2008年10月07日

『ふしぎの国のアリス』

ふしぎの国のアリス (児童図書館・文学の部屋)
ルイス キャロル, ヘレン オクセンバリー
評論社 ( 2000-03 )
ISBN: 9784566011076
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


 アリス好きの友人と話をしたら、久々にアリスが読みたくなりました。子どものころ読んだのは福音館の古典シリーズでした。図書館で検索してみると、蔵書が豊富とはいえないこの図書館でもアリスは何冊も翻訳があることがわかりました。福音館、岩波少年文庫、柳瀬訳、トーべ・ヤンソンのイラストのもの、子ども向けのリライトのようなものに絵本。下調べをして来なかったので、どれがいいのかよくわからなくなりました。読んだことのない訳のものにしておこうかな、と思ったら、オクセンバリーの挿絵のアリスがあったので、挿絵に惹かれてこれを読んでみたのですが――大失敗かも!? 求めていた翻訳とは違っていました。
(ちなみにAmazonでは別のアリス本のレビューに関連付けられていて、レビューは参考になりません)

 「おどろき、モモの木、サンショの木」このフレーズをアリスが口走っていましたが、読んでいるこちらのほうが「おどろき、モモの木、サンショの木」でした。『ハリー・ポッター』以外でも出会うとは思わなかった訳。発行は2000年。古くもないのにな。でもって、この原文“Merlin's beard”のわけはなく、では“Oh, my God!”なのかも?と思って確認してしまいました。“Curiouser and curiouser!”でした。この部分は驚いて言葉遣いがおかしくなったために発せられたフレーズなのです。「おどろき、モモの木〜」はおかしいといえばおかしいのですが、とっさにでる妙な言い方というニュアンスとは別のような、いえ、わたしがハリー・ポッターの翻訳でなんだか妙と思っているから余計に違和感があるのでしょう。この辺りから、翻訳文が合わないかもという危機感を感じていました。
(他の訳についてはこちらを参照:tomokilog - うただひかるまだがすかる「Curiouser and curiouser! - Alice's Adventures in Wonderland by Lewis Carroll キャロル『不思議の国のアリス』」
 
 アリスの魅力は言葉遊びにあるようで、だから英語で読んだほうが面白いと言われます。それをあえて訳すというのはどういうことになるんだろう?と気になります。言葉遊びをどう訳しているかというのを期待して読みたかったので、その意味では期待はずれでした。同じ音を持つ話(tale)としっぽ(tail)もルビをテールにしたのみ。海の学校のくだりもほとんどルビ処理です。なので、テンポが悪くて、英語を知らないで読むと、分かりにくく、面白くもありません。

「まず読みかた(リーディング)、書きかた(ライティング)はよろけかた(リーリング)、もがきかた(ライジング)だった。とうぜんのことだが。それから算数の四則――たし算は偉くなりたし算、ひき算は金棒ひき算、かけ算は泥のかけあい算、わり算はあざわらい算」(P159)

「それでレッスンとよばれるんだよ」とグリフォンが説明しました。「だんだんへっていく(レッスンする)のでね」
「課業(レッスン)がへっていくものだなんて初耳でしたので、すぐにはピンときませんでした。(P160〜161)

「海のなかの靴って、何でできているのかしら?」とアリスはふしぎそうにききました。
「靴底(ヒール)とかかと(ソール)(シタビラメとウナギ)からさ。きまっておろうが」(P169)


注:「(シタビラメとウナギ)」は括弧で表記。ルビではありません。その他文字が小さいものは前の語句のルビ)


 英語が透けて見えればなるほど、と思うのでしょうが、レッスンとレッスン、カタカナにしてしまうと同じになって面白い以前によくわかりません。こんな感じの翻訳なので、筋を追っていくのにはいいかもしれませんが、面白くはありませんでした。オクセンバリーの絵はテニエルと違って、スニーカー履きノースリーブワンピースという現代っぽい感じのアリスでチェシャ猫も目元がぎょろっとしていなくて雰囲気が違いました。挿絵だけは面白く見ましたが、訳は好みではありませんでした。The Rabbit Holeの「アリス」邦訳ブックレビューを参考にして、別のアリスを読んでみようと思います。言葉遊びを楽しめつつ、少女に語って聞かせたという雰囲気の訳語を選んでいる矢川澄子訳かネットで読める山形浩生訳を読んでみようかと思います。大西小生氏のサイト新「アリス」訳解の翻訳は各リンクを辿ると言葉遊びや風俗などについて解説があって分かりやすく面白そうです。図書館にあった柳瀬訳も眺めてみようかな。


 テニエルでないアリスの挿絵にも興味。
参考:Hugo Strikes Back! Alice Illustrations other than Tenniel
posted by kmy at 09:35| Comment(2) | TrackBack(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この本は持ってます。
もちろんコレクション用に買いました(笑)。
訳ならやっぱり山形浩生訳が面白いと思います。

新「アリス」訳解も興味深いです。
こうして原書と比べてしまうとますますのめり込んでしまうんですよね〜。

http://www.bl.uk/onlinegallery/ttp/ttpbooks.html

このページからアリスのオリジナルが見られます。
興味があるかたは是非。
でも時間が掛かるかも…。
Posted by ヤヤー at 2008年10月07日 23:21
ヤヤーさん
参考サイト、ありがとうございます。音声も聞いて英語も、と思いたいのですが、聞き取り苦手です〜。雰囲気だけでも。
アリスコレクション所蔵でしょうか。
こちらの本を購入なんて、かなり通だと思われます(5000円もしますしね)。
ネット訳で今よんでいますが、大西氏の訳のほうが好みです。山形氏の「おっきな」とか「保母さん」には微妙に引っかかるところがあります。好みの問題ですが。
言葉遊びのおかしさが、アリス年代の子どもたちが日本語訳で読むとして伝わるかどうかと言うのは難しいところですよね。
会話が成り立たないような会話とか、揚げ足取りのような会話とか、そういう楽しみがあるところが面白いので。
アリスの関連書籍も借りてきましたが、さまざま挿絵のものがあって、気になります。
アンソニー・ブラウンとかダリとか見てみたいですが、なかなか機会がありません。
ツヴェルガーは翻訳本があると思っていたら、ないことを友人から聞いて、意外でした。
訳は難しいですよね。
訳と絵がどちらも好みというのに出会うかどうかが難しい本だと思いました。
『鏡の国』も読み返してみようかと思います。ジャバウォッキーの歌は不思議のほうではなかったと、読み終わって思い出しました。
Posted by kmy at 2008年10月08日 14:52
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