2009年02月24日

『少年のブルース』

少年のブルース (偕成社文庫)
那須 正幹
偕成社 ( 1993-01 )
ISBN: 9784036519408
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


 いわゆるショート・ショートという短編集ですが、星新一のテイストとはちょっと違います。それは児童文学作家が書いているというのが大きいのかもしれません。星新一氏の作品にも子どもが登場しますが、こちらは学校、放課後、自分の家、遊び場などを題材にした子どもの生活に密着しつつ、子ども特有の考えや感じ方が反映されているようなものも多いところが魅力です。子どもを題材としたものだけではなく、社会生活やSFや科学、怪談、昔話を元にしたものなどバラエティに富み、本当に楽しく読みました。


 ブラックな作品があるかと思えば、しんみり感じ入ったりするものもあります。

「自転車」
子どもが自転車を欲しがり、母親が買い与える。その父親は子どものころ自転車を買えなかったことを思い出しながら子どもに乗り方をおしえるものの――これは大人になってからふと思う、子どものころの苦い記憶をつつくような作品です。「詩人先生」もこの分野かな。

「三徳老師の伝説」
昔、三徳老師というえらい僧がいて、貧しいものや病気のものに背中に背負った袋から金品や薬を与えていたという――これは「サントクロウシ」の読み方から想像するのはもちろん、という話ですが、笑ってしまいます。「桃太郎の誕生」なんかも楽しいです。

「移植時代」
指を切っちゃったときに貼るのは絆創膏、という時代から進歩し、スペアフィンガーで治す時代。体のあちこちが取替え可能となった時代の子どもたち。SFもの。

「ああ、友情」
こういう作品、奇妙な残酷さというかが感じられて好きなのです。学校に来なくなった同級生。学級会を開き、友だちを励ます事にきまります。「明日から学校へ来いよ、クラスメートじゃないか」「ありがとう」と言って翌日から学校へ来るものの、また来なくなる子ども。裏切られた気持ち、あんなやつほっとけということに。それから起こった出来事は――この変わる気持ちというものを的確に捉えていると感じます。


 偕成社『冬ものがたり』に1篇出ていたのが面白かったので借りてきたのですが、ちょっとした合間にふと読みたくなるものばかり。買って家においておきたいな。



 このシリーズ、いまのところ「冬」がいちばん面白いです。
 
posted by kmy at 20:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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