2009年11月17日

『黒い小屋のひみつ』



 nemurikoさんに紹介していただいた本。タイトルが気になるので、さっそく図書館で予約して借りてきました。
 UFO騒ぎのあと、原っぱに現れた黒い小屋。団地の仲良し四人組、りょうたくん、トモくん、チアキちゃん、はじめくんは黒い小屋を見に行きます。中に入ると扉が開かなくなって、どんどんと地下へ下っていくようです。奥へ進むたびに注意書きが現れます。「もちものをぜんぶ下のはこへいれてください」「住所と名前を教えてください」という通路を進んでいくとゲームの部屋、その続きにケーキがありました。それを食べた後にはなぜかはらっぱに出てきていましたが、同時にケーキを食べた子どもたちは変わってしまいました。黒い小屋のこともすっかり忘れ、遊びも忘れ、友達と話すこともしなくなるのです。

 この物語では小屋でケーキが苦手で食べなかったりょうたくんだけが黒い小屋のことを覚えていて、友達がみんな以前とすっかり変わってしまったのをいぶかしく思い、小屋の秘密を探るお話です。そこに登場するのが同じ団地に住む養護学校へ通うタカオくん。タカオくんとの交流によりだんだんと謎が解き明かされていきます。
 それにしても校長先生や親たちは、都合が悪いと「病気なのでは?」と疑い、本当のことでも「嘘をついていました、ごめんなさい」と言えば素直に謝るのはいいことだと納得します。面倒なことは避けたい、都合よく処理できればそれでいいい、そんな側面が目に付きます。そんな中にも本当に子どものことを考え、子どもを信じることのできる大人も出てくるのですが、大人の嫌な面を改めて思い起こさせられます。

 結局、黒い小屋のことは、最初から答えが示されているようなものではありますが、その目的と黒い小屋の陰謀から子どもたちを救う作戦というのが面白く、一気に読んでしまいました。この黒い小屋の凄いところは、大人には見えないが、子どもたちには見えるというものです。子ども時代にしか見えないものというのは本当に大切なものなのかもしれません。それをどう判断するかというのも、子ども自身が考え抜き選び取っていく、それが黒い小屋に隠されたものだと感じます。大人の思う「よい子」がよい大人になるのではない、自分で見えるものを自分で考える、そういうのが大事なのでしょうね。

 この本が出版されてから20年近く経ちます。世の中はどんな風に変わったのか、それとも変わらないのか……その当時はまだ親ではなかったわたしも、この物語の親のようになってはいないだろうかとふと考えてしまいました。
posted by kmy at 20:20| Comment(3) | TrackBack(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
面白く読んでもらえたようで、よかったです。
kmyさんが言われるように、自分で考えないといけないよ。うかうかしてると、おかしなことになるぞと語りかけられているような作品です。
作風は違いますが、佐野美津男とも重なるところありますね。

丘修三さんは、他に「神々の住む深い森の中で」もおすすめです。
ただ、いま言った本たちはどんどん絶版になっていきます。なぜなんでしょうね。
Posted by nemuriko at 2009年11月19日 23:18
面白そうですね。実際に読んでいないのでなんともいえませんが、子どもの頃読んだ少年向けSFみたいですね。ちょっとコワそうで・・・

私も子どものころ団地に住んでいたので情景が思い浮かぶようです。あの頃(70年代)はケーキってちょっと高級なお菓子で月に1度、お父さんの給料日のあとじゃなきゃ食べられない感じでしたね。
Posted by ぴぐもん at 2009年11月20日 23:21
nemurikoさん
面白く読みました。少し古い児童書のほうが考えさせられるような、そういうものがありますよね。
最近のものはあまり知りませんが赤木かん子さんのどこかの書評で、読み継がれるような児童書が少ないと書いてあったと思います。
他のお勧めの本も読んでみたいと思います。
ただ、行く図書館は蔵書が少ないので、県立図書館からの貸し出しでした。もともとあまり読まれていないのでしょうか。
またいろいろ本をご紹介下さい。


ぴぐもんさん
子どもSF全集のものと通じるような感じもありました。未来に関して悲観的ではありますが、それでも未来を担う子どもによっては変わるものなのだ、ということを感じる物語でした。
そういえば、今はコンビニでもケーキが買えますが、昔はケーキ屋さんで特別なときしか買いませんでしたね。ケーキというと誕生日かクリスマスというイメージでしたが、今はそうでもないかもしれませんね。
Posted by kmy at 2009年11月21日 19:22
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