2006年02月05日

『ドローセルマイアーの人形劇場』

4251066545ドローセルマイアーの人形劇場 (グリーンフィールド)
斉藤 洋
あかね書房 1997-03

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 この物語、翻訳作品ではありませんが、主人公もドイツ人、舞台もドイツです。日本の作家がドイツを舞台にドイツ人を登場させるのが最初ふしぎに感じましたが、このちょっとふしぎな物語にすんなりと入っていってしまいます。
 高校の数学教師をしているエルンスト。かつて世界の真理のように思えた数学にも情熱はわかず、そして数学に大して興味を持っていない高校生に教えることも大したことがないと感じる毎日。ある水曜日、ドローセルマイアーという人形劇をしている老人に出会い、曜日を間違えて時間が余っていたエルンストはドローセルマイアー氏の荷物運びを手伝い、そして人形劇を見るのです。ドローセルマイアーの人形劇との出会いはエルンストにとって「運命」との出会いでもありました。

 この人形劇、変わっています。ドローセルマイアー氏は何体もの人形を同時に操り、さらに様々な声色を出しているようなのです。エルンストは思わず魅入ってしまいます。そしてゼルペンティーナという女の人形にエルンストはどこかで会ったような気がしてならないのです。エルンストが導かれていく運命について、作者自身があとがきで語っていることばが印象に残ります。

 だれしも、運命が扉をたたく時というのがあるのだと思う。そのノックの音に気がつかなければ、それはそれでしかたがない。しかし、気づいていながら、気づかぬふりをすることのほうが多いのではなかろうか。P147


 いつもという毎日の中でとある「契機」が訪れるとき、どう対応するか非常に悩むことがあります。無かったら無かったでまたそのまま「いつも」の時間が流れていくのだけど、やってみようか、やめておこうか、もしかしたら、これがきっかけになるかもしれない。カバー見返しにかかれていることば「迷い続けて、一生を終えるのだ。それなら……」(本文にも出てきます)、迷い続けることが生きているということなのかもしれません。迷い込みそうなときには読み返したくなります。
posted by kmy at 19:35| Comment(3) | TrackBack(0) | 斉藤洋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あ!ドイツの本!
と、kmyさんが私の日記のコメントに書いてくださったことと照らし合わせてにっこしりてしまいました。

ほんと、生きている中で合図のようなもの、きっかけはあらゆるところに転がっているのでしょうね。
空はいつも美しいのに、普段なかなかそれに気づけないように。

そのなにかに気づけるこころもちに、自分を保つこと。それはとっても難しいけれど、こうして本を読むことだったり、人と触れ合うことだったり、さまざまな刺激を受けながら、迷いながらでいいのかなあ、って思います。
Posted by クロエ at 2006年02月06日 00:40
kmyさん、斉藤洋さんづいてますね。
わたしがこのひとを好きなのは、やっぱり何気ないようでいてたいせつなことをちゃんと書いてくれるからだと思います。
普段は意識していないけど、言われてみれば「ああそうか、そうだよねえ」と頷けるような。
迷いながら決めながら生きているんですよね、わたしたちって。
さしあたってはきょうの晩ごはんかな。

ここからは余談ですが(笑)、女子・女性は同じ作者の作品を読む傾向が強く、男子・男性は同じテーマの作品を読む傾向が強いのだそうです。
わたしはこれ当てはまっているほうです。子どもの頃から(゚∇^*) テヘ♪
Posted by ヤヤー at 2006年02月06日 14:11
クロエさん、あらゆるところが実は自分の「想い」と結びついていく、そう思います。迷いながらそのつながりを辿っているように思います。
「平穏無事」な生活を望んでしまいますが、変化のない生活というのはありえない……人とつながること、惹かれていくこと、大切にしていきたいと思っています。
この物語(というか斉藤洋さんの本)を読むと、E.T.A.ホフマンを読まなくては!と思ってしまうのですが、これも長年の課題です。

ヤヤーさん、ばれていますね(笑) 斉藤さんの本は結構前から好きなのですが、同じ本を繰り返し読むことが多いかも。代表作『ルドルフ』シリーズは実は読んでいません。
余談、確かに当てはまっています!
同じテーマといえば、ファンタジーとかミステリーとかですよね。そうした分類ではなく、わたしはやっぱり作者の棚で探すことが多いです。家にある本も同じ作者で買い集めています。(ハッケとか、オールズバーグとか……昨年は村上春樹さんをどどっとと揃えてしましました(笑))
Posted by kmy at 2006年02月07日 10:00
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