2006年03月22日

『チャーリーとチョコレート工場』

チャーリーとチョコレート工場

 わたし、映画を観るのって苦手なんです。正直に言います。「画面に向かって集中できない」タイプ。でも、このDVD、気になって気になってあれこれ考えて、5回くらい見ました。『チャーリーとチョコレート工場』です。

 好きな本の映画化は喜んでいいのか悲しんだ方がいいのかわかりません。映画と本と一体になって楽しめるのかどうか、それのほうが不安なので観ない方がいいかも、と思っていましたが、『チャーリーとチョコレート工場』を観てみると、本だけでは感じなかったいろいろなことを思いました。原作はね、ここが違うんだよ、というような感想を抱くこともなく、「映画は映画、本は本」という分離した気持ちになることもなく、素直に楽しかった!です。

 本についての感想はこちらにあります。子どものころに読んだ気持ちをそのまま残しつつ、なんだか客観的に観てしまった第一回目、自分も親として耳が痛い気持ちで一杯になりました。子どもの言いなりに与えてしまったり、許してしまったり。親にとっては子どもというのは本当に大切な存在で、自分以上に守りたいものである、と思うのです。でも逆(子ども→親)は成り立たないですよね。特にマイクの父親はうーん、もの悲しい雰囲気が漂っていました。あのバーコードヘア。マイクに馬鹿にされて親の威厳なんてどこにもない。親への尊敬もまるでない。他の親をみてもああいう親にはならないでおこう。そういうことばかり目についたのです。
 親としての自分へちくちく刺さるような感じでした。正直、もう観ないほうがいいかも、と思いつつ、ウンパ・ルンパの歌が忘れられなくて、何度も観てしまいました。それで思ったのはあの金色の券の意味。4人の子どもたちとチャーリーとの間には決定的な差があったのだと本で読むよりも感じたのです。

オーガスタス:本能・欲求のままに食べる男の子。チョコレートが食べれれば、もらえればそれでいい。
バイオレット:肩書き・名誉が重要な女の子。金色の券を「獲得した」ことが最重要。
ベルーカ:自分の思い通りにならないと気に入らない女の子。欲しいものは何でもねだって手に入れる。金色の券が当たっても次から次へと欲しくなる。
マイク:テレビが観れればそれで満足の男の子。チョコなんて好きじゃない。計算・理論を実践で当たるか試してみただけです。

 この4人と比べてみるとチャーリーの望みは「チョコレート工場の中に入ってみること、ワンカさんに会ってみたいということ」なのです。他の子どもたちは特別な体験をしたい、人と違った自分を感じ取りたいということが目的であり、それがどんなことでもいいように思えます。つまり、他の子たちは金色の券こそ「目的」なのですが、チャーリーにとっては金色の券は「手段」なのです。工場内部に入り、チョコレート製造の秘密を見たいという純粋な好奇心と夢を叶えるために必要だったのが金色の券でした。夢を持つこととそれを叶えること。単に貧乏な子が富を得るということだけではないお話です。チャーリーはチョコレート工場という「富」を得たのではなく、チョコレート製造の秘密を知るという「夢」を叶えた、ということなのでしょうね。田村隆一氏がつけたタイトルはそういうことなのかもしれません。(というわけで、お菓子屋のおじさんが持って帰るように言う場面と、家に帰ってお金なんて毎日印刷されているからいらない、という場面が気に入っています。夢を安易にお金に換えてしまわないっていいですね)
 言葉遊びもうまく映像になっていて「鞭打ち(ホイップ)クリーム」のしゃれが気に入りました。ウンパ・ルンパの歌は凄いですね〜。ダールの作詞とエンドロールに出ていましたが、原文通りの歌なのでしょうか? 読んでみたくなりました。(というか、英語版注文しました。ついでに旧訳・新訳も比べてみています。なるほど〜と思いつつ、この比較についてはまた今度記事にしてみたいです)
 
 DVDを観ながら、映画と同じチョコレートを頂いたときのことを思い出しました。届いた封筒の中に映画と同じあの赤のワンカチョコレートが入っていたのときには「ああ、こんなのがあるんだ」(映画を観てなかったので)と普通に嬉しく思いました。チョコレート工場好きのわたしに選んでくれたんだ、と思いつつチョコレートの紙を破いて少し食べようとすると、中から金色の券が! チョコレート会社の演出なのでしょうが、まさか金の券が入っているとは思わなかったです。拾ったお金でチョコを買って食べたチャーリーと同じくらい驚きました。(みずきさん、あのときは本当にありがとう)その券を持って工場でウンパ・ルンパの歌と踊りを堪能したような、そういうDVDでした。

おまけ:娘(6才)が原作の本を読んでみて一言。「ねえ、ワンカさん『ごりょうりん』って言えてるけど!」
posted by kmy at 19:35| Comment(4) | TrackBack(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あっ!kmyさんと私のもう一つの共通点。私も映画苦手なんですよ〜。同じく画面に向かって集中できないのと、視覚情報を処理するのが下手(つまり筋がよくわからない)、それから効果音がうるさくてダメなんです。

映画が苦手だなんて珍しがられるんですけど。
Posted by ビアンカ at 2006年03月22日 21:42
ビアンカさん、映画が苦手と聞いてちょっとほっとしました(笑)
あまりいないですよね、映画の好きな方はたくさんいらっしゃるのに。筋がよくわからないというのは同感かもしれません。2時間きっちり映画の世界に浸っていないとわからなくなってしまいます……どうでもいい小物とかに気を取られて台詞を聞きそびれたりします。
しかも、原作がある作品だと楽しみにしていた場面はたいていカットされています(笑)
Posted by kmy at 2006年03月23日 15:00
きょう「貴種願望」という言葉を知りました(覚えたので早速使う)。
「自分だけは特別な人間なんだという感覚」なのだそうです。
金色の券はそういうひとの心をうまくくすぐってますよね。
わたしはまだこの映画観ていないのですが、ダールの本はどれも、ひとりひとりが特別な存在なんだと言ってくれてるような気がします。
だから次から次へと読みたくなるのかも知れませんね。
Posted by ヤヤー at 2006年03月23日 22:05
「自分だけは特別」そうですね、その特別なことを証明するのが「金色の券」。これをいかに獲得するか、ということで躍起になっている子どもたちを描いていますね。大人になって読むと様々なことの比喩だと感じます。わたしもとっても欲しいですけど(笑)

ダールの本ってシニカルですね。そしてラストも驚く。ええ?そうなの、いいの、っていうのも多いですね。親子のあり方も上手くいかなければ根本から覆したらどう?とか、元の生活とは違ってもそれはそれでいいのかも、と思わせたりしますね。子どものころに何冊か読みましたが、「チョコレート」以外のものは結構忘れているので、読み返している最中です。
Posted by kmy at 2006年03月24日 20:51
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