといっています。落語でたいへん大事な「間」も自分の文章に生かされているそうです。10代のころさんざん高座に通いつめ本当に噺家になろうとしたぐらいだったそうですよ。
 青年時代に傾倒した落語の影響、そこらあたりが田村さんの翻訳の何か私たちの心に「しっくり」くる秘密なのかもしれません。
 柳瀬さんの翻訳のなかの言葉遊びは字面を追う中での面白さというところでしょうか。英語の音を生かした日本語への移しかえなので、日本語としては時にはたいへん奇抜な表現にもなるんだろうと思います。言葉遊びの大好きな詩人の谷川俊太郎さんの『ことばあそびうた』(福音館書店刊)をみると、これは完全に日本語としての言葉遊び、声に出して読むとより面白い言葉遊びになっているのだろうと思います。
 わたしは田村さんの著作はぜんぜん詳しくないのですが、『チョコレート工場の秘密』を導きの糸として、これまで手をつけていなかった田村さんの他の翻訳や著書、あるいは柳瀬さんの本を読んだりと、ずいぶんと読書の幅が広がりました。ロアルド・ダールの「もっと本を読もう」という呼びかけへのわたしなりの実践でもあります。
 それではまた。他の記事もじっくり見てみたいと思います。
Posted by こいさん at 2006年05月09日 10:41
こいさんのハンドルの「さん」にもきっと意味があるのだろうな〜と思います。こいさんと呼ばせていただきますね。

田村さんにまつわるエピソードは全然知りませんでした。なるほど〜と思います。柳瀬さんの訳に対するお話もわかります。時として奇抜な表現になること――すんなり理解できるものではない場合というのがあるようですね。谷川俊太郎さんの「ことばあそびうた」は以前に読んだ覚えがあります。日本語の言葉遊びとはまた違ったものになりますよね、翻訳というのは。内田麟太郎の『うそつきのつき』が好きですが、こういうのって英語に訳したらどうなるんだろう?と思ったことがあります。日本語で読んで考えなくてもおかしいというのが言葉遊びなのかも、などと思います。
『チョコレート工場』からダールをはじめ田村さん、柳瀬さんらの著作を読まれているとのこと。こうやって読書の幅が広がり、深く読み解くというのは楽しそうな気がします。ダールの本を読むのは少し先になりそうですが、両方の訳を交互に読むと面白いでしょうね。
少し前に『魔女がいっぱい』を読んだのですが、大魔女のことば遣いを意識して訳しているようでしたが、「ざんす」という語尾が少々わざとらしく感じました。田村さんの『チョコレート工場』はわざとらしい感じがあまりしないように感じます。(個人的に思ったことですが)語り口や使うことば、様々なものが合わさって翻訳ができているのだと感じます。

なかなか読書のほうがついて行っていなくて、いいコメントをお返しできていませんが、わたしはとても参考になるお話で、なるほど〜と楽しんで読ませていただいています。こいさん、コメントありがとうございます♪
Posted by kmy at 2006年05月09日 16:25
なかなか お話についていけないのですが、おもしろいです。
「チョコレート工場の秘密」は、子供が大好きな本だったので、家にあるのを確認してみたら、田村隆一訳でした。
わたしは、ここのやりとりを読んでいて、田村隆一派だったので、良かった〜と思いました。
そのうち 読みます。
Posted by noel at 2006年05月09日 21:32
noelさん、コメントありがとうございます♪ こいさんの域には全然達していないのですが、原書は無理としても新訳・旧訳の比較は他の本でもしてみたいと思っています。
田村さんの翻訳は翻訳っぽいこじつけみたいものがあまりない気がします。普通に物語として読んでしまう感じがあります。『チョコレート工場の秘密』の本の表紙を思い起こすと、同時に小学生のころ毎日通っていた図書館の雰囲気を思い出すのです。かなり遠くなってしまって、行くこともない場所なのですが。そういうことでも好きな本です。
Posted by kmy at 2006年05月10日 10:00
 こんばんは。koiです。ややこしいのでハンドル・ネームを変えました。いつも楽しく読ませていただいています。kmyさんの紹介されている本も興味深い本が多くて、大変参考になります。
 母がたいへん絵本が好きだったので、私もその影響を受けて育ちました。児童書・絵本の世界も結構奥が深いものだなと思っています。
 さて、『チョコレート工場の秘密』について。kmyさんのなさった新旧訳の具体的かつ詳細な比較は本当に画期的な作業だったと思います。
 アマゾンのカスタマーズ・レビューでの柳瀬尚紀さんの新訳に対する評価は完全に賛否両論ですね。ほとんどは漠然とした印象にもとづいた、たんなる自分の好き嫌いを述べたものに過ぎず、本の評価としてはそれほど参考にはなりません。具体的事例を示さないと、きちんとした評価はできないのだと思います。
 田村隆一さんの訳への思い入れのある人が今なお根強く存在する根拠について、ずっと考えています。日本語の表現が美しいからという理由だけではないような気がします。私なりの考察は後ほど。最近少々疲れ気味です。
Posted by koi at 2006年06月19日 02:50
koiさん、こんにちは♪
漠然と「好き・嫌い」と言ってしまうことは簡単ですが、何かあるような気がして、こういう比較をしてみたのですが、koiさんがこうして読んでくださるということだけでも光栄です。
koiさんのオススメで、『アッホ夫婦』『いじわる夫婦が消えちゃった』の両方を読みました。記事にするつもりなのですが、返却期限がすぎて延長できなかったので、もう一度借りてから、なんて思っていますが、訳の違いは気になりました。同じ内容を語るにしても、雰囲気の違いというかがでるものだと感じました。お話そのものはどちらでよんでも爆笑したり、驚いたりという面白さを持ってはいるのですが。ちらちらっと図書館で本をめくって『こちらゆかいな窓ふき会社』も新シリーズでは改訳されていました。ラストのお菓子の名前が、単なる音だけでの訳(?)でわかりにくかったのが、イメージしやすいように訳し直されていて、これは新訳の方がいいなと思いました。(田村さんのものではないですが)
koiさんの考察も楽しみにしています。
Posted by kmy at 2006年06月19日 10:29
田村隆一さんの文章を読んでいてよく感じることなのですが、「戦争」に対する緊張感を漂わせています。それは、田村さんの中学時代の同級生の加島祥造さんの文章でもそうです。
児童文学は子どもを第一の対象にしているためでしょうか、けっしてごまかしの利かない分野であろうと思います。子どもの問題に対する関心は社会全体に向かうものであるし、最終的には「戦争」の問題にも行き着く性質のものでしょう。
田村隆一さんの『詩人のノート』(70年代中期、『チョコレート工場の秘密』が出版されたころに書かれたものです)には、戦後児童文学の道に進んだ、田村さんの通った中学の先生が取り上げられています。その先生は、ファシズムに対する対抗意識を強烈にもっておられたそうです。田村さんは青春時代に、その先生からどれほどの影響を受けたことでしょうか。
「戦争」に対する緊張感を有している以上、田村さんの人間社会に対する洞察はより深く、その眼差しは暖かいものであるに違いありません。どんな文章を読んでもそういったものがにじみ出ていると思うし、それが田村さんの「味」でしょう。
柳瀬尚紀さんは、田村さんのそういう面に対する関心はそれほどないのではないかという印象を私は持っています。吉増剛造さんに対してはいたく強い関心を持っているようなのですが、田村さんについての関心がイマイチなのが少々残念に思われるところであります。
Posted by koi at 2006年08月26日 21:33
koiさん、いつも研究熱心で頭が下がります。わたし自身は田村さん自身の著作を読んだことがないので、一度読んでみたいとは思いますが、なかなか実行に移らないでいます。詩がメインとの事なので、普段詩を読むことが少ないからなのかもしれませんが……。柳瀬さんは詩人の吉増さんにはとても興味をもっていると新書で読みましたが、田村さん自身の詩作は好みではないのでしょうか。わたしも気になりました。
Posted by kmy at 2006年08月28日 08:42
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