2009年01月21日

『こころ』


 夏目漱石の本は読もう読もうと思いつつ、何年も積読状態でした。このちくま文庫の『こころ』はいついつどこで買ったか思い出せません。古そうなので古本で何かとついでに買っておこうか、という本だったようです。だいたいの本はいつどこで買ったか覚えているのに、この本だけはどうも思い出せません。ただ、実家から持ってきた文学全集の「夏目漱石」に入っていて、わざわざ買うほどじゃなかった、という覚えがあって読む気が失せたまま置いておいた本でした。
 あらすじというか、だいたいこういうような話らしいというのは知っていましたが、じっくり読むと本当に心に響く小説でした。


 「こころ」というタイトルの通り、他人から人間は見えている部分はほんの一部で、本当に当人が感じてそのときどのような思いで生きているかというのは、わからないもの。それだけに、その心の中を打ち明けるというのは、打ち明ける当人にとってもとても重く苦しいものであり、そうしたものを知るというのもとても重いものだと感じます。この小説では死、信頼と不信、友情と愛、いろいろな場面が出てきます。そのときではどうすればよかったのか、ということに簡単には答えがでません。うまくいく方法はなかったのか、考えるほどに難しい状況が出てきます。その重みを背負って生きている「先生」が下した選択、「私」と「先生」はどうなったのか。語られずに終わるところで、読者にあとは委ねられているように感じます。
 生きていくと、いろいろな出来事がある、そして答えが出ない難しい問題がある。それはいつでも自分とかかわりの深い人間との間で起こるものであり、悩み、苦しむ。決して解決しない問題をいくつか残しては生きていく、もしくは生きていかないことを選ぶのかもしれない。いろいろ考えてしまうなあ。自分が今まで出会って、別れて、という場面を思い起こさせます。自分と全く違う人生を歩んでいるはずなのに、なぜか近く感じ、生きてきたこと、生きていることを思い起こさせる小説です。今読んでちょうどよかったと想う本だと感じました。20代で読んでいたら、今ほど心に響かなかったかもしれない、そう思いました。
 
posted by kmy at 21:51| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このところ漱石に関して書かれた本を何冊か読む機会があったので、わたしもちゃんと彼の著作を読み直したほうがいいのではないかと思っています。
漱石は胃潰瘍が悪化して亡くなったことは知っていましたが、そのとき何に悩み苦しんでいたのか考えたことはありませんでした。
芥川龍之介も忙しすぎる生活から鬱病になっていた可能性が高いと知って明治の文豪たちに興味が湧いてきたところです。

『こころ』はたしか中学三年生の教科書に一部が載っていたと思います。いまとなっては記憶も定かではありませんが、こうしていろいろなことを経験したからこそ理解できる内容、登場人物の心理ってありますよね。
昔の人々に比べたら精神的に大人になるのがわたしたちは遅くなっているのでしょう。それだけ深く悩むことが少ないのかもしれません。生活に困窮もしていないし。
ちょっと、じぶんの甘さに気がついて情けない気分です(^^;)
Posted by ヤヤー at 2009年01月23日 08:38
ヤヤーさん
本当はもっと若いときにこういう文学も読んでおいたほうがよかったのかもしれませんが、興味が沸かず読まずじまいというものがかなりあります(汗)
そういうものを今になって読んでみると、意外に面白いというのは、自分が年を重ねていろいろな経験をし、いろいろな感情を思い出すからのようにも思います。
精神的に大人になるのが遅いというのは、社会が豊かになったからなのかもしれませんね。
どこで読んだか忘れましたが、イギリスの小説で「30代の若者が」という描写に20年まえくらいは違和感があったけども、最近はそういう違和感が少なくなったように感じられるというのがありました。
なんだかそういう社会の気がします。
実家から明治〜昭和初期の文学を拾ってきたので、ぼつぼつ読もうと思っています。
Posted by kmy at 2009年01月23日 16:42
kmyさん、わたしも、夏目漱石の「こころ」すごく心に残っています。
今時、ああいう深刻な小説は、流行らないかもしれませんが、もう一度読み返してみようとおもいます。
中学の教科書に出ていて、高校の夏休みに課題として読んだ気がしますが、読むには早過ぎたような!
源氏物語にしろ、高校生で習う意味がわかりません。今頃解る気がするのは、なぜでしょうね。
Posted by noel at 2009年01月28日 14:58
noelさん
今さらですが、読んでみると人間関係の変化と気持ちの変化に自分の中を発見するような、そういう作品ですね。
いろいろと経験してから読むと、過去を振り返りつつ、何か気持ちを整理してくれるような、そういう気分になります。
教科書に出ていた覚えがないのです(汗)
中高生のころよりも、今のほうがいろいろ文学も身にしみて分かる気がして、これから未読の本を読もうかと思っています。

『源氏物語』も気になりつつ、誰の訳で読むか、それともあえて古文の注釈付を読むか、考えつつ最後まで読んでいません〜。これもいつかは全部、と思っています。
Posted by kmy at 2009年01月28日 16:16
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