2009年12月06日

『追想五断章』

追想五断章
米澤 穂信
集英社 ( 2009-08 )
ISBN: 9784087713046
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


 主人公菅生芳光は北里可南子という女性に頼まれ、彼女の父親が生前書いたという小説5篇を探すことを請け負う。その5篇はリドルストーリーの形をとっているといい、結末だけが彼女の家に残されていたという。この「リドルストーリー」に惹かれて読み始めましたが、かなり好きです。リドルストーリー自体に興味があり、好きなのですが、それを作中作として用いつつも、その小説自体の持つ意味や女性と父親の関係、失われた事件の真相、そして主人公芳光自身の境遇や流れなどが混ざり合ってとてもいい小説でした。気に入っています。

 普通のリドルストーリーと呼ばれるものは結末でばっさり切られて終わる物語で、これはどういう意味だったのだろう、結局どちらを選んだのだろう?と読者の想像に委ねて終わるもので、そのどちらともつかない不思議な感じが気に入っていくつか読んでいます。そんな中、この作中作のリドルストーリーは結末の一行というのが別個で存在し、それでラストがこうなったのだとわかるのですが、実際にはこの結末の一行にも秘密が隠されているあたりがうまく出来ています。リドルストーリーは古典的な言い伝え、伝説めいた雰囲気で書かれていて、舞台を外国としているため、深遠な知識があって書かれているように感じます。それを巡る芳光は家業の行き詰まりから大学を休学し、親戚の古書店に住み込んでいる主人公(少し時代は前で平成の初めころ)には未来が明るいわけではなく、現在もぼんやりと定まらない感じがします。こうしたところがまた気に入るというか、幸せそうとか、後で幸運が訪れるという雰囲気がまったくない感じは好きです。安易な展開ではなく、やはり少し重苦しい感じがあるのですが、それだけに結局その後はどうなるのか、あれこれ主人公のその後も考えたりします。

 時代が少し遡る設定なので、ネットもなく携帯もなく、その中でマニアックな同人誌を探したりして、つてを辿る、図書館に行くというあたりの描写もなんだかいいなあ、と思います。最近お気に入りです。
posted by kmy at 19:00| Comment(2) | TrackBack(1) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しているうちにイヴになっちゃいましたー(長音記号1)
この本、ただ今図書館で予約中です。来年ですね私が読むことになるのは。

私の中で米澤さんの作品は とても面白いと思うものと タイプじゃないわと思うもの 両極端に別れます。こちらは前者の予感♪。 楽しみだわ〜。

というわけでメリークリスマス Kmyさん。
来年も雨木の訪問者でいさせてくださいね。
Posted by めぐりん at 2009年12月24日 18:15
めぐりんさん、メリークリスマス♪
青春小説(?)も書かれている作者さんのようですよね。そちらはちょっと読んでいないのというか、なかなか手がでないのですが、最近の2作はわたしの好みでした。
リドルストーリー、大好きです。ちょっと大人になりかけの主人公が前途が暗い感じがまたいいかも。

めぐりんさんのブログもいつも拝見しております。
インフルエンザ、お大事に。こじらせませんよう。
Posted by kmy at 2009年12月24日 22:42
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/134872711
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック

秘められた リドルストーリー
Excerpt: 小説「追想五断章」を読みました。 著書は 米澤 穂信 5つのリドルストーリーを探す依頼を受けた古書店アルバイトの芳光 その小説の著者の過去が関わっていき・・・ これは 面白かった まず 設定がな..
Weblog: 笑う学生の生活
Tracked: 2011-02-17 20:41