2006年03月10日

『じゅみょう』(KHM176)

 えー、全然充実していないグリム童話カテゴリです。少し前の「本当は怖い」だとか、「残酷」だとかいう部分でクローズアップされブームとして取り上げられる以前から(つまり、子どものときからってことです、簡単に言えば)グリム童話は好きでした。もう一度読み返したいと思ったときに買ったのが『完訳 グリム童話集』(金田鬼一訳 岩波文庫)。これには全てのお話が収録されている上に、訳者による注で理解が深まります。ところで、『じゅみょう』というお話を知っていますか? それでは簡単にあらすじを。
 あるとき、神さまが世界を作ったあとに動物たちを呼んで寿命を決めます。最初にロバが来ます。30年やろうと言いますが、ロバは長い年月荷物を運んでぶたれたりけられたりしてはたまらないのでそんなにいらない、というのです。そこでロバには18年やりました。
 次にやってきたのが犬。犬に30年やろうと言うと、長生きしても吠えて走って唸っているだけなのでと犬が言うので、犬には12年授けます。
 そして、サル。サルに30年やろうと言うと、人間の道化としてへんてこな顔をしたり、おかしなことをやらされたりするだけで、30年も辛抱できない、と言うのでサルには10年授けます。
 最後に人間がやってきました。人間にも30年やろうと言いますが、人間は「短いですねえ」と言います。「自分の家を建てて、木を植えて花が咲いてこれからってときに死ぬなんて。どうかじゅみょうをのばしてください」と言うのです。そこで、
「ロバの18年をやろう」
「まだ足りません」
「犬の12年もあげよう」
「まだ少なすぎます」
「ではサルの10年もやるがこれ以上はやれないぞ」
 と言われても人間はまだまだ満足できなかったのです。
 そんなわけで人間は70年生きることになっています。はじめの30年は本当の人間の年で体も健やかで面白おかしく、生きていることが嬉しいのですが、次にやってくるのがロバの18年。後から後から重荷を背負わされ、一生懸命働かなくてはならないのです。それから犬の12年。隅っこでうーうー唸って暮らしていますが、喰いつく歯ももうありません。そしてサルの10年がやってきて終わります。頭の働きが鈍くなり、おろかなことをやって子どもたちに笑われるのです。

 なかなかシニカルなお話で笑ってしまうのですけど、はっと気がつくと、わたし今ロバの18年だった〜!(笑)この人間の不満たらたらな様子は読んでいておかしいものです。年をとることがどうこう、というよりももともと欲深い人間。欲を出し過ぎても仕方ないぞ、というお話かもしれません。

 ところで、サルの30年分の10年しかもらえなかったけども、残りの10年はいったいどこに? そのあたりに落ちていたら拾っておく? それとも?(原文でも翻訳でも確認しましたが、もらったのは10年です)
posted by kmy at 18:33| Comment(2) | TrackBack(0) | グリム(童話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
子どもの頃はグリムもアンデルセンもイソップもごちゃ混ぜでしたが(笑)、やっと区別がつくようになって来ました。
これも面白いお話ですね。
kmyさんの再話で、ようやっとアタマに入りました。
思い出したのはナーサリーライムズの『バビロンまでは何マイル』。


How many miles to Babylon?
Threescore miles and ten.
Can I get there by candle-light?
Yes, and back again.
If your heels are nimble and light,
You may get there by candle-light.

バビロンまでは何マイル?
60マイルと10マイル
夕方までには行けるかな?
行って戻って来れますよ。
足が速くてすばしっこければ、
夕方までにはつけるはず。


「60と10マイル」は、やはり人生の70年を表すのだとか。
"score "は20。つまり“three score"で60年です。
聖書詩編にある「我らが寿命は70年」“three score years and ten”に由来するのだそうです。

グリムのこのお話も、詩編を元に書かれているのでしょうか。
Posted by ヤヤー at 2006年03月13日 21:37
ヤヤーさん、ナーサリーライムズの引用、ありがとうございます。思わず家にあるので確認したりして。
聖書的には70年が寿命なのだな、と改めて思いました。日本的には昔読んだ井原西鶴の辞世の句からなんとなくわたしは人間の寿命は50年というイメージを持っていたのです。
完全なる口承文芸ではなく、グリム兄弟自身の手によって書き加えられ、編集されたとはいえ、ドイツの民衆が伝えてきた物語としての要素として、こうした聖書の影響はきっとあったのではないかな、と思います。完訳のグリム童話集には聖者伝説もあります。(詳しくなくてすみません〜)
Posted by kmy at 2006年03月14日 14:33
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