2009年02月14日

『ベーコン』

ベーコン
井上 荒野
集英社 ( 2007-10 )
ISBN: 9784087748918
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


 タイトルに惹かれて借りた本。これはいいなあ、と思います。もともと食べ物にまつわる話というのは好きですが、いかにもグルメな感じというのではなく、とある食べ物にはこんな記憶が蘇る、という雰囲気の短編集。
 その食べるということに絡むのは男女関係。主人公として語る人物が直接その男女関係に身をおいているというのではなく、傍観者として身近な人物を見つめているという描き方のものいくつかあります。当事者ではないけども、ある二人の関係、そこに介在していた食べ物の記憶。食べるという行為がつなぐもの。一瞬の出来事だったり、なぜかほっとした気持ちになったり、そして痛みを感じたり。誰かと何かを食べること、それは誰とでもできることではなく、特別な誰かであり、心に刻む一場面を残すことがある。その一場面は食べ物とともに、余韻を残す感じです。「ほうとう」と「目玉焼き、トーストにのっけて」は結構痛みを感じる。違う違う、そうじゃないんだけど、と言いたくなるような気持ち。「煮こごり」は連れの中学生がいい感じなのと意外に嫉妬ではなく暖かい気持ちになるような感触。「大人のカツサンド」「父の水餃子」「ベーコン」の3作品はどれも傍観者の場面。自分の親という立場の人に起こった出来事と結びつく食べ物。伺い知る、思い出す、思いを巡らす、そういう作品。どれもちょっとどきっとさせられるような短編です。

収録作品タイトル
「ほうとう」
「クリスマスのミートパイ」
「アイリッシュ・シチュー」
「大人のカツサンド」
「煮こごり」
「ゆで卵のキーマカレー」」
「父の水餃子」
「目玉焼き、トーストにのっけて」
「ベーコン」

posted by kmy at 17:30| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
変わった題名ですね。それに惹かれたkmyさんの気持ちがわかる気がします。
「ほうとう」というタイトルがあるのは、作者はもしかしたら、現在私が住んでいる県の方かしら、などとも考えました。

誰かと何かを食べること、それは誰とでもできることではなく、特別な誰かであり、心に刻む一場面を残すことがある。

kmyさんのこの文章を読んで、若い頃にした苦い恋(私にもあったのね・・・)を思い出しました。
その人があまりにもかっこよすぎて、私はすっかり緊張してしまい、食事中殆ど食べ物が喉に通りませんでした。
結局、疲れすぎて早々と別れてしまい・・・。
その後に今の夫に出会ったのですが、つきあっている間はもう、食べてばかりいましたね。
食べた記憶しかない、くらい。
でも、がつがつ食べながら、ああこの人と結婚するかも、なんてちらっと思ったのを覚えています。

お恥ずかしい体験話ですみません。
kmyさんの選ばれる本はいつもとても興味深いです。でも、こういう面白そうな本が近くの図書館にあるかしら・・・、とも思います。
足繁く図書館に行かれるのですか?
その図書館、蔵書が充実していて、うらやましいです!!
Posted by Helenaヘレナ at 2009年02月18日 09:29
ヘレナさん
題名と装丁に惹かれてなんとなく借りてきました。たまにはこういう選び方でいい本に出会うこともありますね。
わたしもこの本を読んでいたら、いろいろなことを思い出しました。
自分のこととは全く違うのに、なぜか自分のことを思い出す小説というのがあって、これもその一つだなと思いました。
食べ物の記憶って鮮明に残っています。そしてその横にはいつも誰かがいて……。

ヘレナさんの思い出のひとコマにも、食べ物の記憶があったのですね。こういうことがあった、なんてなかなか話す機会はなくとも、時折思い出すさまざまな記憶の中に、やはり食べ物は登場します。
「ほうとう」の有名なところ、とはちょっと違うお話でした。どれも作り手がいて、食べる人がいて、見えるもの、感じること、そういうお話です。恋愛というか、恋愛から発展してみたいな感じです。

図書館は近くなくて、車で30分かかる隣の市(県)まで行っています。
2週間という期限で借りると通ってしまいます。
ただ、ヘレナさんが思っているよりは蔵書はかなり少ないところなのです。最近はリクエストすると、他館から取り寄せてくれるので、それを利用しています。
井上荒野さんの本は数冊ありました♪

Posted by kmy at 2009年02月19日 20:42
私も最近読んでトーストに目玉焼きのっけてしまいました。
食べ物と思い出とまわりの係わりが予想外でした。

そういえば、小学生の時に初めて本の中の食べ物で憧れたのは「ボンボン」でした。
ボンボン。名前も不思議で美味しそうでした。
でも海外土産で頂いたウイスキーボンボンは不味かった・・・ショックでした。
いまならいろいろ種類があるってわかるけどね♪
Posted by 香香 at 2009年02月25日 20:25
香香さん
食べ物だけが目立ってというわけではなく、各々の物語のエピソードはなかなかどきっとするようなものがあります。
目玉焼きの話、なんだか妙に気になる感じです。自分に言い聞かせるようなラストが、ああ、あるなあ、って感じです。
トーストと目玉焼き、おいしそうなんだけど、話はちょっと切ない感じ。

子どものころ、本の中の食べ物が妙においしそうで、実際はどうなんだろう?とわたしもよく思ったことがあります。
響きではないですが、アフリカ民話でゾウのお腹の中でキャンプをしてゾウの肉を焼いて食べるのがおいしそうでした。、今考えると、微妙な感じがします。
物語で読む料理って、なんであんなにおいしそうなんでしょうね(笑)
Posted by kmy at 2009年02月26日 19:43
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