2006年01月07日

私的『プラリネク』読書メモ

 昨年末に『プラリネク』を読了しました。物凄く気になることばがあり、いったいどうやって訳したんだろう?と確かめずにはいられなくなり、図書館で邦訳を借りて読んでみました。
 この物語のいいところは三つあるんです。ひとつめ。これは翻訳で読んでも「そうそう」と頷き、心に温かいものが残るハッケ流「贈り物考」。ふたつめ。モミの木を連想させる常緑色のカバーに描かれたゾーヴァの絵。そして三つめ。なーるほど、とあとで気がつく(気がつくのが遅かったのはわたしだけかも?)ハッケの言葉遊びの混じった文章。
 
 ひとつめのいいところ「贈り物考」。贈り物をするときというのは贈る相手のことを十分、十二分以上考えるものです。その考えた結果が贈り物となり相手のもとへ行くのです。
贈り物の中では、二人の人が出会う。よい贈り物なら二人の心が出会う。

『プラリネク』アクセル・ハッケ作 ミヒャエル・ゾーヴァ絵 
三浦美紀子訳 三修社 P18

 贈り物として作られた「プラリネク」という紙製のロボット。このロボットを中心に起こるクリスマス前の一事件の物語です。
 ふたつめのいいところ、ゾーヴァの挿絵では一番最初の挿絵は読み返して二度目に見ると嬉しくなる絵が描かれています。思わずくすっと笑えるんです。
 三つめのいいところ、言葉遊びについては詳しく書き記すことにしました。以下ネタばれになります。読書メモです。

 個人的にふと思ったことをメモしておきますので、誰の役にも立ちませんが、自分で読み返すのには役立つかと思う記事を書きますのでご了承ください。

 最初に邦訳P12で「おーーー」「おーーーーぉ」というのがあります。何か残念がる声だということですが、原書ではP10で"Oooooh"とか"Ooooch"になっています。確かに「おーーー」ですけど、残念がる声って日本語だと「あーあ」とか「あーーーぁ」とかわたしとしては「あ」系な気がします。「あー残念」と言うけど、わたしは「おー残念」とは言わないな。「お」だと「おーすごい」のような感嘆系になりそうです。個人的には。

 さて、プラリネクのロボット語は箱に書かれていた外国語や原材料、注意書きなどを混ぜてしゃべるものでした。特に外国語に苦戦しました。何を言っているのかさっぱり 脱塩ホエイパウダー わかりません、なのですから。辞書を引いても出ていないのであれこれ検索しました。
外国語は翻訳者のあとがきで「ポーランド語とオランダ語」だと後でわかりました。メモです。
 (ポ)→ポーランド語 (オ)→オランダ語

P14プラリンキ (原書P11 pralinki)
(ポ)pralinek pralinkaの変化形と思われる。
pralinka -ki, -ki-nce-nek{f}, プラリーヌ, 砂糖をまぶしたアーモンド

P19マスウォ(原書P15 maslo )
(ポ)masl~o {n}, バター / bul~ka z masl~em朝飯前

カカオウェ kakawe →kakaowyが活用したもの {p}, ココアの

ポーランド語辞書が参考になります。

siaasappel (オ) オレンジ
オランダ語はこちらを参考にしました。
marsepein  (オ) マジパン
マジパンについてはこちらを見ました。
Melkchocolade (オ)ミルクチョコレートのオランダ語
Josのオランダ語講座

 この中でMelkchokoladeはきっとドイツの読者だと連想が働くのでしょうね。melkenは「乳を搾る」という動詞。だからmelkenとchokolade(ドイツ語だとSchokoladeと書くのでしょうが、音だけ聞くとどちらもきっとショコラーデと聞こえるのではないかと思います)が結びつくと日本語なら「チョコ搾り」な感じに聞こえるのではないかと思います。だから「乳牛からチョコレートクリームを絞っている」感じがするのでしょうね、たぶん。
 プラリネク語は慣れてくるとまねしたくなります。この本読むのは 希望小売価格 結構大変だけど面白いです、なんていう風にね。

 クリスマスらしい言葉遊びが「モミの木」の替え歌。"O Tannenbaum"と替え歌を比較してみます。
O Tannenbaum, O Tannenbaum,        
Wie treu sind deine Blätter.
Du grünst nicht nur zur Sommerzeit,
Nein auch im Winter wenn es schneit.
O Tannenbaum, O Tannenbaum,
Wie grün sind deine Blätter!

歌詞とメロディ(Melodie)はこちら

"O Ruhutschbahn, o Ruhutschbahn!
Wie glatt ist dies Gländer!
Wir sausen jetzt zum Saft hinab
und bring'n damit den Kopf auf Trab!
O Ruhutschbahn, o Ruhutschbahn"
Wie glatt ist dies' Gländer!"

 よくわからない部分がいくつかあって、ドイツ語版の5行目に引用符の終りの記号(ここでは「"」にしてしまいました)があるのがまずよくわからないのと、最後の行のdies'の「'」がわからないのと……。いつかわかるときもあるかも。諦めよう。韻も踏んでいます。ドイツ語の歌詞に載せて口ずさんじゃいそうな気がします。日本語訳も歌に乗るように訳されているようです。

 わたしにとってこの物語の最大の面白さは"Saft"にありました。中国製の頭は電池が欲しい、Saftが欲しいとわめきました。Saftって? 辞書を引いてみると、あー、これこれ「電気」のことなんだろうなと気がつきます。電池が無いし「電気」も無いから動けない。うんうん、なるほどと思って読み進みます。中国頭のためにプラリネク、ゴロングボング、ディーノはSaftを探しに行くのです。ディーノはSaftのありかを知っているようでキッチンへ向かいます。目指すは冷蔵庫。ハッケといえば冷蔵庫という連想が働きますが、冷蔵庫の中に「Saft=電気」があるの? 確かに電気通じているけど、ドイツの冷蔵庫にバッテリーパックがあるとか? いや、冷蔵庫の背面から電気を取るとか? 勝手な想像を働かせながら読み進めていくと、"Das Grosse, Hohe, Viereckige, das ist Saft!" その大きくて高くて四角いもの、それがSaftだ!とゴロングボングが言うのです。大きくて高くて四角い「電気」? 冷蔵庫に電気なんてあったっけ?とものすごーく不思議になってまったく訳がわからなくなるのですが、はっと気がつくんです。Saftって「ジュース」? そうなんです。電気とジュースは同じ単語"Saft"だったのです。ゴロングボングの勘違いが絶妙。だから冷蔵庫に行くんだ、と気がついたときには「読んでみてよかった!」としみじみ思ったのでした。原書を読む楽しみってこういうところです。気がつくのが少々遅いのは、仕方ないのですけど。この訳が気になって翻訳版を図書館で借りました。
Saft...Stoooom ...keiiiin Saft meeeehr, Baaaatteriiien ...Stoooom...Saaahaaaftttt..."
原書本 P23

「充電……でんきぃぃぃぃ……じゅうでん、もぉぉぉぉう、なぁぁぁぁい。バッテリィィィィー……でんきぃぃぃぃ……ジューーーウーーースーーー……」
翻訳本 P33


 じゅうでん→ジュースと「じゅう」つながりだけ訳してみた、ということでした。難しいところです。こういうののセンスが翻訳者のセンスなんでしょうね。
posted by kmy at 10:03| Comment(2) | TrackBack(0) | ハッケ&ゾーヴァ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ははあ・・・。
わたしも邦訳は楽しく読みましたが、やはり原書は魅力的ですねえ。
kmyさんの記事を読んで、そそられてしまいました。

プラリネク語はいちいち原材料名とかが挟まるので、面白く真似できそうだと思いました。
こういうのって、子どもとやるとすぐマスターされちゃって、考えてるうちに会話について行けなくなっちゃうんですよね。
そこも面白いんですけど(笑)。

きっとわたしの住んでるとこよりも、kmyさんのところは雪が深いかも知れませんね。お互いに身体に気をつけて、雪との生活に折り合いを付けたいものですね。
食べたり働いたりする心配がなければ、このままお籠りしててもいいんだけどなあ、などとバカなことを考えたりしています。
人間も、冬眠できたらいいのになあ。
Posted by ヤヤー at 2006年01月08日 21:24
ヤヤーさん、実際に外国生活をするとかしたいとかいう希望は全然ないのですが、物語として「外国」へ行くことはとても好きです。
ときどき挟まる材料、注意書きなどのことばにかなり戸惑いました。昨年意を決して購入した電子辞書がまったく役に立たず、結局学生時代の辞書を出してはこれはたぶんこういうこと?と悩みながら読みました。筋に影響は少ないのかもしれませんが、こういうことばってわかると妙に惹き付けられます。

雪のご心配ありがとうございます。年末から天気が続いて、うちの前の道路は雪が溶けました。
(豪雪地帯ではないので、例年になく降りましたが、今のところ小康状態。道路は結構凍ってカチカチです)
冬眠、いいですね〜。3日くらいでもいいので、暖かい毛布にでも包まって寝ていたいです。
Posted by kmy at 2006年01月09日 10:00
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